保険の入れ歯を入れると歯がなくなる理由

熊野の報告に、臨床応用頻度の高いエーカースクラスプとRPIクラスプを比較した際の有意差を認めることができる。

三次元有限要素法によるエーカースクラスプとRPIクラスプとの力学的解析で比較したもので、垂直荷重における義歯の変位では、両者ともに遠心方向への変位がみられ、遠心変位量は、エーカースモデルでは71.9μm、RPIモデルでは29.0μmが観察され、エーカースモデルがRPIモデルの2倍以上を示した。

沈下量では、近遠心方向よりも変位量が多く、エーカースモデルで97.7μm、RPIモデルで34.2μmとなり、差は約3倍となった。

支台歯の変位量については、荷重時の支台歯は、エーカースモデルで遠心に変位、RPIモデルで近心に変位がみられ、変位量はエーカースモデルにおいて遠心に11.7μm、RPIモデルで近心に5.0μmとなり、その差は約2倍を示した。

沈下量はエーカースモデルで25.8μm、RPIモデルで10.8μmとなり、2倍以上の変位量を示した。

また舌側方向荷重、頬側方向荷重においても、エーカースモデルがRPIモデルよりも大きな変位量を示したと報告している。

この報告から、エーカースクラスプとRPIクラスプにおける義歯・支台歯の変位量の比較結果では、RPIクラスプが有意に変位量が少なく、臨床応用に際してはRPIクラスプが有効と考えられる。

(参考文献)
熊野弘一 : 三次元有限要素法によるエーカースクラスプとRPIクラスプとの力学的解析. 愛院大歯誌, 44(1) : 71-83, 2006.



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保険の義歯で多用されるクラスプ(いわゆる"入れ歯のばね")が、エーカースクラスプ、自費の義歯で多用されるクラスプの一つがRPIクラスプです。

三次元有限要素法で解析した結果、エーカースクラスプは、RPIクラスプと比較して、義歯使用時の歯牙の揺さぶり、および沈下量が、2-3倍大きいという結果が得られました。

これが、保険義歯を使用していると、バネをかけた歯が順になくなる理由の一つといえるでしょう。

自費義歯の優位性の一つに、バネをかけた歯の負荷を小さくすることができるという点にあります。

もっとも、通常ばねをかける必要がないインプラントは、自費義歯よりも現在残っている歯の保存には効果があります。

それゆえ私は、インプラント>自費義歯>保険義歯の順で、患者さまのお口の健康に寄与できると考えています。

2014年3月17日

hori (08:46)

カテゴリ:インプラントについて

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