抜歯即時インプラントの最近のブログ記事

歯の喪失リスクが高い人は7.1%。

・矢野らは歯科予防処置を受けた成人663名の10年の追跡調査で、269(40.6%)に歯の喪失が認められ、喪失本数は747歯であったと報告しているが、なかでも5歯以上の多数歯を喪失した人数は47名で全体の7.1%にもかかわらず、喪失歯の総数は369歯で全喪失歯の49.4%によび、喪失傾向の強い群の存在を提起している。
(参考文献)
矢野正敏, 他 : 歯科疾患予防管理を受けた成人における歯の喪失リスクの要因分析. 口腔衛生学会誌, 1998.
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学校歯科検診同様、大方歯に問題がない方が大半であるのに対して、少ない数の患者さんで問題ある歯を多数抱えているというのは、歯科臨床を行っている自分自身の感覚と一致しています。

2024年2月25日

hori (08:52)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

アンキローシス歯とDecoronation

・Decoronationとは、アンキローシスした歯根を骨内に残すことで歯槽骨の幅や高さを保存しながら歯根部を骨に置換させる方法で、アンキローシスした歯の抜歯に代わる治療方法として、1984年Malmgenらによって報告された。
生物学的には、アンキローシスした歯根片が新たな骨形成の基質になるなるというもので、さらに両隣在歯が存在する場合は、両隣在歯から成長してきた歯根膜線維複合体が歯根片上に形成され、それによって歯根片部分を歯冠側に牽引する力が発生することで垂直的な骨量も維持あるいは再構築できるということが臨床的に示されている。
(参考文献)
Malmgren B, Malmgen O, Andreasen JO.: Alveolar bone development after decoronation of ankylosed teeth. Endod Top. 14(1):35-40,2006.
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Decoronationの概念としては、アンキローシスした歯根にインプラントが接触しても構わないこと。
さらにアンキローシスした歯根片は1-10年で骨化するとのことです。
抜歯とGBR→インプラント埋入という流れで治療をするよりも、治療期間の短縮ができるので、有益であると考えています。

2022年4月25日

hori (08:10)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

大きなエマージェンスアングルを持つアバットメントは骨吸収を招く。

・Souzaらは、ビーグル犬を用いた動物実験で、コニカル嵌合(片側8度未満のテーパージョイント)のプラットフォームスイッチングを1ミリ骨縁下埋入した。
埋入時に、エマージェンスアングル(インプラントのプラットフォームからの立ち上がり角度)が45度と15度のヒーリングアバットメントを装着した。
4か月の治癒期間を待ち、マイクロCTと組織形態計測学的にインプラント周囲骨と周囲軟組織を評価した。
マイクロCTを用いた測定では、インプラント周囲骨吸収を反映する指標である。
インプラントのプラットフォームからインプラントとインプラント周囲骨の最歯冠側での接触までの距離は、統計学的有意に45度が高い値を示した。
組織学的な計測において生物学的幅径(骨縁上組織付着)では統計学的有意差はなかったものの、やはりインプラント周囲骨吸収を反映する指標においては統計学的有意に45度が高い値を示した。
これらの結果から、45度のような比較的大きなエマージェンスアングルを持つアバットメントは、インプラント周囲骨の吸収と、インプラント周囲骨が支持する周囲軟組織を根尖側に誘導することを示した(生物学的幅径の再構築)。
(参考文献)
Souza AB, Alshiri A, Kammerer PW, Araujo MG, Gallucci GO. Histological and micro-CT analysis of peri-implant soft and hard tissue healing on implants with different healing abutments configurations. Clin Oral Implants Res 2018 ; 29(10) : 1007-1015.
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45度のような比較的大きなエマージェンスアングルを持つアバットメントは、インプラント周囲骨の吸収と、インプラント周囲骨が支持する周囲軟組織を根尖側に誘導することが明らかになりました。

2022年3月15日

hori (08:24)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

オッセオデンシフィケーションを用いたインプラント埋入

骨治癒およびインプラントのオッセオインテグレーションに関するオッセオデンシフィケーションと切削による埋入窩形成法の比較:低骨密度ヒツジモデルにおけるex vivo組織形態学的/組織計測学的分析
(緒言)
オッセオデンシフィケーションという非切削ドリリングテクニックが適切な代替法として検討されている。
この方法は、次の2つの明確な利点をもたらすことが示されている。
1. 埋入窩形成時の骨切削片が骨壁に沿って水平的に圧縮され、骨密度を高めることで初期固定を高める。
2. インプラント-骨界面に自家骨骨片を保存することでオッセオインテグレーションを促進する。
本研究では、オッセオデンシフィケーションと従来法それぞれの方法で形成を行い埋入したインプラント体周囲の骨再生およびオッセオインテグレーションを評価することとした。
(結果)
3週間経過モデルにおける骨再生量は、オッセオデンシフィケーション群(7.8%±6.5%)と従来群(4.5%±6.5% )の間に統計学的な有意差を認めなかったが、6週間経過モデルでは、オッセオデンシフィケーション群(22.8%±6.5%)の方が従来群(14.9%±6.5%)と比べて有意に増加していた。(P=0.035)。
インプラントと骨とのインテグレーションを観察期間で評価したところ、BICは3週間経過モデル(22.5%±6.9%)と比較し、6週間経過モデル(52.6%±6.9%)の方が有意に高かった(P<0.005)。
また、埋入窩形成法の違いに関しては、3週間経過モデルでは、オッセオデンシフィケーション群(28.18%±11.9%)と従来群(22.14%±11.9%)と従来群(43.0%±11.9%)とで統計学的有意差を認めなかったが、6週間経過モデルではオッセオデンシフィケーション群(60.2%±11.9%)と従来群(43.4%±11.9%)とで有意差を認めた(P=0.032)。
さらにインプラント体のスレッド内の骨量(BAFO)は、埋入窩形成法にかかわらず、3週間経過モデル(44.2%±4.9%)と6週間経過モデル(46.4%±4.9%)とで有意差を認めなかった(P>0.05)。
また、BAFOを観察期間と埋入形成法を含めて評価すると、3週間経過モデルではオッセオデンシフィケーション群(48.3%±7.4%)と従来群(33.4%±7.4%)との間に有意差を認めた(P=0.01)。
同様の傾向は、6週間経過モデルでも確認され、オッセオデンシフィケーション群(51.23%±7.4%)が従来群(41.49%±7.4% )より統計学的に有意に高い値を示した(P=0.041)。
(考察)
オッセオデンシフィケーションでは、埋入時に骨に過度の負担をかけることなく、高い初期固定を獲得することができ、また、埋入窩の骨壁に切削した自家骨が残存することで骨形成を促進させることである。
本研究のオッセオインテグレーション群でBAFOが増加したのが、骨壁の切削片に起因することは明らかである。
この切削片が骨リモデリングを促進し、骨の治癒を促して、BAFOを大幅に増加させたと考えられる。
したがって、自家骨骨片とその細胞内外のたんぱく質を利用するオッセオインテグレーションは、従来法と比較し、自然な創傷治癒反応にプラスの影響を与えると考えられる。
(参考文献)
Mullings O, Tovar N, Abreu de Bortoli JP, Parra M, Torroni A, Coelho PG, Witek L. Osseodensication versus subtractive drilling techniques in bone healing and implant osseointegration : ex vivo histomororphometric analysis in a low-density bone ovine model. Int J Oral Maxillofac Implants 2021 ; 36(5) : 903-909.
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近年、インプラント治療を希望される方の中には、歯槽骨の状態があまり良好ではない方が多いので、今回のオッセオインテグレーションというテクニックが、インプラント治療の長期安定に寄与することに期待したいです。

2022年3月 5日

hori (08:30)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

オーバーサイズドリリングのインプラントの安定性

・オーバーサイズドリリングのインプラント残存および安定性に及ぼす影響:通常プロトコルとの比較によるランダム化比較試験
(目的)
本研究の目的は、オーバーサイズドリリングのインプラント安定性への影響とオッセオインテグレーションにおける骨反応への影響を検証することである。
(材料および方法)
本研究は上顎臼歯部に埋入された20本のインプラントに関する前向きパラレルランダム化比較試験である。
10本ずつ2群に分け、一方の群(MR群)ではメーカー住要通りの埋入窩形成を行ったのに対し、もう一方の群(オーバーサイズドリリング「OD群」)ではオーバーサイズの埋入窩形成(形成深度3-5ミリ)が行われた。
インプラントの安定性は術後3か月の間共振周波数分析(ISQ値)によってモニターされ、辺縁骨レベルは6か月後の平行法デンタルX線撮影によって評価された。
疼痛、腫脹、満足度、インプラント残存率など、患者報告アウトカムは試験期間中を通して記録された。
(結果)
MR群では、最初の4週間はISQ平均値の低下が認められたが、その後は徐々に上昇が認められた。
一方、OD群では、ベースラインから12週目までの全追跡期間において、ISQ値の急激な上昇が認められた。
ベースラインと6か月後における辺縁骨レベルのX線写真比較では、OD群では0.908±0.343ミリであったのに対して、MR群では1.3±0.23ミリであり、群間に統計学的有意差が認められた(P=0.00)。
(結論)
本研究の限りにおいて、オーバーサイズのインプラント埋入窩形成では、メーカーが推奨する埋入窩形成と比較し、インプラント安定性および術後の回復が早くなる可能性が示唆された。
しかし、これらの知見を確認するにはさらなる研究が必要である。
(参考文献)
Seleem A, Tawfik OK, El-Nahass H. Evaluation of oversized drillig on implant survival and stability versus traditional drillig technique: randomized trial. Int J Oral Maxillofac 20221 ; 36(4)771-778.
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実験に使用されたインプラントは直径4.0ミリ、長さは10ミリあるいは11.5ミリとのことでした。
また、埋入するインプラントの辺縁骨寄り30-43%の部位をオーバーサイズドリルを併用したということになります。
これは、すなわち、辺縁骨の皮質骨を中心に初期固定を得るよりも、インプラント先端に近い部位で初期固定を得た方が結果が良いということになるでしょう。

2022年3月 1日

hori (08:13)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

フラップの厚みと減張切開。

フラップが1ミリ以下の薄さの場合、フラップには15g以上のテンションがかかるとすべてのケースで創部の裂開が生じる。
またたとえ1ミリ以上の厚みがあっても15g以上のテンションでは、35%のケースで創部の裂開が起きている。
(参考文献)
Vargas G, Reger TB. An alternative to sutures. Plast Surg Nurs 2001 ; 21(2) : 83-85.
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抜歯即時インプラントを行うようになってから、減張切開をするケースがほぼなくなりました。
このデータを見る限り、フラップにテンションがかかるGBRは失敗するリスクが大きいものと推察されました。

2020年10月20日

hori (08:22)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

矯正的挺出と骨移植の有効性の比較。

・矯正的挺出と骨移植の有効性を比較するうえで重要なのは、それぞれの硬・軟組織増大量および変化量である。
それらについての明確な記載も少なかったが、矯正的挺出の前向き臨床研究であるAmatoらの文献によると、矯正的前処置によって4ミリの硬組織が獲得できた一方、骨移植例に言及したほかの論文では硬組織の変化量は、骨移植材料やメンブレンの有無など術式が多様多種であり、確定的な限界値や骨変化量言及することは難しいとえる。
Pieriらはレイマスのブロックを用いており、骨増大量は水平的には4.23±0.69ミリ、垂直的に1.71±0.75ミリと報告している。
矯正的挺出例では歯肉縁の冠状方向への平均移動量は3.9±1.5ミリ、歯肉の厚さ(頬舌径)の平均増大量が0.7±0.4ミリと示されており、頬舌的な増大量は骨移植と比べて少ない。
これは、矯正的挺出法では骨の頬舌的な増大量が歯根の断面積に依存するためだと推測されている。
頬舌的な骨幅をより増大させたい場合には骨移植の方が有用であるかもしれない。
矯正的挺出法の場合には、オーバーコレクションを行っておく必要があると思われる。
治療期間は、矯正的挺出では18-61か月である対して、骨移植では多くが12か月と矯正的挺出が時間を要する結果となっていた。
合併症とインプラント生存率に関して差はなかった。
(参考文献)
Peri F, Aldini NN, Marchetti C, Corinaldesi G, Esthetic outcome and tissue stability of maxillary anterior single-tooth implants following reconstruction with mandibular block grafts : 5-year prospective study. Int J Oral Maxillofac Implants 2013 ; 28(1) : 270-280.
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矯正的挺出にしても骨移植にしても治療期間が長くなる傾向にあるので、まずは抜歯即時インプラントで対処できないか当院では考えるようにしています。

2020年10月15日

hori (10:03)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

インプラント埋入は痛いのか?

インプラント手術後の痛みについて、Kamankatganらの報告によると、術後に患者の38.8%は痛みを感じなかったが、25.9%は重度の、23.5%は中程度の、11.8%は軽度の痛みを感じた。
一方、約半数の49.4%の患者は術後の局所的な顔面の腫脹を訴え、14.1%は顔面の著名な腫脹を訴えた。
9.4%は口腔内の腫脹を訴えたが、17.1%は何も訴えなかった、としている。
続いてインプラント埋入後の出血について、Goodacreらによれば、術後出血に関連する併発相は全体の24%にのぼると報告している。
(参考文献)
Kamankatgan S, Pimkhaokham A, Krisdapong S : Patient-based outcomes following surgical implant placements. Clin Oral Implants Res, 28(1) : 17-23,2017.
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インプラント治療を行うようになり、20年前後経過しました。
埋入手術の数時間後には、毎回受付に術後の状態を電話で確認させていますが、「痛みや腫れはほぼない」と聞きます。
日常的に歯周病の外科治療を行っているために、外科の基本となる切開・剥離・縫合についての自分自身の腕が落ちないことと、おおむね抜歯即時インプラントを行っているために、インプラントが閉鎖創になっていないことが、これらの研究報告よりも堀歯科医院の術後経過が良い結果となっている理由であると推察しています。

2020年9月25日

hori (09:09)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

唇側骨が1ミリ以下と薄い場合は約7.5ミリの垂直的骨吸収が生じる。

・Chappuisらの報告で唇側骨の厚みが1ミリ以上と厚い場合は垂直的骨吸収が少なく平均1.1ミリであったのに対して、唇側骨が1ミリ以下と薄い場合は約7.5ミリの吸収が起こることが示されおり、唇側骨の厚みが1ミリ以上あるかないかがカギとなり、束状骨を失った後の唇側骨の高さが減少することが影響していると示唆される。
(参考文献)
Chappuis V, Engel O, Reyes M, Shahim K, Nolte LP, Buser D. Ridge alterations post-extraction in the esthetic zone : 3D analysis with CBCT. J Dent Res 2013 ; 92(12Suppl) : 606-614.
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特に前歯部インプラントでは、唇側骨の厚みが1ミリ以上ないと審美的に成功とはいえない状態となります。
当院では可及的に抜歯とインプラント埋入を同時に行う抜歯即時インプラントを行っていますが、インプラントを成功させるためには、歯槽骨特に唇側骨を破壊しないデリケートな抜歯技術が必要となると考えています。

2020年8月15日

hori (08:32)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

歯根破折の診断確定に、2年!

吉野らは、患者が症状(主として咬合痛)を訴えてから歯根破折の確定診断がつくまでに、75%の症例で2年を要したと報告している。

つまり「疑い」の大半は2年以内に決着がつくということだ。

(参考文献)
吉野浩一:歯根破折の予兆を読む. 歯界展望, 127(6): 1049-1084. 2016.
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今回の報告で、歯根破折という診断が確定するまで、その多くは2年近くの期間を要することが分かりました。
その2年間で、歯槽骨はかなり破壊されていることも多いので、一般的にはインプラントの治療期間が長くなるといわれています。
しかしながら、抜歯即時インプラントでは、治療期間を短縮できる場合があるので、担当医に相談されるとよいと思います。

2019年9月10日

hori (08:42)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

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