インプラントが必要な状態にならないために必要なことの最近のブログ記事

部分入れ歯の鉤歯の喪失リスクはブリッジの約3倍。

Aqulinoらは部分入れ歯鉤歯とブリッジ支台歯の生存率の比較を行い、ブリッジ支台歯の生存率は10年で92%、部分入れ歯の鉤歯は56%と、ブリッジの方が生存率は高いと報告しており、約Cabanillaらも部分入れ歯の鉤歯の喪失リスクはブリッジの約3倍と報告している。その理由として、佐藤らは、部分入れ歯の鉤歯は、クラスプやバーを介して欠損部にかかる咬合力を一部負担することによる力学的な要因や、クラスプやバーにより鉤歯の歯周組織状態が悪化するという衛生学的な要因によって生存率が低下するとしている。
(参考文献)
Cabanilla l. L., Neely A. L., Hernandez F. : The relationship between periodontal diagnosis and prognosis and the survival of prosthodontic abutments: a retrospective study. Quintessence Int. 40: 821-831, 2009.
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部分入れ歯は残存歯が減りやすいタイプの装置かもしれない。

CAD/CAM材料の曲げ強さと疲労に対する酸性溶液の影響

CAD/CAM材料の曲げ強さと疲労に対する酸性溶液の影響
(研究目的)
酸性溶液がCAD/CAM材料の表面粗さ、曲げ強さ、疲労に及ぼす影響を比較調査することを目的とした。
(研究内容)
4種類のCAD/CAM材料(高透過性ジルコニア(Ceramill Zolid HT+ : CZ))、二ケイ酸リチウムガラス(IPS e-max CAD : EC)、ポリマー含浸セラミックス(Vita Enamic : VE)、ナノハイブリットコンポジットレジン(Grandio Blocs : GB))を棒状試験片に加工し、異なるpHの溶液(胃酸:pH1.2、オレンジジュース : pH2.7、白ワイン: pH3.3、炭酸飲料: pH3.9、人口唾液: pH7)に37度、70rrpm震盪下で24時間浸漬した。浸漬後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面観察、接触式表面粗さを用いた表面粗さの測定を行った。
また、浸漬後試料に繰り返し過重負荷による疲労を与え、3点曲げ試験により疲労前後での曲げ強さを調査した。
(研究結果)
SEMによる表面観察より、すべてのCAD/CAM材料で酸性溶液浸漬後に表面性状の変化を認めた。
CAD/CAM材料の種類と酸性溶液は、表面粗さに有意に影響した。
曲げ強さはCZ>EC>GB>VEであり、すべての材料間で有意差を認めた。
酸性溶液浸漬と繰り返し過重負荷後に、すべてのCAD/CAM材料で曲げ強さの低下が認められ、特にCZとECで有意に低下した。
(結論)
酸性溶液はCAD/CAM材料の表面粗さに影響し、疲労は曲げ強さに影響した。
酸性溶液はガラスベースのCAD/CAM材料の表面粗さを大きく変化させた。
CZとECは高い曲げ強さを示したものの、疲労耐性はGBとVEが高いことが明らかになった。
(参考文献)
Effect of accic media on flexural strength and fatigue of CAD/CAM dental materials. Elraggal A, R Afifi R, Alamoush RA, Raheem IA, Watts DC. Dent Master,39 : 57-69,2023.

垂直性歯根破折に有意に関連する要因

・垂直性歯根破折に有意に関連する要因として、
1. 6ミリ以上の歯周ポケット
2. J-shaped defect
3. 頬側皮質骨の欠損
が挙げられていたが、歯根には至らない歯冠部の亀裂に有意な関連していたとしている。
また、垂直性歯根破折が疑われる歯について、口腔内所見とCBCT所見から診断および要因分析を行った報告がある。
この報告も確定診断はマイクロスコープによる視認であった。
垂直性歯根破折の存在を疑う口腔内所見及び画像所見(全12要因)において、破折の有無に対して有意に影響のあった要因は、以下の4つであった。
・腫脹・膿瘍
・5ミリ以上の歯周ポケット
・CBCTでのJ-shaped defect
・CBCTでの根尖部の骨吸収像
また、すべての要因のうち2つないし3つの要因が重なっている歯は垂直性歯根破折の存在に対するオッズ比が2.56倍、4つ以上の場合は8.80倍であった。
患者個人の要因として、性別・年齢・パラファンクションが垂直性歯根破折の存在と有意に関連があった。
さらにこの報告において注目すべきは、垂直性歯根破折の見落とし(偽陰性)は少ないものの、過剰に垂直性歯根破折を疑う(偽陽性)可能性が高いということを示している。
結局は、怪しいと思われる所見が存在して、実際には破折線を確認しない限りは歯根破折だとは確定できない、ということになる。
(参考文献)
Quintero-Alvarez M, Bolanos-Alzate LM, Villa-Machado PA. Restrepo-Restrepo FA, Tobon-Arroyave SI. In vivo detection of vertical root fractures in endodontically treated teeth: Accuracy of cone-beam computed tomography and assessment of potential predictor variables. J Clin Exp Dent, 2021 Feb ; 1: 13 (2) : e119-e131.
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歯根破折に関しては、怪しいと思われる所見が存在して、実際には破折線を確認しない限りは歯根破折だとは確定できないことが明らかになりました。

10代の咀嚼力に問題あり。

日本歯科医師会が全国の15歳から79歳の男女1万人を対象にした実施した「歯科医療に関する一般生活者意識調査」(2022年)で、若年層の口腔機能の実態が明らかになってきた。
「滑舌が悪くなることがある」や「食べこぼしをすることがある」など、6つの口腔の機能の機能不全が疑われる症状を提示し、一つでも経験があるかを質問したところ、10代で48.3%、20台で40.6%と半数近くが何らかの症状を経験していることが判明。
中でも、「滑舌が悪くなることがある」と回答したのは、10代で30.3%、20代で26.5%と30代から50代に比べて多かった。
また、10代は咬む力も未発達の傾向があり、「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」53.6%、「硬いものを食べると咬み切れないことがある」40.3% 40.3%と両方とも全世代で最多だった。
さらに10代の48.3%が「食事で咬んでいると顎が疲れることがある」と答えており、70代の2.7倍にも上っている。
歯並びや歯の白さなどの 見た目に気を遣っている若年層だが、口腔機能の発達が不十分な疑いも垣間見える結果となった。
(Dentalism Feb.2023 No.55 )
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日本人の平均的な歯並びが何かしらの歯列不正があるように感じています。
歯の重なりが認められなくても、ガミースマイルという歯列不正の一種で、骨格に異常が認められるケースも最近では割と頻繁に目にするようになってきました。
ガミースマイルに対する対処は、いわゆるセラミックス矯正という方法もありますが、RAMPA療法という骨格を改善する、より本質に近い治療方法も最近開発されつつあります。

矯正歯科に興味を持つ理由:「コンプレックス」が8割

男女153人に実施した調査によると、矯正治療に興味を持ったきっかけ(複数回答)は、「自分の歯並びにコンプレックスがあった」が85%に次いで、「将来的に健康的な歯を数多く残したい」35%、「歯が磨きにくいことで歯周病や虫歯にならないか心配」26%、「親族・知人・友人から矯正を勧められた」15%、「よく唇を咬むなど、日常生活で支障を感じることがある」13.5%と続いた。
(アポロニア21 2023年2月号 )

スギに虫歯菌抑制効果

・宮崎大学の研究では、オビスギの抽出物にグラム陽性菌の発育阻害作用があると証明されていることから、グラム陽性菌の一種である虫歯菌のStreptococcus mutansにも効果があること考えられていた。
そのことに着目した2人は、葉から有機溶媒を用いて殺菌成分を抽出。
虫歯菌をオビスギの抽出物を混ぜた培地に入れ、増殖するか確認する実験を行った。
その結果、オビスギの成分に虫歯菌の増殖を抑える効果があること解明した。
(アポロニア21 2022年6月号 )
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スギに虫歯菌抑制効果があることが明らかになりました。

野菜を食べて、虫歯予防?!

・これまでの基礎研究で、口腔細菌叢を1-5時間程度の短時間砂糖とともに培養する際に、硝酸塩が存在すると、培養環境の酸性化を抑えられることが報告されています。
この結果を受けて、硝酸塩を多く含むビーツの根のサプリメントの単回投与が、実際のヒトの口腔内の糖質発酵に由来する唾液の酸性化を抑制できるかどうかを調べる実験が行われました。
その結果、硝酸塩摂取4時間後に砂糖水で洗口しても、細菌叢による乳酸の産生は少なく抑えられており、菌叢中でRothia属の1種が増加していました。
口腔内には、Rothia属やNeisseria属のように、硝酸塩を還元して、酸を中和するアンモニアを産生する菌がいますが、唾液細菌叢中でRoshia属やNeisseria属の比率が高いと乳酸産生量が少ないという関係が示されました。
これらの結果は、口腔内に硝酸塩が存在すると、口腔細菌の糖質発酵時におこる口腔環境の酸性化を抑制できる可能性を示しています。
今後、硝酸塩を多く含む野菜(ビーツ、ほうれん草、小松菜、レタス)の摂取が歯の健康に与える長期的な影響を評価する必要があるでしょう。
(参考文献)
Rosier BT, et.al. A single dose of nitrate increases resilience against acidification derived from sugar fermentation by the oral microbiome. Front Cell Infect Microbiol 2021 ; 11 : 692883.
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硝酸塩を多く含む野菜を摂取すると、口腔内の酸性化を抑制することで、虫歯を予防することができる可能性が示唆されました。

ロイテリ菌を含む乳酸菌の酸産生能

乳酸菌は、ブドウ糖、オリゴ糖、乳糖などの糖質を発酵して乳酸を産生する能力を有する菌の総称です。
その一種であるロイテリ菌は、ロイテリンと呼ばれる抗生物質を産生し、ピロリ菌やクロストリジウム菌、サルモネラ菌、大腸菌など、腸内の数種類の有害な細菌や真菌などの生育を阻害する能力を有しています。
また、ロイテリン以外にも、人体に有用なビタミンB12やB9を産生する能力が高いことが報告されています。
口腔内への影響については、ロイテリ菌を含むヨーグルトを1日1個、2週間連続で食べると、別の種類の乳酸菌が入っているヨーグルトを食べた時よりも、唾液中のミュータンス菌の数を減少させる効果があったという報告がありますが、2週間で食べるのをやめると、その1週間後にはロイテリ菌がほとんど検出されなくなるとの報告もあり、毎日食べ続ける必要があると考えられます。
一方で、ロイテリ菌を含む乳酸菌の酸産生能はミュータンス菌よりも強いことが報告されています。
また、乳酸菌は象牙質う蝕のう窩から検出されています。
(参考文献)
Haukioja A, et. al. Acid production from sugars and sugar alcohols by probiotic lactobacilli and bifidobacteria in vitoro. Caries Res 2008 ; 42(6) : 449-453.
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ロイテリ菌を含む乳酸菌の酸産生能はミュータンス菌よりも強いということが明らかになりました。

根面う蝕のリスク因子

1990年から2018年までの間に報告された127報の根面う蝕のリスク因子に関する論文のうち、分析対象としての条件を満たす40の横断研究を統合解析したシステマティックレビューがあります。
そこでは、年齢、歯肉退縮、喫煙、社会経済的地位、フッ化物配合歯磨剤の不使用、口腔衛生状態が根面う蝕に関連するリスク因子として挙げられ、より高齢で、教育レベルが低く、収入が低く、喫煙者で歯肉退縮があり、フッ化物歯磨剤を使用せず、口腔衛生状態が悪い人は根面う蝕のリスクが高いと結論づけられています。
また、面白いことに、親しい友人が多いほど根面う蝕が少ないことも報告されています。
(参考文献)
Zhang J. et.al. Factors associated with dental root caries.: A systemtic review. JDR Clin Trans Res 2020 ; 5(1) : 13-29.
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より高齢で、教育レベルが低く、収入が低く、喫煙者で歯肉退縮があり、フッ化物歯磨剤を使用せず、口腔衛生状態が悪い人は根面う蝕のリスクが高いということが明らかになりました。

根面う蝕の形成機序

1. 根面表層の細菌が酸を産生
2. 酸が根面/象牙質を構成する無機質部分からミネラルを放出させる(脱灰の進行)
3. 根面/象牙質の有機質(マトリックス)が露出
4. 酸が象牙質および唾液中のたんぱく質分解酵素(MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ)を活性化
5. 根面/象牙質の有機質(マトリックス)の分解開始
(参考文献)
Takahashi N, Nyvad B. Ecological hypothesis of dentin and root caries. Caries and Root Caries Res 2016 ; 50(4)422-431.
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根面う蝕の形成機序が明らかになりました。

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