インプラントの偶発症の最近のブログ記事

後上歯槽動脈を損傷した際、止血が困難である理由。

・サイナスリフト時の上顎洞前壁を開窓する際に露出や損傷の可能性のある血管は、後上歯槽動脈と眼窩下動脈の枝(中上歯槽動脈)である。
両動脈は互いに吻合しており、このことが、この血管を損傷させた場合に止血を難しくする理由となる。
吻合したこの動脈を上顎洞歯槽動脈と呼ぶが、日本の雑誌などには、これを上歯槽動脈と呼称しているものもある。
出血の頻度は、解剖学的に問題とされているよりはかなり少ないと報告されている。
(参考文献)
Rahpeyma A, Khajehahmadi S. Alveolar Antral Artery: Review of Surgical Techniques Involving this Anatomic Structure. Iran J Otorhinolaryngol 2014 ; 26(75) : 73-78.
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後上歯槽動脈を損傷した際、止血が困難である理由は、眼窩下動脈の枝と吻合していることが原因であることが明らかになりました。

2019年11月20日

hori (08:19)

カテゴリ:インプラントの偶発症

上顎大臼歯が上顎洞に入り込んでいる割合

・上顎大臼歯が上顎洞に入り込んでいる割合は約23.3%であり、臼歯根尖が洞底粘膜に近接していることは珍しいことではない。
(参考文献)
Kwak HH,Park HD,Yoon HR, Kang MK, Koh KS, Kim HJ.: Topographic anatomy of the inferior wall of the maxillary sinus in Koreans. Int J Oral Maxillofac Surg. 33(4):382-388,2004.
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上顎洞粘膜剥離操作によって残存歯の栄養血管、神経を損傷すると、歯髄壊死から骨補填材に感染が拡大し、上顎洞炎へと移行する恐れがあるので、注意が必要です。

2019年10月 5日

hori (11:17)

カテゴリ:インプラントの偶発症

インプラントも50μmまでは動揺する。

・インプラントは骨組織内で最大50μmまで動揺する可能性が報告されている。
各インプラントには最大で50μmのミスフィットが許容されると予想されている。
(参考文献)
Andriessen FS, Rijkens DR, van der Meer WJ, Wismeijer DW. Applicability and accuracy of an intraoral scanner for scanning multiple implants in edentulous mandibles: a pilot study. J. Prosthet Dent 2014; 111(3):186-194.
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これまでインプラントは、動かないものと考えられてきました。
しかしながら、今回報告で最大50μmまで動揺する可能性が示唆されました。
個人的には、インプラントが動揺するというよりは、インプラントを取り囲む骨が代謝の結果、位置を若干変化させるのではなかろうかと考えています。
こうして考えると、オープンコンタクトがインプラント-インプラント間に生じても不思議はないということになります。

2019年8月10日

hori (08:58)

カテゴリ:インプラントの偶発症

臼後孔

臼後孔は臼後部に存在する下顎管と連続する孔で、頻度は3-75%と報告によりさまざまであるが、Dr岩永譲らのCBCTでの研究では26%の患者に認められた。
臼後孔は下顎孔付近の下顎管から直接分岐する臼後管が臼後部に開く孔であるため、構成要素も下顎管に近い。
多くの場合、レトロモラーパッドから1-2歯分前方までの大臼歯頬側歯肉の知覚支配をしている。
他の副孔同様、大きな臼後孔(径が1ミリ以上)の損傷は極力避けたい。
臼後孔のパノラマエックス線写真での検出率は1%以下と非常に低く、パノラマエックス線写真での判断はできないと考えた方がよい。
(参考文献)
Kikuta S, Iwanaga J, Nakamura K, Hino K, Nakamura M, Kusukawa J. The retromolar canels and foramina : radiographic observation and application to oral surgery. Surg Radiol Anat 2018 ; 40(6) : 647-652.
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日本人の臼後孔出現率は26%程度であることを踏まえ、智歯抜歯時には臼後孔を損傷しないように気を付けてCBCTの読影を行うことが大切であると考えられます。

2019年6月 1日

hori (08:37)

カテゴリ:インプラントの偶発症

BP薬剤は、下顎皮質骨骨密度を大きく上昇させる。

・経口ビスフォスフォネート薬剤が下顎骨に与える影響について
本研究では、骨粗鬆症と診断され、経口BP薬剤を服用している患者に対して、腰椎・大腿骨で用いられているQCT法を下顎骨に応用して、骨密度を皮質骨と海綿骨に分けて三次元的に測定し、経口BP薬剤および服用期間が骨粗鬆症患者の顎骨に与える影響について検討しました。
その結果、顎骨壊死を発症しやすい下顎骨において海綿骨骨密度は、BP薬剤の影響が小さい一方で、皮質骨骨密度は、服用期間によらずBP薬剤の影響によって骨密度が大きく上昇し、長期服用によって皮質骨厚が厚くなること、BP薬剤服用患者のインプラント早期喪失率は高く、インプラント早期喪失患者の皮質骨骨密度が1SD以上有意に高い値を示したことを明らかにしました。
したがって、インプラント治療においては、インプラント埋入手術におけるドリリング時の熱傷による骨壊死と血行不良による骨形成の抑制によって、顎骨壊死のみならず骨結合を含むリスクに関しても、十分なインフォームドコンセントの必要があり、さらにはメインテナンス中にBP薬剤による治療が開始されることがあるため、通常のメンテナンス項目だけでなく、服薬状況の変化についてもきちんと把握することが重要であることが分かりました。
( 日本インプラント学会会誌 Implant News No.27)
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下顎骨に対して、BP薬剤が皮質骨と海綿骨とで異なる影響を与えることが分かりました。
すなわち、海綿骨の骨密度はBP薬剤の影響が小さい一方で、皮質骨は服用期間によらず、骨量・骨質ともに増大すること。
特に皮質骨の骨密度に関しては、1SD以上有意に高い値を示すほどの状態になるので、ドリリング時の熱傷による骨壊死と血行不良による骨形成の抑制によって、骨結合が起きえないリスクがあることが分かりました。

2018年10月20日

hori (08:38)

カテゴリ:インプラントの偶発症

下口唇枝の走行は大きく分けて二つある。

・オトガイ神経の分岐の中で下口唇枝は太い神経が1本で下唇に向かう場合と2本以上で様々な方向から下唇に向かう場合があり、神経損傷でその後の治癒過程に差が出るのはそのためであると思われる。

(日本歯科医師会雑誌 2012年12月号 )

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インプラント埋入手術の偶発症として、神経損傷があります。

その中でも、オトガイ神経の損傷は、下歯槽神経や舌神経の損傷と並び、大きな問題となります。

下口唇枝は、このオトガイ神経の末梢に位置します。

今回の報告で、下口唇枝の神経の走行が、太い神経が1本の場合と、2本以上で様々な方向から下唇に向かう場合があることがわかりました。

この二つのタイプにより、口唇の感覚は何かしらの違いがあるのでしょうか。

また、神経の走行の仕方によって、同じ神経損傷でも、治癒過程が異なるのはもっともな話といえることでしょう。

ある意味、興味深い分野です。

2017年12月 5日

hori (08:48)

カテゴリ:インプラントの偶発症

下歯槽神経障害の10%が、インプラント埴立後。

2007年、デンマークの口腔外科医のHillerupらは、下歯槽神経障害を主訴として外来を訪れた患者(12か月以上の経過を終えた52名)を検討した論文をInt J Oral Maxillofac Surg に記述しています。

その結果、下顎智歯の抜去後が36症例(69%)、インプラント埴立後が5症例(10%)、局麻注射によるもの5症例(10%)で、圧倒的に智歯抜去後の下歯槽神経障害が多く、そのうち60%で知覚が回復し、21%は不変、19%は悪化の傾向を示したと報告しています。

(日歯生涯研修ライブラリー 下歯槽神経・舌神経の神経障害に対する診査・診断と外科的対応 )

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インプラント治療の偶発症の一つに、神経麻痺があります。

インプラント治療では通常、他の患者さんの治療を並列で行うことはありません。

一方、保険診療での下顎智歯の抜歯は、インプラントよりも難易度判定が難しい場合があるので、治療時間が大幅に延長する結果となる場合があります。

また、保険診療であるがゆえに、十分な時間が取れない場合があります。

例えば、次の患者さんをお待たせしていたり、そもそも並列して他の患者さんの治療をする予定となっている場合です。

下歯槽神経障害の原因として、局所麻酔が10%、下顎智歯抜歯が69%という事実を頭に置き、インプラント治療はもちろんですが、一般歯科治療にも注意深い施術が必要だと感じました。

2017年7月 1日

hori (10:50)

カテゴリ:インプラントの偶発症

副オトガイ孔

オトガイ孔周辺に位置し、下顎管と連続し、かつオトガイ孔よりも小さい副孔であり、その中には神経のみや血管のみの場合もあればどちらも含まれる場合もある。
2.0-14.3%の下顎骨に存在する。
その好発部位は報告によってさまざまであり、一定ではない。
前方よりも後方に多く見られるとする報告が多いが、大きな副オトガイ孔は前上方に多いとする報告がある。
オトガイ孔からやや離れた位置での大きな副オトガイ孔には大きな動脈が含まれている場合もある。
また、CBCTの専用viewerによるsurface renderingだけでは小さな孔が観察されないとする報告もあるため、3D再構築画像だけでなく、読影の最初の段階で必ず各スライスで副孔の存在を確認しなければならない。
(臨床解剖学に基づいたComprehensive Dental Surgery )
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インプラント治療の前にCTによる三次元的な画像による診査・診断は今や必須のものとなっています。
下歯槽管の三次元的な位置の把握は当然必要ですが、この副オトガイ孔もあるものとして、画像読影する必要があります。
『副オトガイ孔は、2.0-14.3%の下顎骨に存在する』とのことですが、個人的には思ったよりもその割合は多いと感じました。

2017年6月20日

hori (11:35)

カテゴリ:インプラントの偶発症

下歯槽神経障害を来す疾患

・下歯槽神経障害を来す疾患
1. 腫瘍
神経鞘腫、脳腫瘍、造血器腫瘍、頭頸部癌、髄膜腫
2. 脳血管障害
脳動脈瘤、脳梗塞、脳出血
3. 免疫系疾患
サルコイドーシス、SLE、血管炎、多発性硬化症、ベーチェット病
4. 感染症
脳炎、髄膜炎、真菌症、結核、HIV、顎骨骨隨炎、歯性感染
5. 代謝性疾患
糖尿病、アミロイドーシスなど
6. 医原性
抜歯などの歯科治療、浸潤麻酔によるオトガイ孔の刺激
7. 外傷
顎骨骨折など
(デンタルダイヤモンド 2017年2月号 )
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インプラント治療を行う歯科医師は、この下歯槽神経障害をものすごく気にしながら、施術を行っています。
しかしながら、同じく下歯槽神経障害でも、原因となる疾患は、これほどまでに多岐にわたることを知り驚かされました。
歯科だけの狭い世界で勉強をするのではなく、常に全身の中における歯科について勉強をしていかなくてはならないと感じました。

2017年4月26日

hori (22:09)

カテゴリ:インプラントの偶発症

下顎管が2つ存在するケースは、0.08-0.9%程度。

・数多くの下顎管には多数の分岐が見られることがあります。
部位として多いのは、下顎枝部と下顎智歯部です。
ただし、その多くは分岐後再度吻合しています。
出現頻度が高いものに、下顎管が臼後部で上行して、歯槽頂部に開口する臼後管が挙げられ、その出現頻度は約20%と報告されています。
一方で、きわめて稀ではありますが、下顎管が初めから2つ存在する例も報告されています。
発症率は0.08-0.9%程度されています。
(参考文献)
内藤崇孝. デンタルインプラント治療における画像診断. 口腔外科学会雑誌. 2009 ; 55 : 116-121.
Claey V, Wackens G. Bifid mandibular canal : literature review and case report. Dentomaxillofacial Radiol 2005 ; 34(1) : 55-58.
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症例によっては、下顎管が分岐しているものもあります。
パノラマレントゲンでは、下顎管の分岐の判断は困難でしょうから、やはりCTでの術前診断が必須となります。
もし、下顎管が2本存在する場合、当然のことながら、歯槽骨上縁から、2本あるうちの上の方の下顎管の上端までの距離が、インプラントを埋入できる長さということになります。
そういえば、当院にも下顎管が2本存在する方が、インプラントの相談に来院された方がいました。
結果的には、私がその方に施術することにはなりませんでしたが、もし当院で契約をされた場合には、第一選択はショートインプラント、第二選択はGBR後にインプラントとなるかと思います。
下歯槽神経移動術のように、下歯槽神経を移動させる方法もありますが、分岐しているようなケースでは、麻痺がより生じやすくなると推測されます。

2017年4月10日

hori (11:05)

カテゴリ:インプラントの偶発症

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