インプラントと糖尿病の最近のブログ記事

歯周治療後3か月でHbA1cが0.43%低下。

・2022年に発表されたメタ解析では、2型糖尿病をもつ患者を対象にしたSRP単独の効果を算出する群と、非治療群を比較した20件のランダム化比較試験をもとに、歯周治療後3か月でHbA1cが0.43%低下したことが示されています。
これらのメタ解析のデータを根拠に、多くの歯周病および糖尿病関連の学会が、糖尿病をもつ患者に対する歯周治療を推奨しています。
・2型糖尿病をもつ患者に対する運動療法の効果を検討した代表的なメタ解析では、合計8538名を対象とする47件のランダム化比較試験が解析され、運動介入とHbA1cの変化との関連が検討されました。
その結果、毎週定められた時間を計画的に行う運動プログラムを実施した研究を統合したデータでは、運動群でHbA1cが平均0.67%低下していました。
さらに、運動総実施時間によって効果に差がみられ、週150分を超える運動プログラム(3か月継続)ではHbA1cが0.89%低下した一方で、週150分以下(3か月継続)では0.36%にとどまりました。
これは運動の強度や種類よりも持続的な総時間がHbA1cの低下に与える影響が大きい可能性を示唆しています。
そして、運動の種類別にみると、有酸素運動単独のHbA1cの低下は0.73%、レジリエンス運動単独では0.57%、両者の併用では0.51%といずれも有効性が確認されています。
(参考文献)
Simpson TC, Clarkson JE, Worthington HV, MacDonald L, Weldon JC, Needleman I, Iheozor-Ejiofor Z, Wild SH, Qureshi A, Walker A, Patel VA, Boyers D, Twigg J. Treatment of periodontitis for glycaemic contorol in people with diabetes mellitus. Cochrane Databese Syst Rev, 2022 Apr 14; 4 (4) : CD004714.
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2型糖尿病をもつ患者に対する歯周治療後3か月でHbA1cが0.43%低下に対して、同じく2型糖尿病をもつ患者に対する週150分を超える運動プログラムではHbA1cが0.89%低下という結果が得られました。
週150分を超える運動プログラムを3か月間継続した効果は、歯周治療後3か月後の再評価した際の効果のおよそ2倍ということになります。
2型糖尿病の傾向がある方は、運動に加え歯周治療も行う方がよいでしょう。
今回の報告では週150分未満かそれ以上かで分けて比較していますが、保存できない歯をインプラントに置き換え、咬めない状態が咬める状態になるとさらに長い時間の運動プログラムをこなせるようになるので、一層のHbA1cの低下を期待できます。

2025年11月10日

hori (08:05)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

糖尿病治療で歯周病が改善

糖尿病治療が直接的に歯周病を改善することが分かった。
大阪大学の研究グループは、歯科的な介入は一切行わずに、29人の2型糖尿病患者に対し、2週間の入院下での糖尿病集中治療を実施し、治療前後の全身的な臨床指標や歯科的指標を解析した。
その結果、血糖コントロール指標に加え、歯周病の炎症程度を示すPISAが改善。
さらに、PISAの改善度の大小で被検者を2群に分けて比較解析したところ、大きく改善した群では糖尿病治療前のインスリン分泌能が有意に高値を示し、糖尿病性神経障害および抹消血管商家の指標も有意に良好な値となった。
(参考文献 Diabetes, Obesity and Metabolism 8月15日)
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歯科的な介入は一切行わずに、2型糖尿病患者に対し糖尿病集中治療を実施し、血糖コントロール指標に加え、歯周病の炎症程度を示すPISAが改善することが明らかになりました。

2024年12月 5日

hori (15:58)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

歯間清掃習慣や歯数の維持で、2型糖尿病患者の血糖変動が良好に。

糖尿病と歯周病は密接に関係し、2型糖尿病患者に歯周病治療を行うと血糖コントロールが改善されることが明らかになっている。
サンスターらは、通院中の2型糖尿病患者を対象に、口腔衛生指標と連続した24時間の血糖変動などの血糖管理指標調査し、その関係性を分析。
その結果、歯間清掃習慣や歯数の維持が、HbA1cや空腹時血糖値といった検査値だけでなく、24時間の血糖変動の質の良さを示すTime in Rangeとも関係することが明らかになった。
Time in Rangeは、持続血糖値で測定した血糖が目標域に入った時間の割合を計算した値で、合併症の発症・進展や死亡率に関するとの報告が増えていることから、血糖変動の質を示す指標として注目が集まっている。
(Dentalism No.60 )
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歯間清掃習慣や歯数の維持で、2型糖尿病患者の血糖変動が良好になることが明らかになりました。

2023年12月 1日

hori (08:54)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

オッセオインテグレーション獲得後であっても糖尿病はインプラント治療のリスクなのか?

「オッセオインテグレーション獲得後であっても糖尿病はインプラント治療のリスクなのか?」(九州歯科大学 野代友孝先生)
オッセオインテグレーション獲得後の高血糖状態によりAGEsおよび炎症性サイトカインの発現が増加し、インプラント周囲の骨吸収が引き起こされること、骨吸収はプラークの蓄積によって悪化することが示唆されました。
(インプラント ニュース 第33号 )
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糖尿病を持病に持つインプラント患者さんは少なくありませんが、当院の患者さんではよい状態が維持されている方が多いように感じています。
これも治療前後で、劇的にプラークコントロールが改善されていることが関係しているものと考えています。

2021年3月 1日

hori (08:00)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

インプラント治療で低栄養を改善!

・義歯を含めた全歯列の最大咬合力を用いて、咬合力と栄養摂取との関連を調査した報告では、70歳群(69-71歳)の対象者を、咬合力により低位群、中位群、高位群と分けて食品群と栄養素の摂取量を比較しました。

食品群では、緑黄色野菜とその他の野菜の摂取量は、咬合力高位群が低位群に比べて有意に多く、穀類は摂取量が少ない傾向(有意差なし)というものでした。

この結果、栄養素では、ビタミンA・C・Eや食物繊維の摂取量が高位群において低位群よりも有意に多かったと報告されています。
他にも多くの報告がありますが、概ね以下のようにまとめられます。
すなわち、咀嚼力が低下すると緑黄色野菜を含む野菜類や魚介・肉などの咬みにくい食品群を避けるようなる一方で、穀物などの咬みやすい食品の摂取が増えます。
この結果、ビタミン類、食物繊維、ミネラル類やタンパク質の摂取が減少し、炭水化物の摂取が増加するというものです。
(参考文献)
Significanse of occlusal force for dietary fibre and vitamin intakes in independently living 70-year-old Japanese : from Sonic Study. Inomata C, et al. J Dent2014; 42(5):556-564.
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咬合力の低位群と高位群とを比較した結果、低位群では、ビタミン類、食物繊維、ミネラル類やタンパク質の摂取が減少し、炭水化物の摂取が増加するということが明らかになりました。
これはすなわち、咬合再構成を行う前後で、低栄養状態が改善されるために、患者さんがインプラント治療によって真の健康を手にすることが可能となるということになります。

2018年9月20日

hori (11:18)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

現在歯数と栄養素摂取の関係

・日本歯科医師会会員の現在歯数と栄養素摂取の関係
日本歯科医師会会員約2万名の健康調査の一部を、現在歯数0本の栄養素摂取量を100%としてグラフ化したところ、現在歯数が減少するにつれて、カルシウムおよびカロテン、ビタミンCの摂取が少なくなり、逆に炭水化物の摂取が多くなっている。
現在歯数が0本の歯科医師のタンパク質摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のタンパク質摂取量は101.8%。
現在歯数が0本の歯科医師の炭水化物摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の炭水化物摂取量は96.3%。
現在歯数が0本の歯科医師の歯質摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の脂質摂取量は104.6%。
現在歯数が0本の歯科医師のカルシウム摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のカルシウム摂取量は108.6%。
現在歯数が0本の歯科医師のカロテン摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のカロテン摂取量は119.5%。
現在歯数が0本の歯科医師のビタミンC摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のビタミンC摂取量は111.1%。
現在歯数が0本の歯科医師の食物繊維摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の食物繊維摂取量は104.2%。
(参考文献)
歯の保有状況と食品群・栄養素の摂取量との関連(その1) 平成17年国民生活基礎調査とリンケージした国民・栄養調査データによる解析. 厚生労働省科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病)口腔機能に応じた保健指導と肥満抑制やメタボリックシンドローム改善との関係についての研究(研究者代表:安藤雄一)安藤雄一ほか. 平成23年度総括・分担研究報告書. 2012; (5) : 556-564.
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口腔の専門家である歯科医師でも、現在歯数が少なければ栄養バランスが偏ることを示したエビデンスです。
食品群では、歯数が減少するにつれて、牛乳・乳製品と、緑黄色野菜を含む野菜類など多くの食品群で摂取量が減る一方で、米や菓子類の摂取量が増えています。
この結果、カルシウム、カロテン、ビタミンCの摂取が少なくなり、逆に炭水化物の摂取が多くなっています。
歯科医師であっても、現在歯数が少ないことと食事や栄養の偏りには関係があることが示されているのです。

2018年9月 5日

hori (09:02)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

糖尿病患者は依然として増加傾向。

・厚生労働省の平成26年「国民・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人の割合が男性で15.5%、女性で9.8%でした。
この調査の前身である「平成14年糖尿病実態調査」では、糖尿病が強く疑われる人は推定約740万人、日本人男性の12.8%、女性の6.5%でした。
平成9年の推定値は約690万人でしたから、日本の糖尿病患者数はまだ増加しつづけています。
(知って得した!歯周治療に活かせるエビデンス )
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糖尿病の患者さんは年々増加傾向にあるそうです。
糖尿病になると同じように歯周治療を行っても、正常者と同じレベルの治療効果はないと言われており、それ故に歯を失う危険性が高いということになります。
また、糖尿病患者さんのインプラント手術は、糖尿病ではない患者さんに比べて、骨結合の失敗のリスクが2倍あるともいわれています。
糖尿病になりにくい食生活習慣を続けて、歯を失いにくい体質でありたいものです。

2017年4月 1日

hori (10:05)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

歯周病治療でHbA1cはどの程度改善するのか。

・Engebretsonらによる研究では、2型糖尿病に非外科治療(SRPおよび0.12%クロルヘキシジンの応用)を行ったところ、PPDやBOPの改善は認めたものの、HbA1cは減少しなかったと報告している。
しかし、日本において中等度-重度慢性歯周炎を有する?型糖尿病患者に非外科治療を用いた研究では、高感度CRPレベルが500ng/ml以上の患者(2型糖尿病および中等度-重度慢性歯周炎)において、SRPとミノサイクリンの局所投与により3か月後に有意なHbA1cの改善を認めたと報告している。
両者の研究においては、人種、年齢、体格指数に大きな違いがあります。
米国における体格指数は34-35kgに対して、日本では22-25kgであり、重度歯周炎により上昇する高感度CRPが肥満による炎症で相殺され、差がなくなるとの報告もあります。(単位はすべて一平方メートルあたり)
体格指数が日本人に近い中国で行われた研究では、2型糖尿病患者に外科治療を含めた歯周病治療を行った群では、HbA1c、空腹時血糖、高感度CRPを含めた炎症性因子の統計学的な改善を認めたと報告しています。
以上より、メタアナリシスではHbA1cの改善を認めてはいるものの、論文数が少ないこと、症例数が十分ではないことから、歯周病や糖尿病治療を多岐にわたり比較することは困難です。
現時点で、糖尿病治療の指針のルーティンに入ってくるほどのエビデンスはないように思います。
しかし、歯周病治療によってHbA1cが改善することは事実で、歯周病治療だけで糖尿病が改善するというエビデンスはないものの、糖尿病患者は歯周病を発症しやすいことを考えて、双方からのアプローチを行うことに意義はあると思います。
(歯界展望 2017年1月号 )
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歯周病と糖尿病との関連については、改善するとするエビデンスがある一方で、改善しないというエビデンスもあるようです。
(同じようにエビデンスとはいっても、エビデンスレベルはそれぞれで異なっています。)
そのため、歯周病治療だけで糖尿病が改善するというエビデンスはないものの、歯周病治療によってHbA1cが改善することは事実で、糖尿病患者は歯周病を発症しやすいことを考えて、双方からのアプローチを行うことに意義はあるとのことでした。
他の疾患と歯周病の関連もそうですが、歯周病の治療を行うとどの程度、糖尿病の状態が改善するのか、人種により体質が異なるのであれば、日本人の場合はどの程度改善するのかを、だれの目にも分かる形で報告していただけたらと考えています。

2017年3月20日

hori (09:59)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

70歳以上の糖尿病予備軍は35%。

・糖尿病患者の歯周治療マニュアルには、随時血糖値が200ミリグラム/dL以上の場合は間欠的処置は避けるべきと明記されている。
・70歳以上の「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」の割合をみると、男性で「強く疑われる人」つまり予備軍が22.6%、「可能性が否定できない人」つまり予備軍が18.4%。
女性では「強く疑われる人」が11%、「可能性が否定できない人」つまり予備軍が23.8%という数値が出ている。
まさに、約35%の高齢者が糖尿病についての何らかの因子を持っていることになるのだ。
しかも、この数値は2007年のものであり、97年からの推移においても増加傾向にあるため、現在においてはさらなる割合の増加が予想されることは間違いない。
ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケア vol.2 )
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近年糖尿病予備軍の方は増加傾向にあり、その割合は35%を超えるようです。
糖尿病の方にインプラント治療をするリスクは、麻酔が効きにくかったり、感染が生じやすく傷が治りにくいために、インプラントが失敗する可能性があることです。
けれども、軽度の糖尿病の方のインプラント治療は、当院では特に問題は生じていません。
ただ、GBR併用のインプラントや即時負荷インプラントは、リスクが高いと考えています。

2016年5月 5日

hori (14:40)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

歯周病のリスク因子

・IL-1の多型と喫煙習慣については、5年から14年のメンテナンス患者の経過を追跡した研究がある。
この研究からIL-1多型の陽性患者(陰性の2.7倍)、喫煙者(非喫煙者の2.9倍)で顕著に歯の喪失が見られ、さらにIL-1多型の陽性で喫煙者の場合はさらに歯の喪失の危険性が高かった(IL-1陰性非喫煙者の7.7倍)。
また、体重増加(BMI)については、体重増加と歯周病の発症および進行に相関関係があることが報告されつつある。
サルを用いた動物実験でもカロリー摂取を控えた実験群では、通常のサルに比べ、アタッチメントロスと出血が少ない傾向にあったという報告がある。
ヒトを対象にした研究でも、BMIが高い患者は歯周病も4倍の確率で重症化しやすいことが分かっている。
・リウマチのような慢性炎症性疾患では、CRPのレベルが高い傾向にあり、骨代謝に障害をきたしている。
結果としてリウマチ患者の51%、変形性関節炎の患者の26%に重度の歯周炎を認めるという報告もある。
・リスク因子のうち重要性が高いものとして、
〇歯周疾患の既往メンテナンスの不定期性、喫煙、糖尿病、IL-1レベルの高いもの
・重要性が不明確だが関与が疑われるものとして、
〇内臓脂肪、BMIの高いもの、食生活、栄養状態、慢性炎症性疾患、エピジェネティックス(後天的な遺伝形質の発現)
日本臨床歯周病学会学会誌 Vol.30 2012 )
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歯周病のリスク因子を列挙してみました。
リウマチのように原因がまだはっきりわかっていない病気との関連で歯周病になりやすい場合や、遺伝的な要素により歯周病になりやすい場合は確かにあることでしょう。
けれども、禁煙や、歯科医院でのメンテナンスを受診したり、BMIを下げたリスことは、各人の努力次第で歯周病のリスクを低減させることは可能かと思います。
できることから歯周病対策をしていただけたらと思います。
また、インプラント治療後にも糖尿病や喫煙はインプラント周囲炎のリスクとなりうるので、禁煙や血糖値が上がりにくい生活習慣等は引き続きしていただくこととなります。

2016年5月 1日

hori (14:24)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

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