歯周病治療でHbA1cはどの程度改善するのか。

・Engebretsonらによる研究では、2型糖尿病に非外科治療(SRPおよび0.12%クロルヘキシジンの応用)を行ったところ、PPDやBOPの改善は認めたものの、HbA1cは減少しなかったと報告している。
しかし、日本において中等度-重度慢性歯周炎を有する?型糖尿病患者に非外科治療を用いた研究では、高感度CRPレベルが500ng/ml以上の患者(2型糖尿病および中等度-重度慢性歯周炎)において、SRPとミノサイクリンの局所投与により3か月後に有意なHbA1cの改善を認めたと報告している。
両者の研究においては、人種、年齢、体格指数に大きな違いがあります。
米国における体格指数は34-35kgに対して、日本では22-25kgであり、重度歯周炎により上昇する高感度CRPが肥満による炎症で相殺され、差がなくなるとの報告もあります。(単位はすべて一平方メートルあたり)
体格指数が日本人に近い中国で行われた研究では、2型糖尿病患者に外科治療を含めた歯周病治療を行った群では、HbA1c、空腹時血糖、高感度CRPを含めた炎症性因子の統計学的な改善を認めたと報告しています。
以上より、メタアナリシスではHbA1cの改善を認めてはいるものの、論文数が少ないこと、症例数が十分ではないことから、歯周病や糖尿病治療を多岐にわたり比較することは困難です。
現時点で、糖尿病治療の指針のルーティンに入ってくるほどのエビデンスはないように思います。
しかし、歯周病治療によってHbA1cが改善することは事実で、歯周病治療だけで糖尿病が改善するというエビデンスはないものの、糖尿病患者は歯周病を発症しやすいことを考えて、双方からのアプローチを行うことに意義はあると思います。
(歯界展望 2017年1月号 )
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歯周病と糖尿病との関連については、改善するとするエビデンスがある一方で、改善しないというエビデンスもあるようです。
(同じようにエビデンスとはいっても、エビデンスレベルはそれぞれで異なっています。)
そのため、歯周病治療だけで糖尿病が改善するというエビデンスはないものの、歯周病治療によってHbA1cが改善することは事実で、糖尿病患者は歯周病を発症しやすいことを考えて、双方からのアプローチを行うことに意義はあるとのことでした。
他の疾患と歯周病の関連もそうですが、歯周病の治療を行うとどの程度、糖尿病の状態が改善するのか、人種により体質が異なるのであれば、日本人の場合はどの程度改善するのかを、だれの目にも分かる形で報告していただけたらと考えています。

2017年3月20日

hori (09:59)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

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