インプラントと全身の健康の最近のブログ記事

1日に5回の食事と食間に22個のキャラメルを1年間続けても、20%にう蝕ができていない。

被検者を砂糖の摂取量に応じて5群に分けてその経過を見た際に、糖質摂取量が最大に多いグループ(1日に5回の食事と食間に22個のキャラメルを1年間)ですら、20%にう蝕ができていない。

(参考文献)

Krasse,B: the Vipeholm Dental Caries Study: recollections and reflections 50 years later. J Dent Res. 80(9) : 1785-1788,2001.

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歯周病のなりやすさは、いわゆるスリランカ・スタディで明らかにされています。

日常的な口腔清掃の習慣がなく、歯科疾患に対する予防・治療などをいっさい受けたことがない、14-46歳のプランテーションで労働する集団を対象に、16年にわたる歯周疾患の変化を追った研究です。

10%は急速に歯周疾患が進行し、80%は慢性的にそれが進行したものの、8%は全く進行を認めなかったという結果が得られています。

驚くべきは、全く歯を磨かなかったにもかかわらず、8%は歯周疾患の進行が見られなかったということです。

一方今回の研究報告のテーマは、『糖質摂取量とう蝕のなりやすさ』です。

それによると、『糖質摂取量が最大に多いグループ(1日に5回の食事と食間に22個のキャラメルを1年間)ですら、20%にう蝕ができていない』という事実が得られました。

こうして考えてみると、『一見問題のある食習慣を続けていても、ヒトは一様に病気になるわけではない』、言い換えると『体質が結果に大きく影響する』ということを思い知らされます。

歯牙喪失の三大要因は、う蝕、歯周疾患、歯根破折といわれていますが、当院にインプラント相談で来られる方の主な歯牙喪失原因の多くは、歯周疾患と歯根破折の複合タイプと考えています。

そのような保存不可能な歯牙を抜歯して、インプラント治療を行った場合、歯牙が歯周疾患を患い、歯根破折を惹起したというその人の体質はそのまま受け継がれているわけですから、最も適切なインプラント治療を行うだけではなく、定期的なメンテナンスを継続しなければインプラントは長持ちすることはないだろうと考えられます。

2024年7月25日

hori (07:50)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

根尖突出歯は漏洩事故が起きやすい。

根尖孔からNaOClが漏洩した事故を経験した患者(漏洩群)と事故がなかった患者(コントロール群)を対象として、漏洩事故の解剖学的な原因を調べた研究。

無害なX線不透過性の溶液を用いて根管洗浄をし、CBCT撮影を行って分布を調べた。

コントロール群では皮質骨の開窓がなく、根尖単が骨内または病変内にあった。

漏洩群では根尖部の皮質骨が開窓し、根尖が突出していた。

(参考文献)

Mapping the periapex anatomical pattern of teeth involved in sodium hypochlorite accidents: a cross- sectional quasi- experiment study. Souza EM, et al. Int Endod J. 2021; 54 (8): 1212-1220.

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根尖突出、いわゆるフェネストレーション歯では、漏洩事故が起きやすい、という考えてみると当り前ではありますが、そのような視点は個人的には欠落していました。

根尖突出は、上顎中切歯、犬歯、第一小臼歯、第一大臼歯で多いということを考えると、この歯種における根管洗浄は注意が必要であるといえることでしょう。

2024年6月15日

hori (08:06)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

心房細動の再発を歯周炎治療で抑制。

心房細動に対するカテーテル治療を受ける患者のうち、重度の歯周炎がある人は、歯周炎治療によって心房細動再発を抑制できる可能性があると示唆された。
広島大学の研究グループは、同大学病院で心房細動に対してカテーテルアブレージョン治療を受ける患者288人を対象に、歯周炎治療が術後の心房細動再発に及ぼす影響を検討。
さらに、歯周炎の定量化指標となる歯周炎症面積に着目し、前例で歯周炎症面積を計測した。
その結果、歯周炎治療を受けた患者の心房細動再発率は16.5%だったのに対して、治療を受けなかった患者は28.3%であることが分かった。
歯周炎症面積高値群では、歯周炎治療を受けた患者の心房細動再発率は20%、受けなかった患者は48.4%だった。
(アポロニア21 2024年6月号 )
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血管内の血栓を惹起するリスクのある 心房細動 は、歯周炎治療を受けているかどうかで、再発リスクが大きく変化することが明らかになりました。

2024年6月 1日

hori (08:00)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

アスパルテームと発がん性

世界保健機関は、人工甘味料として広く使用されるアスパルテームに関する発がん性の可能性に言及した。
世界保健機関とその傘下にある国際がん研究委員会、国際食糧機関の合同添加物専門委員会らによれば、アスパルテームの発がんリスクについて、限定的なエビデンス(2B)を認めている。
合同添加物委員会は、有害性を明確に示す根拠は示していないが、体重1キログラムあたり1日に40ミリグラムを超えるとリスクがあるとしている。
(アポロニア21 2023年9月号 )
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アスパルテームに発がん性の可能性があるようです。

2023年10月25日

hori (08:21)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

歯周病の歯の本数と認知症

軽度の歯周病では歯の数が少ないほど、重度の歯周病では歯の数が多いほど、左海馬の萎縮が早いことを、東北大学歯学研究科加齢歯科学分野の山口らが明らかにした。
認知症予防の考え方に大きな影響を与える可能性がある。
(アポロニア21 2023年9月号 )
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歯科臨床を日々行っていると、何となく結果を予測できる内容であると思いました。
「軽度の歯周病では歯の数が少ないほど、左海馬の萎縮が早い。」という結果でしたが、正確には軽度の歯周病の状態、かつ良質な義歯使用やインプラントによる咬合再構成がなされていないケースで左海馬の萎縮が早いのでは?と考えました。
そうなると、「重度の歯周病では歯の数が多いう症例」がより問題となる可能性があると考えられます。

2023年10月 1日

hori (08:57)

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子宮内膜症の原因

名古屋大学大学院医学系研究科・腫瘍生物学分野の近藤らの研究グループは、子宮内膜症の原因は口腔内に常在する細菌「フソバクテリウム」である可能性を示唆した。
研究グループは、子宮内膜症の抗菌薬の効果を実証するために臨床試験を始め、子宮内膜症の患者の子宮組織を調べたところ、約6割の人の組織にフソバクテリウムが存在していることが分かった。
さらに、子宮内膜症を発症させたマウスに対して、フソバクテリウム菌を感染させると、病原菌の個数および重量が大きくなった。
また、抗菌薬を使うと縮小したり、消失したりなどの効果も見られた。
フソバクテリウムは歯周病や扁桃腺など口腔疾患につながるが、この細菌が子宮内膜症の発症にも関連付けられたのは世界初。
(アポロニア2023年8月号 )
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子宮内膜症の原因は口腔内に常在する細菌「フソバクテリウム」である可能性を示唆されました。

2023年8月15日

hori (08:36)

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食物繊維の摂取量と睡眠中の歯ぎしり量に関連。

岡山大学の外山助教らの研究で、学生143人を対象に、睡眠中の歯ぎしりの有無を調査した。
睡眠中に歯ぎしりをする学生と歯ぎしりをしない学生を比較したところ、睡眠中に歯ぎしりをする学生の方が食物繊維摂取が有意に少ないことが分かった。
今後は、睡眠中の歯ぎしりへの新たな対処法を提案するだけでなく、食物繊維を摂取することで睡眠中の歯ぎしりを減少できることへの証明につながると期待がかかっている。
(アポロニア21 2023年7月号 )
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食物繊維の摂取量と睡眠中の歯ぎしり量に関連があるとは、興味深い研究報告ですね。

2023年7月25日

hori (08:21)

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「老衰」による死亡が第3位に。

「老衰」による死亡が第3位に。
令和3年と令和2年を比較すると、死亡者数が約6.7万増加しています。
最も増加していたのは「老衰」で約2万人、次いで「心疾患」が約9千人増加しています。
3番目に「誤嚥性肺炎」が約7千人増加していました。
最も減少したのは、「肺炎」で、約5千人減少していました。
令和3年は令和2年と比較し「新型コロナウイルス感染症」による死亡が約5倍増加しており、約1.7万人が死亡していることが分かります。
(日本歯科評論 2023年6月号 )
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新型コロナによる病院への受診控えのために、本来であれば健診等でガンが見つかる頻度が減少することで、ガンの死亡数が増大すると警鐘を鳴らしていた人がいましたが、"主要死因死亡率の年次推移"を見る限り、そのような傾向は認められませんでした。
また、最も増加していたのが「老衰」による死亡で約2万人というのも興味深く感じました。

2023年7月 5日

hori (08:37)

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なぜ、少量の食塩が甘みを引き起こすのか?

なぜ、少量の食塩が甘みを引き起こすのか、その謎を岡山大学薬学部の山下教授、東京歯科大学短期大学の安松教授らが解明した。
食塩水の場合、甘いと感じるという現象が起こるが、詳細なメカニズムは解明されていなかった。
この研究では、受容体たんぱく質の形状を原子レベルで調査できる「立体講義解析」で、メダカがもる味覚受容体「T1r2a-T1r3」の味物質センサ-領域の立体構造を調べたところ、メダカの受容体が感知する味物質のアミノ酸が結合するポケットのそばに、塩化物イオンが結合していることが分かった。
この塩化物イオン結合ポケットは、甘み受容体とうまみ受容体を含め、ほとんどの動物が持つ受容体にも存在し、アミノ酸などの味物質と同様の構造変化を受容体のセンサー領域に引き起こすと判明。
また、東京歯科大学短期大学の安松教授がマウスの味神経を用いた実験で、塩化物イオンがマウスの甘み受容体を介して、甘み神経応答を引き起こし、味覚として感知することを解明した。
何も含まれていない水と比較して、マウスは薄い塩化物イオンを含む水をより好んで飲み、甘みと同様の好ましい味として塩化物イオンを知覚していた。
その結果、食塩濃度が高くなると、塩味受容体が感知する塩味の方を強く感じて、味覚の混合抑制という現象が起こり、食塩の甘さに気づきにくくなっていると推測されることが分かった。
(アポロニア 21 2023年5月号 )
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「何も含まれていない水と比較して、マウスは薄い塩化物イオンを含む水をより好んで飲み、甘みと同様の好ましい味として塩化物イオンを知覚していた。」
というのは、何とも興味深い結果ですね。
動物が甘みを好むのはエネルギー源となるのでもっともなことだと思いますが、塩化物イオンも濃度が低ければ、同じように必要不可欠なものであると体は認識しているということなのでしょう。

2023年6月10日

hori (08:03)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

歯根膜組織の増殖能は外科的侵襲で約6倍に!

抜去歯の歯根表面55%の歯根膜が付着しているとの報告がある。
歯根膜の細胞が抜歯という外科的侵襲を受けると、その増殖能は約6倍になるという研究報告からすると、歯根膜表面はすべて既存の歯根膜と再生歯根膜によって被覆されるものと推測できる。
(参考文献)
下野正基:決定版 治癒の病理. 74-75, 422-427, 石躍出版, 東京, 2022.
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歯根膜組織の増殖能は外科的侵襲で約6倍になることが明らかになりました。

2023年5月20日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

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