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レスベラトールが酸蝕症予防。
レスベラトールは、ブドウなどに含まれるポリフェノールの一種で抗酸化や抗炎症、抗がん、高糖化などの有益な効果が知られており、う蝕研究においては、レスベラトールによる細菌やバイオフィルムへの抗菌効果が報告されている。
そこで、本稿では、レスベラトールの酸蝕症に対する効果を検証した論文を紹介する。
研究方法としてウシエナメル質標本を作製し、ヒト唾液中に浸漬させ獲得ペリクルを形成させた。
続いて標本をPBS(ネガティヴコントロール)、Elmex(ポジティヴコントロール)、4つの異なる濃度のレスベラトール(1, 10, 100, 400μg/mL)の6つのグループに分けて処理後、再度唾液中に浸漬させた。
最後に標本を1%クエン酸に浸漬させた。
これらの実験手順は3回繰り返され、各標本の表面微小硬度実験開始と終了後で測定し、表面微小硬度変化率(%SML)で評価した。
その結果、ネガティヴコントロールと比較して、レスベラトール(1, 10, 100μg/mL)で処理したものは、エナメル質表面の微小硬度の低下を防ぎ、エナメル質を有意に保護した。
これらのことから、レスベラトールは酸蝕症を予防する有望な化合物であり、酸蝕症予防のための歯科用製品の新たな方向性を示す可能性が示唆された。
(参考文献)
Reis FN, Pela VT, Camera VJF, Venture TMO, Rodrigues CMVBF, Buzalaf MAR: A new role for resveratrol : Protection of enameru against erosion. Journal of Dentistry, 141 : 104810,2024.
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レスベラトールは酸蝕症を予防する有望な化合物であることが明らかになりました。
歯数少ない高齢者外食頻度にも影響
「うま味」の感受性に影響与える要素
心房細動の再発を歯周炎治療で抑制
心房細動に対するカテーテル治療を受ける患者のうち、重度の歯周炎がある人は、歯周炎治療によって心房細動の再発を抑制できる可能性がある。
広島大学の研究チームは、心房細動に対するカテーテルアブレージョン治療を受ける患者288人を対象に、歯周炎の有無とその治療が術後の心房細動再発に及ぼす影響を検討した。
さらに、歯周炎の定量化指標となる歯周炎症面積(PISA)を前例で計測した。
その結果、歯周炎治療を受けた患者の心房細動再発率は16.5%だったのに対して、治療を受けなかった患者は28.3%だった。
PISA高値群では、歯周炎治療を受けた患者の再発率は20%、受けなかった患者は18.4%だった。
(参考文献 Journal of the American Heart Association 2024年4月10日 )
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心房細動に対するカテーテルアブレージョン治療を受ける場合には、その前に歯周治療を受ける方がよいということが明らかになりました。
ピロリ除菌の失敗にう蝕が関与
胃炎、胃潰瘍、胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリに対する除菌療法の成否が、う蝕の有無と関係があることが分かった。
朝日大学歯学部口腔感染医療学講座の岩井講師らが、ピロリ除菌と歯科検診を受けた226人(平均年齢52.7歳)について、ピロリ菌除去と歯科所見の関連を調べた。
226人のうちピロリ除菌に失敗したのは、38人(17%)で除菌失敗はう蝕の有無と有意に関連していた。(虫歯なしと比較した際のオッズ比2.672,95%信頼空間1.093-6.531)。
う蝕の本数が多いほどピロリ除菌の失敗も多く、特に未処置のう蝕がピロリ除菌の失敗に関連するということが明らかになった。
(参考文献 Scientific Repors 2024年2月19日 )
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ピロリ除菌の失敗にう蝕が関与することが明らかになりました。
1日に5回の食事と食間に22個のキャラメルを1年間続けても、20%にう蝕ができていない。
被検者を砂糖の摂取量に応じて5群に分けてその経過を見た際に、糖質摂取量が最大に多いグループ(1日に5回の食事と食間に22個のキャラメルを1年間)ですら、20%にう蝕ができていない。
(参考文献)
Krasse,B: the Vipeholm Dental Caries Study: recollections and reflections 50 years later. J Dent Res. 80(9) : 1785-1788,2001.
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歯周病のなりやすさは、いわゆるスリランカ・スタディで明らかにされています。
日常的な口腔清掃の習慣がなく、歯科疾患に対する予防・治療などをいっさい受けたことがない、14-46歳のプランテーションで労働する集団を対象に、16年にわたる歯周疾患の変化を追った研究です。
10%は急速に歯周疾患が進行し、80%は慢性的にそれが進行したものの、8%は全く進行を認めなかったという結果が得られています。
驚くべきは、全く歯を磨かなかったにもかかわらず、8%は歯周疾患の進行が見られなかったということです。
一方今回の研究報告のテーマは、『糖質摂取量とう蝕のなりやすさ』です。
それによると、『糖質摂取量が最大に多いグループ(1日に5回の食事と食間に22個のキャラメルを1年間)ですら、20%にう蝕ができていない』という事実が得られました。
こうして考えてみると、『一見問題のある食習慣を続けていても、ヒトは一様に病気になるわけではない』、言い換えると『体質が結果に大きく影響する』ということを思い知らされます。
歯牙喪失の三大要因は、う蝕、歯周疾患、歯根破折といわれていますが、当院にインプラント相談で来られる方の主な歯牙喪失原因の多くは、歯周疾患と歯根破折の複合タイプと考えています。
そのような保存不可能な歯牙を抜歯して、インプラント治療を行った場合、歯牙が歯周疾患を患い、歯根破折を惹起したというその人の体質はそのまま受け継がれているわけですから、最も適切なインプラント治療を行うだけではなく、定期的なメンテナンスを継続しなければインプラントは長持ちすることはないだろうと考えられます。
根尖突出歯は漏洩事故が起きやすい。
根尖孔からNaOClが漏洩した事故を経験した患者(漏洩群)と事故がなかった患者(コントロール群)を対象として、漏洩事故の解剖学的な原因を調べた研究。
無害なX線不透過性の溶液を用いて根管洗浄をし、CBCT撮影を行って分布を調べた。
コントロール群では皮質骨の開窓がなく、根尖単が骨内または病変内にあった。
漏洩群では根尖部の皮質骨が開窓し、根尖が突出していた。
(参考文献)
Mapping the periapex anatomical pattern of teeth involved in sodium hypochlorite accidents: a cross- sectional quasi- experiment study. Souza EM, et al. Int Endod J. 2021; 54 (8): 1212-1220.
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根尖突出、いわゆるフェネストレーション歯では、漏洩事故が起きやすい、という考えてみると当り前ではありますが、そのような視点は個人的には欠落していました。
根尖突出は、上顎中切歯、犬歯、第一小臼歯、第一大臼歯で多いということを考えると、この歯種における根管洗浄は注意が必要であるといえることでしょう。