先のばしの最近のブログ記事

入れ歯を拒否し続けた65歳女性の話 その2

前回のコラムで、毎日の食事をつくるお母さんが歯の治療を疎かにすることによる意外な影響についてお話しました。
軟食を続けていると、族全員が高血圧、糖尿病、肥満をはじめとした生活習慣病になるというのがその要旨です。
(現に、この方のご主人は、すでに高血圧、糖尿病を患っており、ご家族全員が肥満という状態でした。)
この中の糖尿病は実は歯周病と密接な関係があります。
糖尿病が悪くなると、歯科で一生懸命に歯周病の治療を行っても、その効果はなかなかでません。
現実的には歯を失ったところにはインプラント治療を受けてしっかり咬めるようになるのが一番です。
ですが、まずは入れ歯を口に入れておくことから始めてみてはいかがでしょうか。
そして、それができるようになったならば、次は入れ歯を使いこなすようになることが目標となるわけです。
(義足を使いこなすためには、まずはそれをつけておくこと自体に慣れた後に、歩く練習をするのと似ています。
ちなみに、義足と義歯を比較した場合に、母集団の数に違いがあるからかもしれませんが、義歯の場合は、ある一定数の患者様が、入れ歯を製作した瞬間に使いこなせるものだと勘違いしています。)
このようなタイプの方に特徴的なのは、歯の欠損の数が少ない時期に、すでに入れ歯を使用することを拒否し、それから数十年の年月が経過している点にあります。
70歳近い年齢になって、突然大きな入れ歯を入れることに拒否反応を示す方は意外と少なくありません。
昔にタイムスリップすることができるのならば、まずは『小さい入れ歯を億劫がらずにお口に入れておくべきだった・・・。』ということになります。

2011年12月10日

hori (10:46)

カテゴリ:先のばし

入れ歯を拒否し続けた65歳女性の話

先日、こんな方が来院されました。
朝起きると歯周病で歯が1本、また1本と自然に抜けている状態にも関わらず、10年近く歯医者から遠ざかっていたものの、今回の歯の痛みは限界を超えるレベルだったということで、仕方なく来院したとのことでした。
その方のご主人は比較的熱心に堀歯科医院に通院されてはメンテナンスを受けられていたのですが、熱心に歯磨きをしている割には、クラウン・ブリッジの下からカリエスが進行する傾向がありました。
そんなある日、その方のご夫人が、歯に痛みがあるとのことで、連絡をいただいたのが、先にお話した65歳の女性だったわけです。
その女性のお口を拝見すると、義歯のクラスプで抑えている歯で、より咬みやすい歯から順番に抜け落ちて現在に至ることが分かりました。
また現在痛んでいる歯はピンセットで引っ張っても抜けるのではないかというくらい"ぷらぷら"の状態でした。
歯肉は真っ赤にただれ、歯肉溝からは、排膿が続いていました。
これでは、食事がままならないだけでなく、排膿によるお口の不快感が24時間、365日続いたはずです。
ただ、それらの問題はそのご婦人個人の問題に過ぎませんが、本当の問題はそんなことではありません。
もっとも重大な問題は、ご婦人の歯周病による咀嚼障害が、家族の健康に悪影響を与えるということなのです!
詳しく説明すると、毎日食事の準備をする方の歯の状態が悪いと、自然と自分が無理なく食べることができるものを用意するようになります。
それはすなわち、毎日の食事は、『咬まなくても味がしっかりあって旨みを感じるものであり、舌と上顎で潰して食べることができるもの』に自然と推移しているはずです。
そうなると、塩分・糖分・脂肪をふんだんに使用した軟食になりますから、満腹中枢が働く前に、食べ過ぎてしまうことになるので、お子さんからご主人、おじいちゃん・おばあちゃんまで、家族全員が肥満、高血圧、糖尿病といった病気を抱えた状態となります。
また、ご主人が歯磨きを頑張っている割には、クラウン・ブリッジの下の歯根部分が虫歯になりやすいのもこの軟食傾向が原因の一つと考えられます。
柔らかい食品は歯に残りやすいので、虫歯になりやすいのです。
そういう意味では、毎日の食事を作るお母さんのお口の状態が悪いだけで、家族の将来は暗いものとなると考えれば、これほど恐ろしいものはないと言えるかと思います。
家族をメタボリックシンドロームから守るためにも、お母さんは一刻も早く咀嚼障害を克服しなくてはなりませんし、歯医者嫌いも当然のことながら克服しなくてはならないです。

2011年11月28日

hori (13:08)

カテゴリ:先のばし

このページの先頭へ