インプラントと歯内療法の最近のブログ記事

エンドクラウンって、何?!

・エンドクラウンは、CAD/CAMのモノブロック加工技術の進歩とともに発展し、欧米を中心に認知が広がった。
2000年代からエンドクラウンに関する様々な基礎研究や臨床研究によって、その有効性が検討された。
2020年と2021年のメタアナリシスでは、臨床研究の予後を統計解析した結果、小臼歯と大臼歯の両方に適用できるというエビデンスが示された。
また、2021年にはヨーロッパ歯内療法学会のポジションステートメントにも選択肢として刑された。
エンドクラウンは、海外で広く認識され、多くの歯科医師によって実践されているが、2023年現在、国内では大学関係者や一部の臨床家に認識が限られている。
(参考文献)
European Society of Endodontology developed by Francesco Mannocci et al: European Society of Endodontology position statement : THe restoration of root filled teeth. Int Endod J, 54(11): 1974-1981, 2021.
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CAD/CAM冠は強度を考え、比較的厚みを十分に必要とされたので、その結果、脱離が比較的多いという問題がありました。
ところが、エンドクラウンの場合には、その保持力を髄腔に求めるので、脱離や破折の心配が少ないだけでなく、再根管治療の際の穿孔の危険性も少ないことが予測されます。
また、CAD/CAMのモノブロックを削り出すことを考えれば、クラウン部分のみよりクラウンと築造部分の合わせた部分をまとめて削り出すという意味では合理的であると考えられます。

2023年11月 5日

hori (08:10)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

垂直性歯根破折に有意に関連する要因

・垂直性歯根破折に有意に関連する要因として、
1. 6ミリ以上の歯周ポケット
2. J-shaped defect
3. 頬側皮質骨の欠損
が挙げられていたが、歯根には至らない歯冠部の亀裂に有意な関連していたとしている。
また、垂直性歯根破折が疑われる歯について、口腔内所見とCBCT所見から診断および要因分析を行った報告がある。
この報告も確定診断はマイクロスコープによる視認であった。
垂直性歯根破折の存在を疑う口腔内所見及び画像所見(全12要因)において、破折の有無に対して有意に影響のあった要因は、以下の4つであった。
・腫脹・膿瘍
・5ミリ以上の歯周ポケット
・CBCTでのJ-shaped defect
・CBCTでの根尖部の骨吸収像
また、すべての要因のうち2つないし3つの要因が重なっている歯は垂直性歯根破折の存在に対するオッズ比が2.56倍、4つ以上の場合は8.80倍であった。
患者個人の要因として、性別・年齢・パラファンクションが垂直性歯根破折の存在と有意に関連があった。
さらにこの報告において注目すべきは、垂直性歯根破折の見落とし(偽陰性)は少ないものの、過剰に垂直性歯根破折を疑う(偽陽性)可能性が高いということを示している。
結局は、怪しいと思われる所見が存在して、実際には破折線を確認しない限りは歯根破折だとは確定できない、ということになる。
(参考文献)
Quintero-Alvarez M, Bolanos-Alzate LM, Villa-Machado PA. Restrepo-Restrepo FA, Tobon-Arroyave SI. In vivo detection of vertical root fractures in endodontically treated teeth: Accuracy of cone-beam computed tomography and assessment of potential predictor variables. J Clin Exp Dent, 2021 Feb ; 1: 13 (2) : e119-e131.
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歯根破折に関しては、怪しいと思われる所見が存在して、実際には破折線を確認しない限りは歯根破折だとは確定できないことが明らかになりました。

2023年11月 1日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

セメント質剥離の診断について

セメント質剥離は診断が困難な場合があり、剥離が歯冠側で生じると、限局的な深い歯周ポケットが形成されるため、垂直的歯根破折と誤診されやすい。
一方、根尖側で剥離が生じると、歯肉の腫脹瘻孔の形成、そして根尖部周囲の骨吸収を呈し、根尖性歯周炎と誤診され奏功しない根管治療を繰り返し、結果として抜歯に至るということがまま起こっている。
(参考文献)
Lin HJ, Chang MC, Chang SH, Wu CT, Tsai YL, Huang CC, Chang SF, Chang YW, Chan CP, Jeng JH. Treatment outcome of the teeth with cemental tears. J Endod. 2014 Sep ; 40(9) : 1315-20.
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セメント質剥離は、60歳以上の男性前歯生活歯に比較的多く認められるので、注意が必要です。

2023年9月 5日

hori (08:31)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

樋状根への適切なポストの配置

佐々木は、直接法による漏斗状根管に対するファイバーポスト併用レジン支台補強に関する報告を行い、3本のファイバーポストとスリーブを配置した条件では、ポストなしおよび中央に1本配置したものよりも有意に高い曲げ強さを示したと報告している。
この結果は、樋状根にもあてはまるのではないかと考えている。
すなわち、樋状根へのポストの配置は複数本もしくはスリーブを複数配置することが有用であるといえる。
(参考文献)
佐々木圭太:漏斗状根管に対するファイバーポスト併用レジン次第築造の補強に関する研究. 日補綴会誌, 2: 157-166. 2010.
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樋状根への適切なポストの配置が明らかになりました。

2022年7月20日

hori (08:36)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

セメント象牙境はエックス線的根尖からは最大2.5ミリ歯冠側に位置する.

・セメント象牙境は解剖学的根尖孔から約1.0ミリ、エックス線的根尖からは最大2.5ミリ歯冠側に位置すると報告されている。
また、これらの位置が一致したものは5%に過ぎなかったとする報告や、組織学的に一致したものはなかったとする報告もあり、臨床的にはその位置を正確に検出することは困難である。
(参考文献)
Sand AY, Al-Yahya AS. The location of the cementodentinal junction in single-rooted mandibular first premolars from Egyptian and Saudi patients : a histological study. Int Endod J 2003 ; 36(8) : 541-544.
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セメント象牙境はエックス線的根尖からは最大2.5ミリ歯冠側に位置することが明らかになりました。

2022年2月10日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

解剖学的根尖孔と解剖学的根尖は1.38ミリも乖離していることがある。

・解剖学的根尖孔と解剖学的根尖は乖離していることが多く、乖離が発生する頻度は17-100%とさまざまな報告がある。
そして、その乖離は0.2-1.38ミリほどに及ぶという報告がある。
この乖離は前歯部よりも臼歯部において大きく、それは咬合力によりセメント質が添加されることが原因であるとされている。
(参考文献)
Arora S, Tewari S. The morphology the apical foramen in posterior teeth in a North Indian population. Int Endod J 2009 ; 42(10) : 930-939.
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解剖学的根尖孔と解剖学的根尖は乖離していることが多く、その乖離は0.2-1.38ミリほどに及ぶということが明らかになりました。

2022年2月 5日

hori (08:24)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

学校歯科検診「要受診」でも62.3%が未受診

学校歯科検診で受信が必要とされた生徒のうち62.3%が受診していない。
「2020年学校健診後治療調査」によるもので、前年調査より5.3ポイント増加している。
保団連によると、新型コロナ感染拡大の影響もあり、養護教諭自身も歯科受診を強く勧められないなどの背景があるとしている。
(アポロニア21 2021年8月号 )
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子ども医療費助成という制度があるために、中学生以下の子供は医療費がほとんどかかりません。
また、歯科医院でのクラスターは全国的にみてもほぼ認められない状態なので、安心して来院されるとよいと考えています。

2021年9月20日

hori (08:31)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

根管充填で歯質は強化されるのか?

根管治療後に生じるトラブルの一つに歯根破折がある。
バイオセラミック系シーラーやレジン系シーラーを用いて根管充填を行うことにより、根管充填していない歯と比較して破折しにくくなる。
つまり、微小漏洩を防ぐための緊密な根管充填は、同時に歯の破折予防になる。
ただし、歯質強化といっても、根管形成前に戻るのみで、それ以上ではない。
(参考文献)
Osiri S,et al. Root reinforcement after obturation with calcium silicate-based sealer and modified gutta-percha cone. J Endod, 2018 ; 44(12) : 1843-1848.
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比較的新しい材料であるバイオセラミック系シーラーやレジン系シーラーを用いて、根管充填した場合には、根管形成前程度にまで歯質強化がなされるようです。
またほかの文献では、歯質強化という観点からは、側方加圧充填法が推奨されるとの記載もありました。

2021年6月10日

hori (08:31)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

再根管治療を行わずに、逆根管治療第一選択は是か?!

・築造体の除去が困難である場合、非外科的再根管治療を行わずに、逆根管治療を第一選択にすることは可能なのか?
ポストコアが臨床的、放射線的に問題なく装着されている既根管治療歯87歯に対して、非外科的再根管治療を経ないで行われた逆根管治療の経過を調べた研究。
経過観察は1年半-5年経過時と10年-13年経過時の2回行われた。
1回目の経過観察時には97.6% の歯(83/85)が治癒と判定されたが、2回目では75.8%(47/62)に低下した。
逆根管治療は、非外科的再根管治療を行う際のポストやコア除去に伴う歯根破折や穿孔の可能性を排除できる信頼性の高い治療法である。
(参考文献)
Truschnegg A, et al. Kong-term follow-up for apical microsurgery of teeth with core and post restorations. J Endod. 2020; 46(2) : 178-183.
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術式が従来法からモダンテクニックに変化するとともに、使用されるMTAセメントの封鎖性が良好であることなどによって、良好な結果がもたらしているのだと推測されます。
10年-13年経過して75.8%という結果であるのなら、十分信頼できる方法であると考えられます。

2021年5月15日

hori (08:48)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

下顎前歯の根管解剖

下顎前歯の根管解剖のまとめ
1.下顎中切歯
1根管で1根管が96.2%。
1-2-1が2.1%、1-2が1.7%。
2.下顎側切歯
1根で1根管が82.7%。
1-2-1が11.8%、 1-2が5.5% 。
3.下顎犬歯
1根管で1根管が98.2%。
1-2-1が1.1% 1.1%、1-2が0.7%、2根2根管も1%存在する。
(日本歯科評論 2021年4月号 )
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この中で、1-2の割合が最も多いのが、ダントツに下顎側切歯であることは記憶しておきたい内容ですね。

2021年5月10日

hori (08:14)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

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