長顔女性への前歯インプラントは、将来的な審美障害に注意が必要である。

・Opdebeeckは1978年にショートフェイスシンドロームについて論じ、短顔の水平方向の成長(1.5ミリ)は長顔(0.3ミリ)の5倍、垂直方向では長顔21ミリ、短顔が9.5ミリで約2.5倍と報告している。
天然歯部位は近心へ成長・移動し、近心側への移動量は短顔の方が長顔より大きく、長顔では下顎前歯部で挺出および舌側移動の傾向が強い。
顕著なリスク要因を重ねると、上顎「短顔+女性+前歯インプラント→舌側に残る」、下顎では「長顔+女性+前歯インプラント→唇側に残る」という結果となる。
(参考文献)
Opdebeeck H, Bell WH. The short face syndrome. Am J Orthod 1978;73(5) : 499-511.
*****
問題となるのは、『短顔の水平方向の成長(1.5ミリ)は長顔(0.3ミリ)の5倍』よりも、『垂直方向では長顔21ミリ、短顔が9.5ミリで約2.5倍』の方です。
インプラントは歯槽骨に骨結合をしているので、三次元的な位置が変わりません。
一方、特に長顔の場合は、インプラント補綴が終了してから、歯槽骨の成長とともに、反対側の前歯の位置は大きく変化します。
21ミリも歯槽骨が成長されてしまうと、インプラント補綴と天然歯とでミスマッチな状態になります。
あるインプラントロジストは25歳以上なら、長顔女性でもインプラントを行うとしている一方で、40歳以上の長顔女性での前歯部インプラントで反対側天然歯との切縁位置にミスマッチが生じたケースがあるということも聞いております。
前歯部インプラントは将来的に審美障害が惹起される場合があることを知っておくべきでしょう。

2020年5月15日

hori (08:02)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

« 未処置根管により根尖病巣は惹起されやすいのか。 | ホーム | 補綴装置として義歯を選択すると、残存歯喪失のリスクが3.65倍高い。 »

このページの先頭へ