2020年10月アーカイブ

受動喫煙で子どもがう蝕になる。

・受動喫煙による子供の健康影響の一つにう蝕があります。
多くの研究で、家族に喫煙者がいる子供はそうではない子供に比べて、う蝕有病率が高かったと報告されており、その科学的根拠はすでに因果関係を示唆するレベルに到達しています。
なぜ受動喫煙がう蝕と関連するのかはまだ十分解明されていませんが、タバコの煙に含まれるいくつかの有害物質が、う蝕菌や唾液、歯質に影響を与えることによりう蝕のリスクが高まるのではないかと推定されています。
たとえば、ニコチンによるミュータンス連鎖球菌の成長促進やバイオフィルムの形成促進、カドミウムによる唾液腺や歯質の結晶化の傷害が確認されています。
(参考文献)
小島美樹. 受動喫煙は子どものう蝕の原因となるか? エビデンスに基づく因果関係の推定. the Quitessennce 2016 ; 35(12) : 168-177.
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受動喫煙は子供のう蝕有病率的にも悪影響があることが明らかになりました。

2020年10月25日

hori (08:54)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

フラップの厚みと減張切開。

フラップが1ミリ以下の薄さの場合、フラップには15g以上のテンションがかかるとすべてのケースで創部の裂開が生じる。
またたとえ1ミリ以上の厚みがあっても15g以上のテンションでは、35%のケースで創部の裂開が起きている。
(参考文献)
Vargas G, Reger TB. An alternative to sutures. Plast Surg Nurs 2001 ; 21(2) : 83-85.
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抜歯即時インプラントを行うようになってから、減張切開をするケースがほぼなくなりました。
このデータを見る限り、フラップにテンションがかかるGBRは失敗するリスクが大きいものと推察されました。

2020年10月20日

hori (08:22)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

矯正的挺出と骨移植の有効性の比較。

・矯正的挺出と骨移植の有効性を比較するうえで重要なのは、それぞれの硬・軟組織増大量および変化量である。
それらについての明確な記載も少なかったが、矯正的挺出の前向き臨床研究であるAmatoらの文献によると、矯正的前処置によって4ミリの硬組織が獲得できた一方、骨移植例に言及したほかの論文では硬組織の変化量は、骨移植材料やメンブレンの有無など術式が多様多種であり、確定的な限界値や骨変化量言及することは難しいとえる。
Pieriらはレイマスのブロックを用いており、骨増大量は水平的には4.23±0.69ミリ、垂直的に1.71±0.75ミリと報告している。
矯正的挺出例では歯肉縁の冠状方向への平均移動量は3.9±1.5ミリ、歯肉の厚さ(頬舌径)の平均増大量が0.7±0.4ミリと示されており、頬舌的な増大量は骨移植と比べて少ない。
これは、矯正的挺出法では骨の頬舌的な増大量が歯根の断面積に依存するためだと推測されている。
頬舌的な骨幅をより増大させたい場合には骨移植の方が有用であるかもしれない。
矯正的挺出法の場合には、オーバーコレクションを行っておく必要があると思われる。
治療期間は、矯正的挺出では18-61か月である対して、骨移植では多くが12か月と矯正的挺出が時間を要する結果となっていた。
合併症とインプラント生存率に関して差はなかった。
(参考文献)
Peri F, Aldini NN, Marchetti C, Corinaldesi G, Esthetic outcome and tissue stability of maxillary anterior single-tooth implants following reconstruction with mandibular block grafts : 5-year prospective study. Int J Oral Maxillofac Implants 2013 ; 28(1) : 270-280.
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矯正的挺出にしても骨移植にしても治療期間が長くなる傾向にあるので、まずは抜歯即時インプラントで対処できないか当院では考えるようにしています。

2020年10月15日

hori (10:03)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

近遠心レストと遠心レスト

・76欠損で5にクラスプがかかる設計での部分床義歯の義歯床下粘膜へ加わる荷重は、近遠心レストと遠心レストを比較した場合にはあまり差が認められないことが示された。

(歯界展望 2020年9月号 )

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遠心レストよりも近遠心レストの方が歯牙負担が増大し、その結果義歯床下粘膜への荷重は減るものと考えていましたが、実験ではそうではないことが明らかになりました。

当たり前と考えていることも、本当だろうか?と疑問を持つ視点を持つことは大切なことだと感じました。

2020年10月10日

hori (08:16)

カテゴリ:入れ歯の悩み

可逆性歯髄炎をともなう亀裂歯

本研究では、可逆性歯髄炎をともなう亀裂歯を最低3年後に予後観察し、クラウンで補綴された症例では18.7%、クラウンが装着されていない症例では65.9%に不可逆性歯髄炎もしくは歯髄壊死が生じたとの結果が報告されている。
(参考文献)
Wu S, Lew HP, Chen NN. Incidence of Pulpal Complication after Diagnosis of Cracked Teeth. J Endod 2019 ; 45(5) : 521-525.
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可逆性歯髄炎は初めの数回では、クラウンで早期に補綴を行うことで、歯髄への炎症の波及は避けられると思います。
しかしながら、可逆性歯髄炎で来院される患者さんの多くは、当院の場合は初めて来院される方が多いと認識しています。
そのため、何回目の可逆性歯髄炎かの判断は把握しきれないと考えています。
これらの理由により、クラウンで補綴された症例でも2割程度の不可逆性歯髄炎や歯髄壊死が認められるのだと考えています。

2020年10月 5日

hori (08:17)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

インプラント周囲炎の主要原因5つとは?!

・インプラント周囲炎の原因として、Wadaらによると、有意な原因は5つあり、それら以外にも潜在的なリスクファクターが存在すると述べている。
1. PCRが20超える(オッズ比8.87 P<0.01) 2. 喫煙あり(オッズ比7.23 P<0.01) 3. 歯周病の発症あり(オッズ比3.09 P<0.01) 
4. 角化歯肉の幅2ミリ未満(オッズ比2.59 P<0.01) 5. 埋入ポジションが上顎(オッズ比1.98 P=0.01)
(参考文献)
Wada M, et al : Prevalence of peri-implant disease and risk indicators in a Japanese population with at least 3 years in functionーA multicentre retrospective study. Clinical Oral Implants Res, 30(2) : 111-120, 2019.
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当院のインプラント治療を受けた方のメンテナンスをしていると、歯周病の既往があるものの、多くはPCR20%以下で歯磨きにはかなり熱心に取り組んでいることが窺えます。
また喫煙もインプラントを埋入するまでは最埋入のリスクがあったり、骨結合までの期間が長期化する傾向にありますが、巷でいわれているほどは、喫煙がインプラントの予後に悪影響があるとは考えていません。
また、4の角化歯肉の幅や5の上顎へ埋入もインプラント治療の設計に関することでトラブルを回避できると考えています。
なぜなら、トラブルが生じやすい治療計画がある一方で、トラブルが生じにくい治療計画も存在しているように感じているからです。

2020年10月 1日

hori (08:32)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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