インプラントの咬み合わせ調整

インプラントの咬み合わせ調整
1)咬頭嵌合位の咬合調整について
歯根膜をもつ天然歯は、弱い嚙み締めにより歯根膜内の歪みに由来する20-30μmの変位を示すのに対して、インプラントにはこの変位が存在せず、さらに大きな噛みしめ負荷が加わったときに天然歯と同様の顎骨歪みによる変位が存在する。
このように負荷に対する歯の変位については、天然歯はインプラントに対して常に20-30μmの正方向のバイアスを持っているうえ、この変位とともに歯の咬合接触感覚も獲得している。
これによって、噛みしめ負荷によって、天然歯に咬合接触のわずかな不調和があったとしても、歯根膜内の歯の変位によって咬合の調和状態を取り戻せる可能性が存在している。
一方のインプラントは、歯根膜をもたないので、弱い噛みしめ負荷による咬合接触調整機能がないと考えるべきである。
このため、天然歯に比較してより高い精度の咬合調整が求められる。
具体的には、強い噛みしめ時に残存天然歯と十分に調和のとれた、左右側歯列もバランスのとれた咬合接触をインプラント上部構造に正確に与えることが必要となる。
(補綴臨床テクニカルノート )
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20-30μm程度の咬み合わせの誤差であれば、天然歯は位置を変化させることにより、その状態に適応するわけですが、歯根膜がないインプラントは基本的には位置が変わりません。
基本的にという意味は、大きな噛みしめ負荷がかかった際に顎骨自体が歪むので、たわみの影響を大きく受けている歯槽骨に結合しているインプラントでは、若干咬合接触する部位が変化するということです。
また、顎骨のたわみにより咬合接触部位が変化するとすれば、咀嚼筋の中でも咬筋付近に位置する第二小臼歯あるいは第一大臼歯部に埋入されているインプラントには、他の部位以上に注意が必要ということになります。

2015年12月30日

hori (15:02)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

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