セメント質剥離の診断について
セメント質剥離は診断が困難な場合があり、剥離が歯冠側で生じると、限局的な深い歯周ポケットが形成されるため、垂直的歯根破折と誤診されやすい。
一方、根尖側で剥離が生じると、歯肉の腫脹瘻孔の形成、そして根尖部周囲の骨吸収を呈し、根尖性歯周炎と誤診され奏功しない根管治療を繰り返し、結果として抜歯に至るということがまま起こっている。
(参考文献)
Lin HJ, Chang MC, Chang SH, Wu CT, Tsai YL, Huang CC, Chang SF, Chang YW, Chan CP, Jeng JH. Treatment outcome of the teeth with cemental tears. J Endod. 2014 Sep ; 40(9) : 1315-20.
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セメント質剥離は、60歳以上の男性前歯生活歯に比較的多く認められるので、注意が必要です。
食物繊維の摂取量と睡眠中の歯ぎしり量に関連。
岡山大学の外山助教らの研究で、学生143人を対象に、睡眠中の歯ぎしりの有無を調査した。
睡眠中に歯ぎしりをする学生と歯ぎしりをしない学生を比較したところ、睡眠中に歯ぎしりをする学生の方が食物繊維摂取が有意に少ないことが分かった。
今後は、睡眠中の歯ぎしりへの新たな対処法を提案するだけでなく、食物繊維を摂取することで睡眠中の歯ぎしりを減少できることへの証明につながると期待がかかっている。
(アポロニア21 2023年7月号 )
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食物繊維の摂取量と睡眠中の歯ぎしり量に関連があるとは、興味深い研究報告ですね。
「老衰」による死亡が第3位に。
「老衰」による死亡が第3位に。
令和3年と令和2年を比較すると、死亡者数が約6.7万増加しています。
最も増加していたのは「老衰」で約2万人、次いで「心疾患」が約9千人増加しています。
3番目に「誤嚥性肺炎」が約7千人増加していました。
最も減少したのは、「肺炎」で、約5千人減少していました。
令和3年は令和2年と比較し「新型コロナウイルス感染症」による死亡が約5倍増加しており、約1.7万人が死亡していることが分かります。
(日本歯科評論 2023年6月号 )
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新型コロナによる病院への受診控えのために、本来であれば健診等でガンが見つかる頻度が減少することで、ガンの死亡数が増大すると警鐘を鳴らしていた人がいましたが、"主要死因死亡率の年次推移"を見る限り、そのような傾向は認められませんでした。
また、最も増加していたのが「老衰」による死亡で約2万人というのも興味深く感じました。
なぜ、少量の食塩が甘みを引き起こすのか?
なぜ、少量の食塩が甘みを引き起こすのか、その謎を岡山大学薬学部の山下教授、東京歯科大学短期大学の安松教授らが解明した。
食塩水の場合、甘いと感じるという現象が起こるが、詳細なメカニズムは解明されていなかった。
この研究では、受容体たんぱく質の形状を原子レベルで調査できる「立体講義解析」で、メダカがもる味覚受容体「T1r2a-T1r3」の味物質センサ-領域の立体構造を調べたところ、メダカの受容体が感知する味物質のアミノ酸が結合するポケットのそばに、塩化物イオンが結合していることが分かった。
この塩化物イオン結合ポケットは、甘み受容体とうまみ受容体を含め、ほとんどの動物が持つ受容体にも存在し、アミノ酸などの味物質と同様の構造変化を受容体のセンサー領域に引き起こすと判明。
また、東京歯科大学短期大学の安松教授がマウスの味神経を用いた実験で、塩化物イオンがマウスの甘み受容体を介して、甘み神経応答を引き起こし、味覚として感知することを解明した。
何も含まれていない水と比較して、マウスは薄い塩化物イオンを含む水をより好んで飲み、甘みと同様の好ましい味として塩化物イオンを知覚していた。
その結果、食塩濃度が高くなると、塩味受容体が感知する塩味の方を強く感じて、味覚の混合抑制という現象が起こり、食塩の甘さに気づきにくくなっていると推測されることが分かった。
(アポロニア 21 2023年5月号 )
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「何も含まれていない水と比較して、マウスは薄い塩化物イオンを含む水をより好んで飲み、甘みと同様の好ましい味として塩化物イオンを知覚していた。」
というのは、何とも興味深い結果ですね。
動物が甘みを好むのはエネルギー源となるのでもっともなことだと思いますが、塩化物イオンも濃度が低ければ、同じように必要不可欠なものであると体は認識しているということなのでしょう。
歯根膜組織の増殖能は外科的侵襲で約6倍に!
抜去歯の歯根表面55%の歯根膜が付着しているとの報告がある。
歯根膜の細胞が抜歯という外科的侵襲を受けると、その増殖能は約6倍になるという研究報告からすると、歯根膜表面はすべて既存の歯根膜と再生歯根膜によって被覆されるものと推測できる。
(参考文献)
下野正基:決定版 治癒の病理. 74-75, 422-427, 石躍出版, 東京, 2022.
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歯根膜組織の増殖能は外科的侵襲で約6倍になることが明らかになりました。
難治性歯内療法症例の約 40%が歯根破折関連。
難治性歯内療法症例として神奈川歯科大学病院に紹介来院(2013-2022年)した患者193症例に対する疾患原因解明のため、歯科用X線写真読影、およびマイクロスコープを使用した確定診断を行った。
その結果、難治性歯内療法症例の原因は、歯根破折(象牙質亀裂を含む)77例(39.9%)、穿孔31症例(16.1%)、ファイル破折23症例(11.9% )、非歯原性疼痛39症例(20.2%)、原因不明23症例(11.9%)に分類され、難治性歯内療法症例の約 40%が歯根破折に伴うことが明らかにされた。
さらに、歯根破折77症例のうち、根管象牙質に垂直亀裂の所見が25症例に確認された。
(歯界展望 2023年3月号 )
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インプラント治療希望の患者さんの歯の喪失原因で大きな部分を占めるのが、この歯根破折です。
歯根破折予防のために、当院では、歯やインプラントの位置、咬み合わせを重視した治療を行っています。
鉄欠乏貧血と氷食症
内科を受診した鉄欠乏性貧血患者81例のうち、氷食症の発生頻度は13例(訳16%)と報告されていることから、まれな症状ではないことがうかがえる。
なぜ鉄欠乏性貧血が氷食症を引き起こすかについては、十分に解明されていません。
(参考文献)
仙名智弘 他 : 氷食症が契機となった重度貧血の1例.日本口腔診断学会. 2018;31(2)183-186.
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鉄欠乏貧血と氷食症との間になにかしらの関係がある可能性が示唆されました。
「9歯以下で入れ歯なし」社会的孤立リスク高い
歯が9本以下で入れ歯やブリッジを使用していない人は、6年後に社会的に孤立する可能性が、使用している人と比べて約1.8倍高かった。
東北大学の研究グループが明らかにした。
日本老年学的評価研究で収集したアンケート調査のデータ(n=2万6417人)を用いて6年間の追跡調査後の残存歯数および、入れ歯やブリッジなどの歯科補綴物使用と社会孤立状態との関連性を検証した。
その結果、歯が20本以上の人と比較して、歯が10-19本の人と歯が9本以下の人は、6年後のフォローアップで社会的孤立状態になる可能性がそれぞれ13%(1.13倍)、36%(1.36倍)高いことが明らかになった。
さらに20本以上の歯がある人(歯科補綴物使用の有無にかかわらず)と比較して、歯科補綴物が未使用で歯が9本以下の人は79%(1.79倍)高く社会的に孤立する傾向だったが、9本以下でも歯科補綴物を使用している人は23%(1.23倍)の上昇にとどまった。
(アポロニア 21 2023年3月号 )
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人は咬めないと社会孤立傾向が高まることが明らかになりました。
咬めないと、鬱傾向が高まるということでしょうか?
そのような意味では、インプラント治療は、肉体的に健康な状態を手に入れることができるのはもちろんのこと、精神的な健康をも獲得できる優れた治療方法といえることでしょう。
10代の咀嚼力に問題あり。
日本歯科医師会が全国の15歳から79歳の男女1万人を対象にした実施した「歯科医療に関する一般生活者意識調査」(2022年)で、若年層の口腔機能の実態が明らかになってきた。
「滑舌が悪くなることがある」や「食べこぼしをすることがある」など、6つの口腔の機能の機能不全が疑われる症状を提示し、一つでも経験があるかを質問したところ、10代で48.3%、20台で40.6%と半数近くが何らかの症状を経験していることが判明。
中でも、「滑舌が悪くなることがある」と回答したのは、10代で30.3%、20代で26.5%と30代から50代に比べて多かった。
また、10代は咬む力も未発達の傾向があり、「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」53.6%、「硬いものを食べると咬み切れないことがある」40.3% 40.3%と両方とも全世代で最多だった。
さらに10代の48.3%が「食事で咬んでいると顎が疲れることがある」と答えており、70代の2.7倍にも上っている。
歯並びや歯の白さなどの 見た目に気を遣っている若年層だが、口腔機能の発達が不十分な疑いも垣間見える結果となった。
(Dentalism Feb.2023 No.55 )
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日本人の平均的な歯並びが何かしらの歯列不正があるように感じています。
歯の重なりが認められなくても、ガミースマイルという歯列不正の一種で、骨格に異常が認められるケースも最近では割と頻繁に目にするようになってきました。
ガミースマイルに対する対処は、いわゆるセラミックス矯正という方法もありますが、RAMPA療法という骨格を改善する、より本質に近い治療方法も最近開発されつつあります。
矯正歯科に興味を持つ理由:「コンプレックス」が8割
男女153人に実施した調査によると、矯正治療に興味を持ったきっかけ(複数回答)は、「自分の歯並びにコンプレックスがあった」が85%に次いで、「将来的に健康的な歯を数多く残したい」35%、「歯が磨きにくいことで歯周病や虫歯にならないか心配」26%、「親族・知人・友人から矯正を勧められた」15%、「よく唇を咬むなど、日常生活で支障を感じることがある」13.5%と続いた。
(アポロニア21 2023年2月号 )