未処置根管により根尖病巣は惹起されやすいのか。

・CBCTを用いて、臼歯部の根管治療における未処置根管の影響を調べた研究
未処置根管および根尖病変へと診断するための診断基準は、
未処置根管では、
1.セメントエナメルジャンクションから根尖までの根管
2.歯根内で主根管から分岐した根管
根尖病変では、
1.歯槽硬線が破壊されている。
2.X線的根尖に関連する低密度領域が歯根膜腔の少なくても2倍。
歯種別の根尖病変出現率および未処置根管出現率を示す。
      未処置根管出現率     根尖病変出現率
上顎小臼歯    9%           52%
上顎大臼歯    40%           64%
下顎小臼歯    11%           45%
下顎大臼歯    23%            58%
根管病変は全体で59.5%にみられた。
未処置根管での根尖病変出現率は82.8%で、有意であった(P<0.05)。
根管未処置歯では4.38倍、根尖病変が出現しやすい。
上顎大臼歯MB2は65%が未処置であった。
下顎第一大臼歯遠心根は62%、および下顎第二大臼歯遠心根では78%で未処置根管がみられた。
(参考文献)
Karabucak B, et al. Prevalence of apical periodontitis in endodontically treated premolars and molars with untreated canal : a cone-beam coputed tomography study. J Endod. 2016; 42 (4) 538-541.
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上顎下顎にかかわらず、小臼歯は大臼歯よりも未処置根管があると、根尖病巣を惹起させやすいということが分かりました。
また興味深いのは、未処置根管出現率が部位別で最も高い上顎大臼歯では、根尖病変出現率がた部位と比較して、それほど高くないことです。
これは、上顎大臼歯でMB2の見落としの確率は高いものの、根尖病変出現率に直接的な影響は想像していたほど多くはないということになります。
一方、小臼歯で未処置根管があると大臼歯よりも根尖病巣の出現率が高いのは、根管の大きさがMB2よりも大きいことが多いことと関連があるものと推測できます。

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