補綴的合併症はこのCHSが15ミリ以上のケースで発生。

・クラウン/インプラントレシオは一般的に1:1と言われているが、それには根拠がなく重要なのは、クラウンの高さなのである。
文献によると、生体力学関連の有害な影響を評価するうえで重要なのは、クラウン/インプラントレシオよりもCrown height space(以下、CHS)である。
補綴的合併症はこのCHSが15ミリ以上のケースで発生したとされている。
de Moraesらはエクスターナルヘクスのコネクションを有した直径3.75ミリ・長さ10ミリのインプラントにCHSが10ミリ、12.5ミリ、15ミリのクラウンをスクリュー固定したそれぞれの骨ブロックを作製し、200Nの軸方向荷重と100Nの斜め(45度)荷重が加えて三次元有限要素法で応力分布を調べている。
その結果、軸方向荷重ではCHSが10ミリから15ミリへと高くなってもほとんど応力の集中は認められなかったが、斜め荷重下ではプラットフォームとインプラントのスレッド、そしてとくにアバットメントスクリューに応力の集中があり、CHSが15ミリのクラウンの応力集中は10ミリクラウンのほぼ2倍に増加した。
この強力な応力集中はアバットメントスクリューの緩みや破損を引き起こし、過負荷による骨組織へのダメージも増加させると結論付けている。
(参考文献)
Nissan J, Ghelfan O, Gross O, Priel I, Gross M, Chaushu G. : The effect of crown/implant ratio and crown height space on stress distribution in unsplinted implant supporting restorations. J Oral Maxillofac Surg. 69(7) : 1934-1939, 2011.
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インプラントといえど、歯冠が長くなるとアバットメントスクリューの緩みや破損を引き起こし、過負荷による骨組織へのダメージも増加させます。
多方面から治療計画を吟味する必要があるように感じます。

2020年1月25日

hori (08:11)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

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