反対咬合は歯牙喪失リスクが高いだけでなく、脳血流や認知機能にも影響
反対咬合だと歯数20本未満のリスクが1.48倍になることが分かった。
東北大学矯正科の研究グループによるもの。
不正咬合の早期発見および矯正治療が、生涯にわたる歯の保存や健康寿命の延伸に寄与する可能性が示唆された。
研究は、コホート研究「東北メディカル・メガバンク計画」に参加した40歳以上1万7349人について、前歯の咬み合わせの状態と歯の本数との関係を分析した。
対象者は、正常群、開口群、反対咬合群、開口+反対咬合群に分けた。
その結果、正常者群と比較して、歯が20本未満(調査時点)のリスクが反対咬合群で1.48倍と高くなった。
また、奥歯の喪失リスクについて反対咬合群で1.14倍だったのに対して、開口群では0.79倍と低くなった。
研究成果は「clinical Oral Investigations」(1月8日)にオンライン掲載。
(アポロニア21 2026年3月号 )
反対咬合が咀嚼時の脳血流と認知機能に影響を与えることが分かった。
東北大学矯正歯科の研究グループらによるもの。
反対咬合などの顎変形症による咀嚼機能低下状態が、認知機能に影響を与えるという新しい知見となる。
研究では、反対咬合患者44人(25.0±10.4歳)、健常者59人(44.8歳±3.0歳)を対象に脳血流の測定および認知機能を評価。
特に、認知機能に重要な役割を果たす「下前頭回」に注目した。
その結果、反対咬合患者では咀嚼時の下前頭回における脳血流量が健常者に比べて有意に低下していることが明らかになった。
全般的な認知機能スコアにおいては、反対咬合患者と健常者の間に有意差はなかった一方で、反対咬合群内において咀嚼時の脳血流量と認知機能の間に正の相関関係があることが示された。
「Scientific Reports(1月16日)」に論文掲載。
(アポロニア21 2026年4月号 )
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反対咬合ではアンテリアガイダンスが機能しないために、歯の喪失が生じやすいことが明らかになりました。
これについては、似たような研究報告がこれまでにも複数存在した記憶していますが、反対咬合患者で咀嚼時の下前頭回における脳血流量が健常者に比べて有意に低下していることが明らかになったのは初めてかもしれません。
インプラント治療希望で来院される患者さんで反対咬合が認められれば、ほぼ確実にどうすれば、それが改善できるか考えます。
反対咬合を歯列矯正で改善できれば一番良いかもしれませんが、実は、歯列矯正での改善幅は、インプラントでの咬合再構成の改善幅と比較して小さいと考えています。
全身麻酔で骨切り&歯列矯正よりも、インプラントを使用した咬合再構成の方に、治療期間や術後の安定の面からは軍配が上がるケースも少なくないと考えています。
高血糖患者の唾液に糖が滲出してう蝕招く。
高血糖によって血液中の糖が唾液に漏れ出ることで、う蝕の原因になることが分かった。
大阪大学の研究グループによるもの。
血糖管理が歯周病だけでなく、う蝕予防にも重要であることが確認できた。
研究グループは、口腔細菌の影響を受ける前の分泌直後の唾液を直接採取し、解析を行った。
その結果、血液中の糖が口腔に移行し、その後に口腔細菌が糖を消費していることが分かった。
さらに、糖のうちブドウ糖と果糖の移行が多いほど、う蝕や歯垢の量が多くなることが分かった。
他にも口腔内の善玉菌の減少および悪玉菌の増加、全唾液中の乳酸レベルが増加。
糖尿病患者に血糖管理を実施したところ、口腔内の善玉菌が増加し、悪玉菌が減少した。
研究成果は「Microbiome」(2025年12月4日)に公開。
(アポロニア21 2026年3月号 )
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糖尿病が歯周病に悪影響があるという研究報告は古くから散見されてきましたが、血糖管理がう蝕予防にも重要であることが確認できました。
考えてみると、血糖によって血液中の糖が唾液に漏れ出ることで、う蝕の原因になるというのはあり得る話だと感じました。
歯の状態が悪くなるとどうしても糖質中心の食事になるために、糖尿病の罹患率は歯牙喪失の程度と関連があります。
その状態で、可能であればインプラント、最低でも義歯に移行でできれば、糖尿病リスクは軽減できる可能性があります。
しかしながら、糖尿病に罹患している方にはインプラントも義歯もお口に存在しないという方が少なからず見受けられます。
私は、インプラント治療、義歯治療が得意なので、そのような患者さんを微力ながら救うことができるように日々精進したいと考えています。
デンタルフロスでワクチン投与
歯肉溝の底部に位置する接合上皮は血管と直接つながっており、バリア機能がゆるく、物質が通過しやすい構造をしている。
このゆるさは歯周病のリスク要因に挙げられることが多いが、逆にその特性をワクチンの吸収ルートとして活用するというユニークな研究である。
研究では、抗原やmRNAなどをコーティングしたテープ状のフロスをマウスの歯肉溝に3日間連続で挿入・擦過し、舌下投与や筋肉注射と比較した。
その結果、歯肉構内では抗原が最大72時間と長く保持され、粘膜上での安定性も高かった。
また、投与後に摂食や飲水を行っても、ワクチン効果が維持され、実生活に即した免疫誘導法としての有効性も確認された。
(参考文献)
Rohans S J I, Akhilesh K S: Floss-based vaccination targets the gingival sulcus for mucosal and systematic immunization. Nat Biomed Eng, doi: 10. 1038/s41551-025-01451-3, 2025.
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歯肉溝の底部に位置する接合上皮は血管と直接つながっており、バリア機能がゆるく、物質が通過しやすい構造を逆手にとって、ワクチンの吸収ルートとして活用するという発想が今までにないものであると感銘を受けました。
舌下投与や筋肉注射と比較しても、安定するワクチン投与法ということも今後さらなる発展に期待したい研究報告だと感じました。
日本人における垂直性歯根破折および関連因子:限局性の歯周ポケットを有する歯の観察研究
本研究は2012-2020年の間に東京都内の歯内療法専門医院を受診し、診断または治療を受けた患者221人(男性68人、女性153人:46.2±10.3歳)を対象とし、限局した深さ5?以上の歯周ポケットが確認された228歯を調査した。
術前に全症例で口腔内エックス線および一部の症例でCBCT撮影を行った。
対象歯を深さ5?以上の歯周ポケットの原因となりうる8つの病態、すなわち、垂直性歯根破折、歯肉縁下う蝕、水平または斜走破折、限局性歯周炎、穿孔、歯根吸収、歯髄壊死または根尖性歯周炎に分類した。
垂直性歯根破折が8つの状態の中で最も多い結果となった(32.0%、73/228歯)。
垂直性歯根破折の確認は抜歯(3歯)、外科的探索(65歯)にて行われた。
垂直性歯根破折は40第(37%)および女性(68.5%)に多く、歯種では下顎第一大臼歯(31.5%)、上顎小臼歯(19.2%)の順に高頻度であった。
多くは隣接歯が存在(87.7%)し、深さ8?以上の歯周ポケットを認めた(50.7%)。
クラウン装着歯(82.2%)およびポストを有しない歯(57.5%)に多い結果となった。
未根管治療歯には垂直性歯根破折を認めなかった。
9つの因子のうち既根管治療歯歯周ポケット(深さ)、歯周ポケット(広さと位置)、歯種、修復物、ポストの有無の6つの因子において垂直性歯根破折と有意な関連を認めた(P<0.05)。
(参考文献)
Lee K, Ahlowalia M, Alfayate RP. Patel S, Foschi F. Prevalence of and factors associated with vartical root fracture in a Japanese population : An observational study on teeth with isolated periodontal probing depth J Endod. 2023 Dec : 49(12) : 1617-24.
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ALL on 4 のような天然歯を基本的にはすべて抜去する治療計画を除き、インプラント治療希望で来院される患者のお口には、保存する予定の歯が少なからず存在する治療計画を選択することがほとんどです。
堀歯科医院では、インプラント治療が終了した次の年にインプラントの一つ前の歯が歯根破折のために抜歯を余儀なくされるような状態がないような治療計画を立てるよう日々研鑽を続けています。
すなわち、インプラント治療以前に、保存予定の歯に上記にある垂直性歯根破折、歯肉縁下う蝕、水平または斜走破折、限局性歯周炎、穿孔、歯根吸収、歯髄壊死または根尖性歯周炎などが存在していないかを的確に診断する技術がなければ、患者さんの幸せな未来に寄与できないと考えています。
そのため、書籍やセミナーでの情報のアップデイトおよび新たな技術習得は楽ではありませんが、歯科医師免許取得以後、継続して行っています。
水平的GBRにおける骨幅獲得量の予測値により、使用するインプラントの径が予測可能
・Naenniらのシステマティックレビュー、メタアナリシスでは、水平的GBRによって骨幅が平均約3.4ミリ獲得できると報告された。
また、インプラント周囲に1.5ミリの骨幅が必要であることが分かっているため、インプラントのサイズを決定するための目安になるだろう。
(参考文献)
Naenni N, Lim HC, Papageorgiou SN, Hammerle CHF. Efficacy of lateral bone augmentation prior to implant : A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2019 Jun ; 46 Suppl 21 : 287-306.
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インプラント治療を行う際に、埋入する部位に歯槽骨が不足しているケースは少なくありません。
このような際に行うのがGBRです。
GBRはインプラント埋入する際に同時に行うことも多いので、予めその予測値が分かれば、必要となるインプラント径が分かるので無駄のないインプラント治療が行うことが可能となります。
なお、その予測が誤っていても再度インプラント埋入後に追加のGBRを行うことも可能ですが、患者さんの痛みが伴うので可能であれば避けたいとインプラント手術医は考えます。
この数字はインプラント治療を行う歯科医師は覚えておく必要があるものと考えられます。
歯周治療後3か月でHbA1cが0.43%低下。
・2022年に発表されたメタ解析では、2型糖尿病をもつ患者を対象にしたSRP単独の効果を算出する群と、非治療群を比較した20件のランダム化比較試験をもとに、歯周治療後3か月でHbA1cが0.43%低下したことが示されています。
これらのメタ解析のデータを根拠に、多くの歯周病および糖尿病関連の学会が、糖尿病をもつ患者に対する歯周治療を推奨しています。
・2型糖尿病をもつ患者に対する運動療法の効果を検討した代表的なメタ解析では、合計8538名を対象とする47件のランダム化比較試験が解析され、運動介入とHbA1cの変化との関連が検討されました。
その結果、毎週定められた時間を計画的に行う運動プログラムを実施した研究を統合したデータでは、運動群でHbA1cが平均0.67%低下していました。
さらに、運動総実施時間によって効果に差がみられ、週150分を超える運動プログラム(3か月継続)ではHbA1cが0.89%低下した一方で、週150分以下(3か月継続)では0.36%にとどまりました。
これは運動の強度や種類よりも持続的な総時間がHbA1cの低下に与える影響が大きい可能性を示唆しています。
そして、運動の種類別にみると、有酸素運動単独のHbA1cの低下は0.73%、レジリエンス運動単独では0.57%、両者の併用では0.51%といずれも有効性が確認されています。
(参考文献)
Simpson TC, Clarkson JE, Worthington HV, MacDonald L, Weldon JC, Needleman I, Iheozor-Ejiofor Z, Wild SH, Qureshi A, Walker A, Patel VA, Boyers D, Twigg J. Treatment of periodontitis for glycaemic contorol in people with diabetes mellitus. Cochrane Databese Syst Rev, 2022 Apr 14; 4 (4) : CD004714.
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2型糖尿病をもつ患者に対する歯周治療後3か月でHbA1cが0.43%低下に対して、同じく2型糖尿病をもつ患者に対する週150分を超える運動プログラムではHbA1cが0.89%低下という結果が得られました。
週150分を超える運動プログラムを3か月間継続した効果は、歯周治療後3か月後の再評価した際の効果のおよそ2倍ということになります。
2型糖尿病の傾向がある方は、運動に加え歯周治療も行う方がよいでしょう。
今回の報告では週150分未満かそれ以上かで分けて比較していますが、保存できない歯をインプラントに置き換え、咬めない状態が咬める状態になるとさらに長い時間の運動プログラムをこなせるようになるので、一層のHbA1cの低下を期待できます。
歯周病の既往がある高年齢患者の智歯を抜歯すると、41倍残存ポケットが生じやすい。
無症状の完全埋伏または半埋伏智歯を抜歯後の第二大臼歯を評価すると、遠心面の歯周ポケットとアタッチメントゲインは約2?改善していた。
術前に遠心のPDが4?以上であった第二大臼歯の73.6%は、6か月後の再評価時に4?未満に閉鎖した。
一方、年齢が高く(平均55歳)、術前により深い歯周ポケットがある場合、抜歯6か月後に4?以上残存する可能性が高かった。
さらに過去の既往がある患者では、これらの残存ポケットが生じるリスクは41倍高かった。
この結果は、智歯抜歯後に生じる欠損が、外科処置による歯周炎の影響を強く受けることを示す。
(参考文献)
Passarelli PC, Lajolo C, Pasquantonio G, Damato G, Docimo R, Verdugo F, DAddona A. Influence of mandibular third molar surgical extraction on the periodontal status of adjacent second molars. J Periodontol.2019 Aug ; 90(8) : 847-55.
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多くの患者で年齢が高まるほど歯周病リスクは上がる傾向にあるので、可能な限り若いうちに症状がなくても智歯は抜歯しておいた方が得策であるということが明らかになりました。
上顎前歯部に埋入した単独インプラントの切縁レベル変化の長期評価(5-19年の追跡調査)
1995-2010年に埋入されたインプラント3094本を対象としたが、すべての適格基準を満たしたのは113本(3.65%)であった。
最終的にこれら113本のインプラントのうち56本が対象となり、追跡調査を行った。
すべての症例において、初診時の写真、最終補綴装置時の写真、術後5-20年間の追跡調査時の撮影された。
全てのインプラントはNovel Proceraで最終補綴装置はメタルセラミッククラウンで修復された。
本件の対象患者は合計56名(56本のインプラント)、年齢幅:23-63歳、平均年齢:40.79±12.25歳、男性21名(37.05%)、女性は35名(62.5%)であった。
平均追跡調査期間は10.7±3.37年で、隣接歯とインプラントの切縁レベルの変化を認めたのは19.6%であった。
評価されたすべてのインプラントの残存率は100%であった。
インプラント上部構造と隣接歯との切縁レベルの変化は、11名の患者(19.64%)で観察され、そのうち2名は上部構造をやり替えることに興味を示したが、その他の患者においては評価期間を通して審美性の満足度は良好であった。
性別間の切縁レベルの変化については、男性(19%)と女性(20%)で統計学的に有意な差は認められなかった(P=0.238)。
年齢別の切縁レベルの変化の発生率は、20-30歳までの患者で41.7%、31-40歳までの患者で13.3%、41-50歳までの患者で23.7%、50歳以上のグループで6.3%であった。
異なる年齢グループ間には統計学的に有意な差は認められなかった(P=0.118)。
同様に、切縁レベルに変化が認められた症例とみられかった症例の各サブグループにおける臨床症例数を比較しても、統計学的有意な差は認められなかった(P=0.262)。
(参考文献)
Long-Term Assessment (5-19-Year Follow-up) of the Incisal-Level Changes in Single Implants Placed in the Anterior Maxilla : An Observational Clinical Study. Int J Oral Maxillofac Implants. 2025 Feb7 ; 40(1) : 33-40.
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上顎前歯単独インプラントで長期間維持された上部構造の切縁レベルの変化は、評価した成人患者症例の19.6%に認められたことが明らかになりました。
日本人における垂直性歯根破折の有病率および関連因子
垂直性歯根破折(VRF)は、深さ5ミリ以上の歯周ポケットの原因となりうる8つの病態(垂直性歯根破折、歯肉縁下う蝕、水平または斜走破折、限局性歯周炎、穿孔、歯根吸収、歯髄壊死または根尖性歯周炎)の中で最も多かった(32%、73/228歯)。
垂直性歯根破折の確認は抜歯(3歯)、外科的探索(5歯)および非外科的探索(65歯)にて行われた。
VRFは40代(37%)および女性(68.5%)に多く、歯種では下顎第一大臼歯(31.5%)、上顎小臼歯(19.2%)の順に高頻度であった。
多くは隣接歯が存在(87.7%)し、深さ8ミリ以上の歯周ポケットを有する歯(50.7%)、また、頬舌側に限局した狭い歯周ポケットを有する歯(78.1%)、クラウン装着歯(82.2%)およびポストを有しない歯(57.5%)に多い結果であった。
未根管治療歯にはVRFを認めなかった。
9つの因子のうち既根管治療歯、歯周ポケット(深さ)、歯周ポケット(広さと位置)、歯種、修復物、ポストの有無の6つの因子においてVRFと有意な関連を認めた(p<0.05)。
(参考文献)
Lee K, Ahlowalla M, Alfayete RP, Patel S, Foschi F, Prevalence of and Factors Associated with Vertical Root Fracture in a Japanese Population : An Observational Study on Teeth With isolated Periodontal Probing Depth. J Endod. 2023 Des ; 49(12) : 1617-24.
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既根管治療歯、歯周ポケット(深さ)、歯周ポケット(広さと位置)、歯種、修復物、ポストの有無の6つの因子においてVRFと有意な関連があることが明らかになりました。
下顎智歯抜歯ケースで0.35%に障害発生し、そのうち67%が半年後に完全回復。
2019年Cheungらは、約8年間に下歯槽神経障害を主訴として外来を訪れた4338件の下顎第三大臼歯の抜歯症例のうち0.35%に下歯槽神経障害が発生し、0.69%に舌神経障害が発生したと報告している。
なお、追跡調査した6か月間に下歯槽神経障害の67%、舌神経障害の72%が完全に回復したと報告している。
(参考文献)
Cheung LK, Leung YY, Chow LK, Wong MC, Chan EK, Fok YH. Incidence of neurosensory deficits and recovery after lower third molar surgery : a prospective clinical study of 4338 cases. Int J Oral Maxillofac Surg. 2010 Apr ; 39(4) : 320-6.
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8抜歯ケースで0.35%に障害発生し、そのうち67%が半年後に完全回復することが明らかになりました。
インプラントを智歯相当部位に埋入することはまれですが、仮にインプラント治療の際に同様な障害が発生した際も障害の完全回復するまでの割合や期間は参考資料と知っておいても良いと考えられます。






