インプラントと過剰な力の最近のブログ記事

インプラント治療のトラブルは補綴学的合併症が大多数。

Pjeturssonらは、上部構造装着後5年以上経過したインプラント治療で合併症が認められない割合は66.4%のみであり、8.5%が生物学的合併症でそれ以外が補綴的合併症であると報告している。
インプラント治療が補綴治療である以上、咬合管理の重要性を改めて認識しなくてはならない。
(参考文献)
Pjetursson B. E., Tan K., Lang N. P., Bragger U., Egger M M., Zwahlen M. : A systematic review of the survival and complication rates of fixed partial dentures after an observation period of at least 5 years. Clin Oral Implants Res 15(6); 625-642,2004.
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インプラントのトラブルでいかに大きい部分が補綴学的合併症であるかを再認識する結果となりました。

2024年3月 5日

hori (08:07)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

難治性歯内療法症例の約 40%が歯根破折関連。

難治性歯内療法症例として神奈川歯科大学病院に紹介来院(2013-2022年)した患者193症例に対する疾患原因解明のため、歯科用X線写真読影、およびマイクロスコープを使用した確定診断を行った。
その結果、難治性歯内療法症例の原因は、歯根破折(象牙質亀裂を含む)77例(39.9%)、穿孔31症例(16.1%)、ファイル破折23症例(11.9% )、非歯原性疼痛39症例(20.2%)、原因不明23症例(11.9%)に分類され、難治性歯内療法症例の約 40%が歯根破折に伴うことが明らかにされた。
さらに、歯根破折77症例のうち、根管象牙質に垂直亀裂の所見が25症例に確認された。
(歯界展望 2023年3月号 )
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インプラント治療希望の患者さんの歯の喪失原因で大きな部分を占めるのが、この歯根破折です。
歯根破折予防のために、当院では、歯やインプラントの位置、咬み合わせを重視した治療を行っています。

2023年5月15日

hori (08:54)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

1ミリを超えるインプラントの圧下は20.8%

インプラントで修復された成人の自然な歯列については最近報告されている。
成人患者の最大50.5%が隣接する歯や歯槽頂の骨と比較して、4-18.5年の期間ののち平均0.58ミリのインプラントの圧下が発生する可能性がある。
この同じ期間内で、1ミリを超えるインプラントの圧下は20.8%を示した。
(参考文献)
Massaro C, Miranda F, Janson G, de Al,eida RR, Pinzan A, Martins DR, Garib D. Maturational changes of the normal occlusion : A 40-years follow-up. Am J Orthod Dentofacial Orthop 2018 ; 154(2) : 188-200.
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インプラントが圧下されるということは、その部分の咬み方が不足するということを意味します。
それはすなわち、インプラントを含む歯列や咬み合わせが崩れることにつながります。
プラークが付着しているか否かのチェックは当然として、咬み合わせのチェックも定期的に行わなくてはならないということになります。

2021年11月20日

hori (08:45)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

歯根尖切除術後の垂直性歯根破折の発生についての後ろ向き研究

1999年9月-2018年12月に歯根切除法を受けた864名(男性45%、女性55%;52.00±13.97歳)の患者の1058歯を対象とし、術後の垂直性歯根破折の有無を後ろ向きに調査した。
歯根尖切除術が行われた1058歯の垂直性歯根破折の発生率は4%であった。
垂直性歯根破折の2/3は術後1年以内に発生した。
好発歯種は上顎小臼歯と下顎大臼歯で、下顎大臼歯の近心根がもっとも高頻度であった。
(参考文献)
von Arx T, Maidonado P, Bornstein MM. Occurrence of vertical root fractures after apical surgery : A retrospective analysis . J Endod 2020 ; 47(2) : 239-246.
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歯根尖切除術が行われた1058歯の垂直性歯根破折の発生率は4%という結果でした。
思った以上に予後が良いことに驚かされました。
また歯根尖切除術を行った歯牙に垂直性歯根破折が発生するのあれば、比較的早期にそれは発生するものと考えてよいと思います。

2021年9月 5日

hori (08:28)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

補綴歯の予後と歯冠-歯根比

・補綴歯の予後を予測するうえでの歯冠-歯根比についてのレビューによると、ブリッジの支台歯については歯冠長:歯根長が1:1.5(歯冠-歯根比0.67)という比率が維持されていることが好ましいが、歯周組織に問題がなければ1:1(歯冠-歯根比1.0)まで許容できるとしている。
しかしながら、この指標単独で予後を予測するのは不十分であり、複数の指標とともに評価する必要があるとしていることに注意したい。
また、鉤部分床義歯の鉤歯の長期予後を調べた報告によると、歯冠-歯根比が1.25(歯冠長:歯根長が1:0.8)を越えなければ7年生存率は大きく低下しなかった。
しかし、メンテナンスの通院頻度、咬合支持状態、根管治療の有無、歯周ポケット深さなどの鉤歯の喪失に対するハザード比を上昇させる要因であった。
(参考文献)
Grossmann Y, Sadan A. The prosthodontic concept of crown-to root ratio : a review of the literature. J Prosthet Dent 2005 ; 93(6) : 559-562.
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治療計画立案の際には、歯冠-歯根比に対しても注目しています。
その歯牙が例えば10年後安定した状態であるかどうかによって、臨床家は歯牙の保存基準を変更し続けていく必要があると考えています。

2021年8月25日

hori (08:55)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

精神的ストレスによる歯の痛み

・新型コロナウイルスにより「世帯収入の減少」「仕事の減少」「失業の経験」をしていると、歯の痛みを訴えるケースがそれぞれ1.42倍、1.58倍、2.17倍多かった。
東京医科歯科大学らが明らかにしたもので、精神ストレスが主な中間因子となっている。
研究グループは、新型コロナウイルス感染症の影響による社会経済状況の悪化と歯の痛みの関連を調べるために、昨年8,9月に全国の15-79歳の男女に対して行われた2万5482人のデータを分析。
「歯の痛み」が見られたのは全体の9.8%で、背景因子を考慮した多変量ロジスティック回帰解析で検証すると、「世帯収入の減少」「仕事の減少」「失業」が統計的有意に関連。
さらに、「世帯収入の減少」と「歯の痛み」の関連では、「精神的ストレス」21.3% 「歯科受診の延期」12.4%、「間食の増加」9.3%、「歯磨きの減少」1.5%が中間因子だと判明した。
(アポロニア21 2021年6月号 )
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新型コロナウイルスでストレスが増大しているのか、歯を破折させたり、歯を大きくかけさせてくる方が少なくありません。
インプラントが必要な状況とならないように、自分にあったストレス解消法を模索することもまた重要であると考えています。

2021年7月10日

hori (08:38)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

マイクロクラックと歯根の破折抵抗性には相関はあるのか?

既存のマイクロクラックが歯根の破折抵抗性に及ぼす影響  抜去歯を用いた研究
(研究目的)
抜去歯を用いて、歯根象牙質のマイクロクラックが歯根破折の原因となり得るのかを解析することを目的とした。
(研究内容)
下顎切歯180歯をマイクロCTで撮影したのち、根管断面が円形で歯根象牙質体積と根管容積がおおむね同等な60歯を選び、2名の調査員が歯根断面画像からマイクロクラックの位置。数を評価した。
次いで、歯軸方向に圧縮荷重を加え破折強さを測定した。
その後、再びマイクロCTを撮影してクラックの進展を観察するとともに、破折パターンを分類した。
マイクロクラックの数と破折強さ関連をスペアマンの順位相関(2つの変数間の相関関係を評価する分析方法の一つ)にて解析した。
(研究結果)
マイクロクラックは44歯(79% )における6-42%(平均14% )断面画像で検出され、1歯あたり0-1605本(平均412本)であった。
破折可住地は227-924N(平均560.3N)で、マイクロクラック数との有意な相関はなかった。
破折パターンは垂直性歯根破折が71.4%であり、ほとんどの場合に破折線とマイクロクラックの位置に関連はなかった。
マイクロクラックのない歯の破折荷重は、マイクロクラックを有する歯と同程度であった。
(結論)
根管未処置の下顎切歯では、歯根象牙質中のマイクロクラックの数と歯根の破折抵抗性との関連は見られなかった。
(参考文献)
Cavalcante DM, Belladonna FG, Simoes-Carvalhal JCA, Souza EM , Lopes RT, Silva EJNL, Dummer PMH, De-Deus G. Do pre-existing microcracks play a role in the fracture resistance of roots in alaboratory setting ? Int Endod J, 53 (11) : 1506-1515,2020.
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マイクロクラックの数と歯根の破折抵抗性には関連がみられた、という結論を期待しましたが、事実はそうではないようです。
今後の研究報告に期待したいところです。

2021年5月25日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

日中の噛み締めで歯周病の進行リスクが4.9倍に!

日中の噛み締めがあると、歯周病の進行リスクが4.9倍なる。
岡山大学の研究グループが発見した。
研究は、同大学病院予防歯科で定期的に歯周病の専門的なケアを受けている患者のうち、横断研究に参加した48人を対象に行った。
研究開始時に詩集簿式検査、咀嚼筋の活動量の検査、歯周病原因菌(P.gingivalis)に対する血液中の抗体検査、アンケート調査を実施。
3年間の追跡して、歯周病の進行について調べた。
日中の噛み締めについては、最大咬合時の筋活動を100%として、20%以上の筋活動が1時間に約1分以上観察される場合と定義した。
結果、日中の噛み締めがあると、ないよりも4.9倍歯周病進行しやすいことが判明した。
(アポロニア21 2021年4月号 )
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噛み締めが歯周病の進行リスクを上昇させることは感覚的に理解できます。
ただ、従来から話題に上がっていた"夜間の噛み締め"ではなく、"日中の噛み締め"が歯周病リスクを4.9倍も高めることに驚かされました。
インプラントのプロビジョナルクラウンの破損や脱離の頻度は、個人差が大きい部分ですが、噛み締めの程度が大きい患者さんほど、頻繁にプロビジョナルを破損・脱離させてくるように感じます。
歯を失うことになった原因が、噛み締めであるのであれば、ふと気が付くと噛み締めてしまう悪い癖を、インプラント治療前後で、なくしていく配慮が必要であると考えられます。

2021年5月20日

hori (08:24)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

可逆性歯髄炎をともなう亀裂歯

本研究では、可逆性歯髄炎をともなう亀裂歯を最低3年後に予後観察し、クラウンで補綴された症例では18.7%、クラウンが装着されていない症例では65.9%に不可逆性歯髄炎もしくは歯髄壊死が生じたとの結果が報告されている。
(参考文献)
Wu S, Lew HP, Chen NN. Incidence of Pulpal Complication after Diagnosis of Cracked Teeth. J Endod 2019 ; 45(5) : 521-525.
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可逆性歯髄炎は初めの数回では、クラウンで早期に補綴を行うことで、歯髄への炎症の波及は避けられると思います。
しかしながら、可逆性歯髄炎で来院される患者さんの多くは、当院の場合は初めて来院される方が多いと認識しています。
そのため、何回目の可逆性歯髄炎かの判断は把握しきれないと考えています。
これらの理由により、クラウンで補綴された症例でも2割程度の不可逆性歯髄炎や歯髄壊死が認められるのだと考えています。

2020年10月 5日

hori (08:17)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

根分岐部病変の予後が悪い理由。

・根分岐部病変の予後が悪い理由は、歯肉線維が関係していると考えられる。
歯肉線維には1.歯牙歯肉線維 2.歯牙骨膜線維 3.歯槽歯肉線維 4.輪状線維の4種があり、歯と歯肉の付着、歯肉の増強に関与している。
根分岐部病変2,3度の歯では、歯の周囲には走行していない。
そのため、根分岐部を治療しても歯肉を補強する弾力性が弱く、また付着も弱く治癒しにくいと考えられる。
つまり、治癒後に輪状線維が歯根周囲をしっかりと囲めるように、凹凸の少ない単純な歯根形態にすることが長期的な予後に関係していると考えれる。
(参考文献)
亀山洋一郎 : 歯肉線維と歯根膜線維. 岩手歯誌, 1:137-142, 1976.
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根分岐部に対する歯周外科の予後を確実なものにするためには、歯根形態を単純化し、輪状線維が歯根周囲をしっかりと囲まれるようにすることが明らかになりました。
しかし、根分岐部病変の状態が悪ければ悪いほど、当然根管治療が必要になるケースが多くなり、場合によっては抜根も視野に入るかと考えられます。

2020年8月 1日

hori (08:55)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

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