歯周病の悩みの最近のブログ記事

「歯周病」という言葉 20代の17%「知らない」

成人の約5割が、「この先、永久歯を抜く経験をする可能性がある」と感じている。サンスターグループが「いい歯の日(11月8日)」に合わせて実施した、歯周病に対する意識や口腔ケアに関する調査によるもの。
全国の20歳以上の男女1100人(20,30,40,50代、60歳以上の男女各110人ずつ)を対象に、7月7日にインターネットで実施した。
(アポロニア21 2023年1月号 )

2023年2月 5日

hori (08:36)

カテゴリ:歯周病の悩み

歯周病はなぜ進行しても痛くない?

結論をいえば、ジンジバリス筋などが歯周病原菌が産生する酪酸が、神経突起を委縮させるためです。
歯周病原因菌は、発育が遅く病原性も弱いため、痛みの刺激によって生体の防御機構が作動すると排除されてしまいます。
そのため、酪酸によって痛みを遮断し防御機構から回避していると考えられます。
ある意味、歯周病原菌の生き残り戦略といえますが、酪酸が神経突起を委縮させているということ自体、神経に以外作用を及ぼすものだといえます。
腸管で善玉として働いている酪酸が、歯周組織だと悪玉になってしまうのでしょうか?
腸管と口腔との最大の違いは、腸管はムチンの保護層が700μmと圧倒的に厚いという点です。
口腔のムチンの保護層は0.3-1μm程度です。
口腔粘膜は重層扁平上皮でできており、表皮が一部破壊されても、その奥にも次の表皮細胞があるため重篤な状態にはなりません。
しかし、腸管では養分を吸収するため上皮細胞が1層だけ並んでいる単層円柱上皮でできています。
そのため、上皮細胞を保護する分厚いムチン層が必須なのです。
ムチン層に守られている腸管では、糞便中の酪酸はそのままでは粘膜に接することはなく、腸管粘膜細胞を活性化させる善玉の働きだけを続けることができます。
しかし、ムチンの分泌量は、精神的なストレスなどの外的要因で大きく左右されます。
何らかの理由でムチンの保護層が薄くなると、酪酸が粘膜と接してしまい、組織破壊が起こるのです。
ストレスでポリープができたという病態のメカニズムは、このように説明できます。
一方、ムチンの保護層の薄い口腔では、酪酸による組織破壊がダイレクトに進行し、歯周病を引き起こすことになります。
(アポロニア21 2022年2月号 )
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同じ酪酸であっても、存在する場所によってマイナスの影響を与えることがあることがわかりました。

2022年3月10日

hori (08:36)

カテゴリ:歯周病の悩み

歯周病でサルコペニアの病態悪化。

骨格筋は体重の約40%を占める最大の臓器で、全身の糖代謝調節においても基幹的な役割を担っている。
歯周病が糖尿病の病態を悪化させる機序の一つにインスリン抵抗性の惹起が挙げられるが、インスリンの依存性に糖の取り込み、代謝を行う組織である骨格筋との関連は解明されていなかった。
骨格筋組織の脂肪化に着目し、歯周病原細菌の血清抗体価との関連を調査した。
その結果、メタボリックシンドローム症候群の患者において、骨格筋脂肪化マーカーとジンジバリス菌の血清抗体価が有意に相関していることが判明。
また、ジンジバリス菌を投与したマウスでは、腸内細菌叢の変化を伴い骨格筋の炎症関連遺伝子群が上昇、脂肪化が亢進しインスリンシグナルの低下とともに糖の取り込みが阻害されていることを見出した。
研究グループによると、この成果は、ジンジバリス菌の感染が骨格筋の代謝異常を引き起こし、メタボリックシンドロームのリスクファクターとなっており、サルコペニアへとつながる可能性を示しているとのこと。
サルコペニアは筋肉量の低下をも含む概念だが、動作の俊敏性が失われ転倒しやすくなるなど身体的問題に直結する。
これからの高齢化社会において歯周病予防の重要度がさらに高まるだろう。
(Dentalism January 2021No.43 )
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歯周病がサルコペニアの病態悪化に寄与していること、ジンジバリス菌の感染が骨格筋の代謝異常を惹起することがが明らかになりました。

2021年1月20日

hori (08:29)

カテゴリ:歯周病の悩み

飲酒と歯周病リスク

お酒の強い人(活性型)は多めのアルコールを毎日飲んでも飲まなくても、歯周病発症への影響に差はありませんでした。
つまり、お酒の強い人にとって飲酒は歯周病の危険因子ではないということです。
一方、元々それほどお酒に強くない不活性型の人は、33mL以上のアルコールを毎日飲むとオッズ比4.28も歯周病になりやすくなります。
(参考文献)
天野敦雄. Dr. 天野とモヤモヤを解消!侵襲性歯周炎アップデート講座. 歯科衛生士 2017; 41(1)20-35.
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お酒を飲める人と飲めない人、そのそれぞれが毎日お酒を飲んだ場合と飲まない場合で、歯周病罹患リスクが変わることが明らかになりました。
お酒を飲めない人が、33mL以上のお酒を毎日飲むとオッズ比が4.28倍へと上昇するというデータにも驚かされました。
飲酒が原因で歯周病が進行しているひとは、ストレスに弱い可能性があることが推測されました。

2020年9月 5日

hori (08:35)

カテゴリ:歯周病の悩み

P.gingivalisがもっとも病原性の高い歯周病菌なのか。

800種ともいわれる口腔細菌でなぜP.gingivalisがもっとも病原性の高い歯周病菌なのか。
それは強力な病原因子をたくさん持っているからです。
病原因子は細菌の武器そのもの。
P.gingivalisほど強力な武器をもっている口腔細菌は他にはいません。
P.gingivalisの病原因子の中で、特に強力なものは線毛とジンジパインです。
線毛はバイオフィルムを形成したり、歯周組織に侵入したりするために必要な付着因子です。
そしてジンジパインは歯周組織やバイオフィルムのタンパク質を分解する酵素です。
またジンジパインは付着因子としてもはたらきます。
(歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト )
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P.gingivalisがもつジンジパインというタンパク質分解酵素は、タンパク質をペプチドに変えます。
ペプチドはP.gingivalisの栄養となります。
また、ジンジパインの遺伝子をすべてノックアウトしたP.gingivalis変異株を、タンパク質を唯一の栄養源とする培地で培養しても、この株はほとんど増殖しませんでした。
このことにより、P.gingivalisはジンジパインがなければ栄養補給することができず、生きていけないことが明らかになりました。
一方、固いお肉とパパイヤを和えると驚くほど肉が柔らかくなるのも、パパイヤがもつパパインというタンパク質分解酵素が肉の筋を切ってくれるからです。
これと関連して、ジンジパインはパパインと同じ種類のシステインプロテアーゼというタンパク質分解酵素なので、gingivalisがもつpapainということで、ジンジパインと名づけられました。

2020年8月20日

hori (08:51)

カテゴリ:歯周病の悩み

歯周病治療で肝硬変の症状改善か?

先行研究では、肝硬変患者では腸内及び唾液中の微生物叢が変化しており、これが歯周炎を発症させ、肝硬変関連の合併症のリスクを高める恐れがあることが確認された。
さらに、いくつかの研究で、肝硬変患者では全身の炎症レベル上昇がみられ、これが肝性脳症に伴うものであることも示されている。
研究者らは、肝硬変および軽度?中等度の歯周炎を有する志願者の2群を調査した。
1群には歯周疾患治療を実施し、もう1群には治療を行わなった。
全志願者に対して、治療前後には認知機能を評価する標準検査を実施した。
歯周疾患治療後、参加者、特に肝性脳症を有する参加者では、唾液中の内毒素産生菌数が減少しただけでなく、炎症軽減につながると思われる有益な腸内細菌数の増加も認められた。
未治療群では、同時期に血液中の内毒素レベルの増加がみられた。
研究チームは、治療群にみられた改善は、口腔内炎症を軽減させて全身の炎症を抑えることに寄与し、あるいは飲み込まれる細菌数の減少につながり、結果として、腸内微生物叢に影響を与える可能性があると示唆した。
研究者らによると、治療群では認知機能も改善したことから、すでに疾患に対する標準治療を受けている患者では、体内の炎症レベル低下によって肝性脳症の症状のいくつかは最小限に抑えられる可能性が示された。
「肝硬変の蔓延は、現行の治療法によっても持続する炎症および微生物の変化によって悪化している。
このため、腸以外の起源を探る必要が生じ、その毛か、口腔内が重要ながら無視されてきた部位であることを見出した」と述べている。
(Dental Tribune Japan Edition 12/2018 )
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歯周病治療によって、腸内の細菌フローラが変化し、肝硬変関連の合併症における、状態の程度を下げる可能性があるそうです。

2019年1月20日

hori (10:07)

カテゴリ:歯周病の悩み

リグロスの効果はばらつきが大きい。

・リグロスを使用した再生治療では、エックス線写真上での不透過性の亢進がそれほど認められないものもあった。
標準偏差が大きくばらつきが大きいのも、他の文献とも一致している。
(参考文献)
Kitamura M, Akamatsu M, Machigashira M, Hara Y, Sakagami R, Hirohuji T, Hamachi T, Maeda K, Ykota M, Kido J, Nagata T, Kurihara H, Takahashi S, Sibutani T, Fukuda M, Noguchi T, Ymazaki K, Yoshie H, Ioroi K, Arai T, Nakagawa T, Ito K, Oda S, Izumi Y, Ogata Y, Yamada S, Furuuchi T, Sasano T, Imai E, Omae M, Yamada S, Watanuki M, Murakami S, FGF-2 stimulates periodontal regeneration : results of a multi-center randomized clinical traial. J Dent Res 2011 ; 90(1) : 35-40.
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リグロスによる再生療法は、標準偏差が大きいようです。
その効果が認められるものとそうではないものとで何が異なるかが明らかになることを期待します。

2018年12月25日

hori (08:37)

カテゴリ:歯周病の悩み

非外科的治療は単根歯でも、歯周外科治療の2倍の時間がかかる。

・非外科治療の有効性が報告されていますが、単根歯(切歯、犬歯、小臼歯)を対象にしており、複根歯や根分岐部病変に罹患した患歯を含んでいません。
単根歯に比較して、大臼歯や解剖学的リスクのある患歯の根面を確実にデブライドメントすることは現実的ではありません。
単根歯の非外科的治療であっても、術者の高い技術力が要求され、時間も歯周外科治療を行う場合に比べて2倍かかります。
根面のデブライドメントが難しい部位は、根面溝、根分岐部および適合不良な修復物の直下です。
単根歯を被験対象とした非外科的治療に反応しない、すなわち効果の上がらない部位(ハイリスク部位)のアタッチメント・ロスの進行には7つのパターンがあり、Non-Linear説を支持しています。
また「ハイリスク歯の進行パターン」が複数あることも示唆しています。
(参考文献)
・Lindhe J, et al. Healing following surgical/non-surgical treatment of periodontal disease. 1982 ; A clinical study. J Clin Periodontol. 9 : 115-128.
・Badersten A, et al Effectof nonsurgical periodontal therapy. ?.Severely advanced periodontitis. 1984 ; J Clin Periodontol. 11 : 63-76.
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歯周病治療は通常、保険診療のガイドラインに則って行うものですから、根面のデブライドメントが難しい部位に対しては、最初から歯周外科治療を視野に入れるべきだと考えています。
また単根歯といえど、非外科的治療では歯周外科治療の2倍の時間がかかるわけですから、保険診療であればこそ歯周外科治療を行うべきと考えられます。
私は若いころ一日にフラップ手術を4件こなすような日を過ごしました。
フラップ手術は歯周外科治療の基本である切開・剥離・縫合の上達に役立つので、インプラント治療の腕を向上させたい歯科医師は、まずは歯周外科治療が上手くならないといけないでしょう。

2018年6月20日

hori (11:19)

カテゴリ:歯周病の悩み

日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じ。

・非常に毒性の強い遺伝子型(クローン)のA.a.菌は、限局性侵襲性歯周炎の8歳男児から検出され、A.a.菌JP2クローンと名付けられた。
その研究で、JP2クローンの感染者は侵襲性歯周炎を発症している率が明らかに高いこと、また経年的にアタッチメントロスが増加することが報告され、JP2クローンこそが侵襲性歯周炎発症の原因菌と考えられました。
・実はJP2クローンはすべての地域には拡散していませんでした。
白人やアジア人が住む地域地域での検出は限られており、特にアジアにはアフリカを中心に行われた奴隷貿易によって世界に拡散したと推測されており、これがアジアに伝播しなかった理由と思われます。
つまり、アジアでの侵襲性歯周炎はJP2クローンによるものではないということです。
実際、日本におけるJP2クローンの検出報告はこれまでありません。
ちなみに、筆者もA.a.菌が検出された日本人800人のプラークを調べましたが、JP2クローンはまったく見つかりませんでした。
日本人における侵襲性歯周炎の細菌学的な特徴が、諸外国と違うことは明らかです。
・これまでに、国内の3つの研究機関(東京医科歯科大学、九州大学、東京歯科大学)から侵襲性歯周炎患者のプラーク細菌の報告がなされました。
いずれの報告でも侵襲性歯周炎患者からのA.a菌検出率は予想されたものよりもずいぶん低いものでした。
これでは、日本人の侵襲性歯周炎にA.a菌が関与しているとは言えません。
一方、代表的な歯周病菌でレッドコンプレックスと呼ばれるP.g.菌、T.forsythia菌、T.denticola菌の検出率は慢性歯周炎患者からの検出率に匹敵するものでした。
東京医科歯科大学によるデータでは、侵襲性歯周炎患者からのA.a菌の検出率は20%以下であるのに比べて、P.g.菌、T.f.菌、T.d.菌の検出率は広汎性慢性歯周炎と同等でした。
また、A.a.菌の量の増加と侵襲性歯周炎の進行状態にはまったく相関はありませんでした。
さらに、九州大学の報告では、P.g.菌の2型線毛をもつクローンが侵襲性歯周炎患者に多く検出されたそうです(このP.g.菌クローンは慢性歯周炎の悪化に関する菌です)。
ということは、日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じということです。
(歯科衛生士 2017年1月号 )
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JP2クローンこそが侵襲性歯周炎発症の原因菌と考えられること、日本におけるJP2クローンの検出報告はこれまでないこと、日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じということなどが明らかになりました。
日本人の侵襲性歯周炎に対しては、慢性歯周炎と原因が同じであるということは、慢性歯周炎への対処法と大きくは変わらなく、侵襲性歯周炎の効果的な治療も今のところないということになります。

2017年9月20日

hori (09:17)

カテゴリ:歯周病の悩み

肺炎球菌に対するマクロライドの耐性菌はドイツ9.5%であるのに対して、日本は77.9%。

・昨年4月1日、政府は薬剤耐性菌対策として「2020年までに13年比で抗菌薬の使用総量を3割減らす」という行動計画を発表した。
驚いたことに、こういった対策は日本では初めてらしい。
周知されていない事実だが、日本は世界的に見て「耐性菌大国」といわれている。
データは少し古いが、2000年前後で、肺炎球菌に対するマクロライドの耐性菌はドイツ9.5%、ブラジル15.3%、米国29.4%であるのに対して、日本は77.9%だった。
ヨーロッパではドイツやオランダといった北の国々の耐性率は低い(イタリアやスペインは高い)。
オランダなどはMRSAを発見したら隔離されてしまうが、日本にいる黄色ブドウ球菌の半分以上がMRSAである。
そういった状況でオランダの耐性率が低いというのは理解できるが、ブラジルのような新興国よりも日本は劣るのである。
(歯界展望 2017年8月号 )
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日本人は、医者から薬をもらいたがる国民という印象は、個人的には以前からありました。
今回の報告で、『肺炎球菌に対するマクロライドの耐性菌はドイツ9.5%、ブラジル15.3%、米国29.4%であるのに対して、日本は77.9%』というデータを拝見しました。
耐性菌の割合が高いということは、『少しの安心のために、必要ではない投薬が行われ、本当にその薬が必要な状況では、その薬は効かない』ケースが日本では多いということになります。
驚愕の数字です。
歯周病やインプラント周囲炎を薬で治そうとすることに対しては、個人的には否定的です。

2017年8月20日

hori (09:24)

カテゴリ:歯周病の悩み

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