上顎前歯部のインプラントのの最近のブログ記事

大学病院におけるインプラントの失敗と関連リスクファクター

女性は男性よりも有意に失敗が多かった。(OR=0.69)
40歳以上の患者は、40歳未満に比べて、脱落リスクが4-5倍高かった。
埋入位置では、後方部に比べて前方部の失敗が高かった(OR=1.35、P=0.071)。
上顎後方部と下顎後方部では有意に下顎の方が失敗率が低かった。
(参考文献)
Lazaro Abdulkarim A, Lazaro D, Salomo Coll O, Hernandez Alfaro F, Satorres M, Gargallo Albiol K. Failure of dental implants and associated risk factors in university setting. Int J Oral Maxilofac Implants 2022; 37(3) : 455-463.

2022年11月 5日

hori (08:33)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

オッセオインテグレーションの喪失原因

オッセオインテグレーションの喪失原因としては、炎症によるものと力によるものがある。
後者においては、過度の生体力学的荷重が付加されると応力集中が歯頚部の骨-インプラント境界面に生じ、インプラント頸部のオッセオインテグレーションの消失が引き起こされることになる。
過重負担を発症する原因としては、一般に以下のことが挙げられる。
1.骨質不良な部位に埋入したインプラント
2.インプラントの位置または数が、インプラントへの荷重をインプラント表面に理想的に伝達するように埋入されていない。
3.咬合力が強い患者で異常咬合習癖がある。
4.上部構造が正確にインプラント体に適合していない。
5.上部構造のフレームに撓みがある。
6.咬合のバランス(咬合接触が均一でない)。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2022vol.29 )
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インプラントの喪失原因も様々あるかと思います。
個人的には、最少のインプラント数で、患者さんの最大のQOLを獲得するために、どのような治療計画を立案するべきかが重要であると考えています。

2022年10月15日

hori (08:14)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

顎骨の解剖学的変化は24歳で終わるのか?

世界保健機構は、青年期を10-19歳までと定義している。
それは思春期の前半、つまり重要な解剖学的変化が始まる年代で、女子の場合は9-14年、男子の場合は10-16年であるとしている。
2018年のThe Lancet. Child &Adolescent Healthに載ったThe age of Adolescenceという論文は思春期が10-24歳くらいまで続くというものである。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2021 vol.28)
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この文献では、解剖的な変化が24歳くらいまで続くとのことです。
その一方で、インプラント関連の学会のケースレポートで、40代女性で解剖学的変化が認められたとする報告を目にしたことがあります。
この解剖学的変化は個人差が大きい部分なので、注意深く症例選択をしていきたいものです。

2021年12月 5日

hori (08:43)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

最小発音空隙に平均値というものは存在しない。

・S発音位を咬合高径の評価に利用するには、前歯が適切な位置に残存していることが前提となる。
また、Sivermanは「最小発音空隙は患者によってさまざま(0-10ミリ)で、平均値というものは存在しない」述べている。
さらに空隙の量を視診で評価することが難しいことも少なくない。
そのため、咬合高径の評価の基準としてやや実用性に欠ける。
(参考文献)
Goodacre DJ, Campagni WV, Aquilino SA. Tooth preparations for complete crowns : an art form based on scientific principles. J Prosthet Dent 2001 ; 85(4) :363-376.
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過蓋咬合だから発音が上手にできないとか、オープンバイトだから発音が上手にできないというケースに、私は遭遇したことがありません。
ということは、最小発音空隙に平均値が存在しないという事実とつながるように思います。

2021年3月25日

hori (08:02)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

歯槽骨基底部に幅がある方が二次的に硬・軟組織の高さを得やすい。

・インプラント間乳頭は、おもに審美的考慮から前歯部において重要であるが、ひとたび臼歯部に目を向けてみると多くの症例でインプラント間乳頭が再生・再建されていることに気が付く。
この原理を骨幅に注目してみると、明らかに歯槽骨基底部に幅がある方が二次的に硬・軟組織の高さを得やすいことが分かる。
元来、上顎前歯部は唇舌的な骨幅がないうえに、口輪筋などの圧力を受け、唇側面の吸収を起こしやすいことが分かっている。
したがって、前鼻棘から前歯部根尖部付近は口輪筋に呼応するようなくぼみが切歯窩として存在し、骨幅は減じている。
そこで上顎前歯部のインプラント間乳頭の再生・再建にあたっては、顔貌に影響を与えない程度に根尖相当部付近にも骨造成を行い、二次的な硬・軟組織の高さを得ることも一つの手法と考えられる。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2020 vol.27 )
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確かに、歯槽骨基底部に幅がある方が二次的に硬・軟組織の高さを得やすいように感じます。
上顎前歯部インプラントの乳頭を再生・再建を試みる際には、骨造成を行い、歯槽骨基底部の幅を増大させることを考えていきたいと思いました。

2020年7月 1日

hori (11:45)

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長顔女性への前歯インプラントは、将来的な審美障害に注意が必要である。

・Opdebeeckは1978年にショートフェイスシンドロームについて論じ、短顔の水平方向の成長(1.5ミリ)は長顔(0.3ミリ)の5倍、垂直方向では長顔21ミリ、短顔が9.5ミリで約2.5倍と報告している。
天然歯部位は近心へ成長・移動し、近心側への移動量は短顔の方が長顔より大きく、長顔では下顎前歯部で挺出および舌側移動の傾向が強い。
顕著なリスク要因を重ねると、上顎「短顔+女性+前歯インプラント→舌側に残る」、下顎では「長顔+女性+前歯インプラント→唇側に残る」という結果となる。
(参考文献)
Opdebeeck H, Bell WH. The short face syndrome. Am J Orthod 1978;73(5) : 499-511.
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問題となるのは、『短顔の水平方向の成長(1.5ミリ)は長顔(0.3ミリ)の5倍』よりも、『垂直方向では長顔21ミリ、短顔が9.5ミリで約2.5倍』の方です。
インプラントは歯槽骨に骨結合をしているので、三次元的な位置が変わりません。
一方、特に長顔の場合は、インプラント補綴が終了してから、歯槽骨の成長とともに、反対側の前歯の位置は大きく変化します。
21ミリも歯槽骨が成長されてしまうと、インプラント補綴と天然歯とでミスマッチな状態になります。
あるインプラントロジストは25歳以上なら、長顔女性でもインプラントを行うとしている一方で、40歳以上の長顔女性での前歯部インプラントで反対側天然歯との切縁位置にミスマッチが生じたケースがあるということも聞いております。
前歯部インプラントは将来的に審美障害が惹起される場合があることを知っておくべきでしょう。

2020年5月15日

hori (08:02)

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インプラントで必要な頬側骨骨幅。

・必要な頬側骨骨幅の再考:ビーグル犬による動物実験
(結果)
72本のインプラントが12匹のビーグル犬に埋入された。
36本は頬側骨が薄い部位(tbb:1.5ミリ未満)に埋入され、残り36本は頬側骨が厚い部位(TBB:1.5ミリ以上)に埋入された。
術中および治癒期間中に合併症などは認められず、すべてのインプラントは観察期間中に脱落することはなかった。
6匹のビーグル犬を埋入後8週で安楽死させ、生理学的骨吸収の影響を評価した。
tbbとTBBの比較では骨接触率で群間に有意差を認めなかったものの(P=0.977)、頬側内側骨喪失量(平均差3.65ミリ、P<0.001)および頬側外側骨喪失量(平均差3.96ミリ、P<0.001)ではtbbで有意に大きな骨吸収量を認めた。
一方で頬側内側骨喪失量(平均差0.55ミリ、P<0.001)および頬側外側骨喪失量(平均差0.95ミリ、P<0.001)ではTBBで有意に大きな骨吸収量を認めた。
残り6匹のビーグル犬ではその後、インプラント周囲炎を惹起させ、病的骨吸収の影響を評価した(インプラント36本)。
tbbとTBBの比較では頬側内側骨喪失量(平均差1.08ミリ、P<0.001)および頬側外側骨喪失量(平均差0.54ミリ、P<0.002)でTBBで有意に大きな骨吸収量を認めた。
頬側内側骨喪失量では群間に有意差を認めなかった(平均差0.32ミリ、P<0.10)。
(結論)
インプラント埋入後の生理学的および病的骨吸収を最小にするためにはインプラント埋入後に頬側に1.5ミリ以上の骨幅が必要であることが示された。
すなわち、1.5ミリ以上の頬側歯槽骨壁は術後の形態変化及びインプラント周囲炎による変化を補填するのに有用である。
しかしながら、この頬側骨の厚みはインプラントの脱落には影響を及ぼさなかった。
(参考文献)
Monje A, Chappuis V, Monje F, Munoz F, Wang HI, Urban IA, Buser D. The critical peri-implant buccal bone wall thickness revisiter : An experimental study in the beagle dog. Int J Oral Maxillofac Implants 2019 ; 34(6) : 1328-1336.
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インプラントの頬側骨幅は1.5ミリは必要ということになります。
これは特に前歯部では守らなくてはならない原則となります。

2020年4月25日

hori (08:11)

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BTAテクニック

・BTAテクニックは、ラミネートべニア、クラウンの補綴治療を行う際に、歯肉切除を行い、補綴装置のマージン形態をオーバーハングの形態とすることで、生物学的に歯肉組織の健康を維持し、歯肉の後戻りや歯肉退縮を防止できる治療法である。
・BTAテクニックの適応症
歯肉縁、歯周炎がなく、歯肉切除直後に、歯肉縁が骨縁から1.5ミリ以上離れ、付着歯肉幅が2.0ミリ以上残ることが前提。
1. ラミネートべニアやクラウンによる補綴に際し、歯肉ラインを根尖方向に移動したい症例。
2. ラミネートベニヤやクラウンで、舌側転位歯を、唇側に出したい症例。
3. 歯根の凹部や根分岐部のプラークコントロールをしやすくしたい症例。
4. 縁下カリエスだが、挺出や歯冠長延長術ができない症例。
(BTAテクニックの臨床 )
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今回、このBTAテクニックというテクニックを初めて知りました。
このテクニックを検証する追加の研究報告に、まずは期待したいと考えています。

2019年12月20日

hori (08:43)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

人はなくなったときに、義歯を入れた方がいいのか?

・人はなくなったときに、義歯を入れた方がいいのか?、入れない方が良いのか?
人は息を引き取った瞬間から筋肉の弛緩が起こるために、重力の影響を受けて皮膚が下垂します。
ご遺体はほとんどの場合、仰殴位に安置されているために、顔の皮膚が背面に向かって引っ張られるように下がっていきます。
そのため、亡くなった方に義歯を入れたままにしていると、義歯床の厚み分だけ口元が盛り上がって見え、見た目の印象が変わっていきます。
特に高齢で栄養状態が悪く、痩せている方だと死後にこのような顔貌の変化が起こりやすく、さらに火葬まで日延べしてしまうと、義歯を入れることでかえって日に日にその面影が失われていくことがあります。
(デンタルハイジーン 2017年11月号 )
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人はなくなったときに、義歯を入れた方がいいのか?、入れない方が良いのか?
正直考えたこともない質問でしたが、義歯の厚み分口元が盛り上がってしまうために、「入れない方が良い」というのがその答えになるようです。
そのような意味で、特に前歯部においては、義歯よりインプラントの方が死後の顔貌の変化が少ないといえるでしょう。

2017年12月 1日

hori (08:53)

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インプラントの生物学的幅径は一定ではない。

・インプラントの生物学的幅径は歯とは異なり、一定ではない。
上顎前歯部:4.5±1.4ミリ
上顎小臼歯部:3.7±1.3ミリ
下顎臼歯部:3.0±1.1ミリ
(参考文献)
Fuchigami K, Munakata M, Kitazume T, Tachikawa N, Kasugai S,Kuroda S: A diversity of peri-implantmucosal thickness by site. Clin Oral Implants Res, 28(2): 214-218,2017.
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天然歯の生物学的幅径は、歯牙の種類に関わらず3ミリ前後ですが、インプラントの生物学的幅径は前歯、小臼歯、大臼歯でそれぞれ異なることが明らかになりました。
元々の歯肉の厚みが薄い場合は、どの部位でもインプラント埋入深度は深めになりますが、前歯部では大臼歯よりも埋入深度をさらに深めに設定する必要があるということになります。
上顎前歯部におけるインプラント治療では歯槽骨幅が薄いため、唇側に十分な歯槽骨を残すことができず、その結果、歯肉が退縮する危険性がありました。
そのため、FGGやCTGなどによって歯肉の厚みを増大させる処置が必要となっていました。
ところが、上顎インプラントの生物学的幅径が大臼歯よりも多く必要になるということですから、付加的な処置を考えるよりも、まずは生物学的幅径を配慮しての埋入深度を決定するべきといえるでしょう。

2017年8月30日

hori (11:28)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

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