2020年11月アーカイブ

25歳以上の交叉咬合はあえて改善しない。

・成人患者、25歳以上の交叉咬合はあえて改善しない。
トルクをかけると咬む位置が変わってしまって傾斜移動でしか動かせなくなってしまうので、交叉咬合は改善せずそのままにし治療を進める。
(歯界展望 2020年10月号 )
*****
臼歯部の交叉咬合症例は下顎歯列弓が幅が広いのではなく、上顎歯列弓幅が狭いことが原因していることが多いように感じます。
当院でも大臼歯部の交叉咬合症例の治療例があります。
当院では、前方歯牙に対しては歯列矯正で対応して、大臼歯部は補綴的に被蓋関係を是正し、連結冠で対応しました。
治療後10年近く経過しますが、状態は安定しています。

2020年11月15日

hori (08:43)

カテゴリ:インプラントと歯列矯正

見逃された根管に生じた根尖病変の割合

ポルトガルの8か所の診療所における1160本のCBCTの撮影画像を5人が観察した。
患者の平均年齢は48.38歳で、20836本(27046根管)を診査したところ、2305歯(11.1%)(3281根管)(12.1%)が根管治療済みであった。
見逃されていた根管の割合は、全体で12.0%であった。
最も見逃されていた歯は、上顎第一大臼歯(9.5%)であった。
1本でも見逃された根管があった歯に根尖病変が存在した割合は、82.6%であった。
見逃した根管が存在した歯は、見逃しがなかった歯に比べ、4.4倍根尖病変が生じていた。
上顎第一大臼歯の近心頬側根管が最も見逃されていた根管で(62.8%)、見逃されていた場合は75.2%に根尖病変を認めた。
ついで、上顎第二大臼歯の近心頬側根は49.0%が見逃されており、68.0%に根尖病変を認めた。
下顎では、第二大臼歯の近心根に見逃しが多く、(9.6%)、見逃しがあると92.3%に根尖病変があった。
見逃された根管が存在した場合、有意に根尖病変が存在する確率が高かった(P<0.05)
(参考文献)
Baruwa AO, martines JNR, Meirinhos J, Pereira B, Gouveia J, Quaresma SA, Monroe A, Ginjeira A, J Endod. The influence of missed canals on the prevalence of periapical lesions in endodontically treated teeth: a cross-sectional study. J Endod, 46 : 34-39,2020.
*****
他の文献でも、見逃された根管に生じた根尖病変の割合は、ほぼ同様の結果であったと記憶しています。
特に上顎第二大臼歯の近心頬側根管、特にMB2は見落とされている可能性が高いということを常に心に留めておかなくてはならないと考えています。

2020年11月10日

hori (08:26)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

トラブルが増大するカンチレバーの長さとは?

・総じて、カンチレバーの長さと、インプラントの喪失、補綴装置の技術的合併症、辺縁骨の吸収量とは正の相関があり、トラブルを経験しているカンチレバーブリッジのカンチレバーの長さはおおよそ8ミリを超えていると報告されている。
一方でトラブルのないものの平均は8ミリ未満である。また、カンチレバーブリッジの支台であるシングルインプラントと、カンチレバーのないシングルインプラントの間では、辺縁骨レベルの平均変化量に差はないとされており、シングルインプラントの上部構造にカンチレバーを付与することは一概に否定できないようである。
なお、カンチレバーブリッジに付与すべき適切な咬合様式に関しては、現在のところ不明とされている。
(参考文献)
Kim P, Ivanovski S, Latcham N, Matteos N. The impact of cantilevers on biological and technical success outcomes of implant-supported fixed partial dentures. A retrospective cohort study. Clin Oral Implants Res 2014 ; 25(2) : 175-184.
*****
implant-supported fixed partial denturesにおけるカンチレバーの長さということになるので、いわゆるオールオン4の遠心カンチレバーの長さに関する研究報告でした。
インプラントブリッジでは基本的に遠心カンチレバーは当院では行いませんが、近心カンチレバーであればある程度の長さがあっても、咬み合わせの付与の仕方によっては十分に長期に安定する設計であると考えています。
ただし、カンチレバーよりも前方に存在する歯牙やインプラントが喪失する事態になれば、状況は大きく変化することになるので、定期的な歯科医師によるチェックは必須になるものと考えられます。

2020年11月 5日

hori (08:44)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

MB2のネゴシエーションが難しい理由

・Vertucciは、MB2のネゴシエーションが難しい理由は、根管口における象牙質の張り出しや根管開口部が近心頬側に傾斜している点、そして根管入り口が1-2回急激に湾曲していることがあげられると述べている。
(参考文献)
Vertucci FJ : Root canal morphology and its relationship to endodontic procedures. Endod Topics. 10 : 1601-1538,2005.
*****
MB2の根管治療が容易ではないというのなら、対策としてその特徴を熟知しておく必要があると考えられます。

このページの先頭へ