インプラントケース : 46

数年前に下顎臼歯部及び前歯部にインプラント治療を行なった方が来院されました。

今度は上顎前歯部にインプラント治療を受けたいとのことでした。

この方は上顎前歯部にセラミックスのブリッジを、臼歯部は部分入れ歯を使用されていました。

下顎のインプラントが上顎前歯部を突き上げてブリッジの土台となっている歯牙が破折をおこしていました。

破折歯は破折した方向にもよりますが、歯根部分にも達する縦破折歯は残念ながら、抜歯が避けられないことが多いのが現状です。

この方には下顎のインプラント治療を行なった頃から、『上顎前歯部が破壊される時期が必ず来るから、その前に上顎臼歯部にインプラント治療を受けてください。』と度あるごとにお話ししていたのですが、ついにその日が来てしまいました。

近い将来の悲惨な状態を具体的にイメージをすることができなかったのか、『何かあればその時考えます。』と仰るばかりだったのです。

上顎前歯部が破壊されてしまった今となっては、上顎臼歯部だけではなく、上顎前歯部にもインプラント治療が必要となりました。

必要となるインプラントの本数が増加した結果、治療費は本人の思惑とは反対に多くなってしまったのです。

治療する時期というのは、"今すぐ"であることは現実には少なくありません。

"今すぐ"治療を開始しなかったばかりに、状態は一層複雑になっていくことが多いからです。

少し治療時期が遅れたばかりに、治療に要する時間もエネルギーも費用も以前の見積もりよりも余分に必要となるのです。

この患者さまとお話していて気がついたことは、先を見越した治療ではない、この部分、部分の治療は、建築で言えば、増築の繰り返しであるということです。

そして、既存の建物で増築に増築を重ねる場合よりも、新築一つ建てる方が費用が少なくて済む場合が少なくないということなのです。

増築を繰り返す場合、まだ使用できる部分を一部壊して、再度建物を再構成することになりますから、使い勝手が悪かったり、トータルでの費用が逆に高くついたりすることは想像に難しくないと思います。

患者さまには、次に起きることを予測し、そのことも踏まえて、無駄のない治療プランを歯科医師とともに練られることをお勧めします。

 

2011年4月27日

hori (09:06)

カテゴリ:治療例

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