2020年9月アーカイブ

インプラント埋入は痛いのか?

インプラント手術後の痛みについて、Kamankatganらの報告によると、術後に患者の38.8%は痛みを感じなかったが、25.9%は重度の、23.5%は中程度の、11.8%は軽度の痛みを感じた。
一方、約半数の49.4%の患者は術後の局所的な顔面の腫脹を訴え、14.1%は顔面の著名な腫脹を訴えた。
9.4%は口腔内の腫脹を訴えたが、17.1%は何も訴えなかった、としている。
続いてインプラント埋入後の出血について、Goodacreらによれば、術後出血に関連する併発相は全体の24%にのぼると報告している。
(参考文献)
Kamankatgan S, Pimkhaokham A, Krisdapong S : Patient-based outcomes following surgical implant placements. Clin Oral Implants Res, 28(1) : 17-23,2017.
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インプラント治療を行うようになり、20年前後経過しました。
埋入手術の数時間後には、毎回受付に術後の状態を電話で確認させていますが、「痛みや腫れはほぼない」と聞きます。
日常的に歯周病の外科治療を行っているために、外科の基本となる切開・剥離・縫合についての自分自身の腕が落ちないことと、おおむね抜歯即時インプラントを行っているために、インプラントが閉鎖創になっていないことが、これらの研究報告よりも堀歯科医院の術後経過が良い結果となっている理由であると推察しています。

2020年9月25日

hori (09:09)

カテゴリ:抜歯即時インプラント

咀嚼能力と死亡率

咀嚼能力と死亡率:フランス大規模前向きコホート研究

(研究目的)

本研究の目的は、咀嚼能力と死因別死亡率と関連を調査することである。

(研究内容)

2001年1月から2011年12月にフランスのIPCの無料健康診断に応募した者を対象に歯科検診を実施し、その後の2014年12月まで追跡して、死亡発生の有無を調査した。

同集団から心血管疾患やがんの既往歴がある者、ならびに事故志望者3079名が除外され、最終解析対象は85830名(年齢範囲:16-94歳, 男/女:61/39%)であった。

歯科検診でプラーク、歯石、歯肉の炎症の程度、欠損指数、咀嚼能力が記録され、咀嚼能力は小臼歯・大臼歯部で対合歯と咬合している天然歯もしくは補綴歯のペアの数(機能的咬合域数:0-8)で評価された。

そして、死亡発生にこれらの航空関連因子がどのように影響しているかを死因別(心血管疾患、がん、心血管疾患・がん以外)にコックス比例ハザード解析にて検討した。

(研究結果)

平均追跡期間は8.06プラスマイナス2.73年で、追跡期間中に1670名が死亡。

年齢、性別、BMI、喫煙状態、血糖値、コレステロール値、血圧で調整したコックス比例ハザードモデルで、機能的咬合域数<5であることが全死因(ハザード比:1.88)、心血管疾患(ハザード比:1.55)、がん(ハザード比1.83)、心血管疾患・がん以外(ハザード比:2.00)による死亡発生のリスク因子として同定された。

他の口腔関連因子(プラーク、歯石、歯肉の炎症が重度、欠損指数>10)は全死因、がん、心血管疾患・がん以外による死亡発生のリスク因子として同定された。

(結論)

フランスの大規模前向きコホート研究の結果、プラーク、歯石、歯肉の炎症が重度、欠損歯数>10、機能的咬合域数<5であることが、全死因、がん、心血管疾患・がん以外による死亡発生のリスク因子であることが明らかとなった。

さらに、心血管疾患による死亡においては機能的咬合域数<5であることのみがリスク因子として同定された。

(参考文献)Darnaud C, Thomas F, Danchin N, Boutouyrie P, Bouchard P. Masticatory Capacity and Mortality: The Preventive and Clinical Investigation Center (IPC) Cohort Study. J Dent Res,99(2) : 152-158, 2020. Doi: 10.1177/0022034519889021.

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今回の報告における咬合支持域が4個以下しかない状態とは、左上7と左下7、左上6と左上6、左上5と左下5、左上4と左下4、右上7と右下7、右上6と右上6、右上5と右上5、右上4と右上4の8つのペアのうちいくつペアがあるかという評価基準で、4個以下ということです。

通常4や5よりは6や7の方が先に失う傾向があるので、この研究報告での4つの咬合支持域を有する状態とは、例えば上下左右ともに7・6がない状態あるいは片側は6まで噛んでいるが、反対側は最後方歯が4といったような状態を示すものと考えられます。

インプラント相談で来院される患者さんの、必要インプラント数を考えると、ほぼすべての患者さんがインプラント治療で心血管疾患の死亡リスクを低下させることができると推測できました。

咬むところがないと、心血管疾患によって死亡するリスクが上昇することが明らかになりました。

2020年9月20日

hori (08:46)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

歯周病特有の口臭成分とは?!

口臭の原因の主体は揮発性硫黄化合物とよばれる硫化水素、メチルメルカプタン、硫化ジメチルです。
硫化水素は多くの細菌種が産生し、生理的口臭の原因物質となっています。
一方、メチルメルカプタンは主として歯周病菌から産生されるため、歯周病に特徴的な口臭成分です。
硫化ジメチルによる口臭は肝臓疾患などの全身疾患由来の場合があります。
これらの揮発性硫黄化合物は特有の臭いをかぎ分けられるようになればしめたものです。
揮発性硫黄化合物は嗅覚を麻痺させる作用もあり、患者さん自身は臭いを強く感じていないと考えられています。
(歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト )
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揮発性硫黄化合物は嗅覚を麻痺させる作用もあり、患者さん自身は臭いを明確には認識することができないことがわかりました。
また明確には認識できないゆえに、大して口臭がきつくないのに、他人に迷惑をかけているのではないだろうかと過度に悩む人が出てくるのだと考えられます。

2020年9月15日

hori (08:49)

カテゴリ:インプラントと口臭

降圧剤服用でインプラントの生存率上昇。

・Garcia-Dencheらの研究により、高血圧の薬を服用している患者は、その薬の作用で骨密度ならびに骨形成能が増加するため、インプラントの生存率が高くなると報告された。
(参考文献)
Garcia-Denche JT, Wu X, Martinez PP, Eimar H, Ikbal DJ, Hernandez G, Lopez-Cabarcos E, Fernandez-Tresguerres I, Tamimi F. Membranes over the lateral window in sinus augmentation procedures: a two-arm and split-mouth randomized clinical trials. J Clin Periodontol. 2013 ; 40(11): 1043-1051.
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興味深い研究報告です。
自院のインプラント治療を受けた方に対して、降圧剤を服用している患者さんの、インプラントを埋入してから骨結合をするまでの期間を調査してみたいと考えています。

2020年9月10日

hori (08:34)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

飲酒と歯周病リスク

お酒の強い人(活性型)は多めのアルコールを毎日飲んでも飲まなくても、歯周病発症への影響に差はありませんでした。
つまり、お酒の強い人にとって飲酒は歯周病の危険因子ではないということです。
一方、元々それほどお酒に強くない不活性型の人は、33mL以上のアルコールを毎日飲むとオッズ比4.28も歯周病になりやすくなります。
(参考文献)
天野敦雄. Dr. 天野とモヤモヤを解消!侵襲性歯周炎アップデート講座. 歯科衛生士 2017; 41(1)20-35.
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お酒を飲める人と飲めない人、そのそれぞれが毎日お酒を飲んだ場合と飲まない場合で、歯周病罹患リスクが変わることが明らかになりました。
お酒を飲めない人が、33mL以上のお酒を毎日飲むとオッズ比が4.28倍へと上昇するというデータにも驚かされました。
飲酒が原因で歯周病が進行しているひとは、ストレスに弱い可能性があることが推測されました。

2020年9月 5日

hori (08:35)

カテゴリ:歯周病の悩み

歯周病の危険因子となる生活習慣や患者の背景

BMI25以上の人はオッズ比が3.02、BMIが30以上ではオッズ比8.6と跳ね上がります。
喫煙(1日ひとはこのたばこを15年吸い続けた場合)のオッズ比は2.40、毎日飲酒(純アルコール量で1日33.0g:大瓶ビール1本程度)のオッズ比は2.77となります。
また、1日ひと箱のタバコを30年吸い続けると、リスクのオッズ比は5.27になります。
肥満や運動不測の結果、糖尿病が発症するとリスクのオッズ比は2.8-11.4(疫学調査により異なる)まで上昇します。
(参考文献)
雫石聰 永田英樹. 歯周病とライフスタイル. 医学のあゆみ 2010;232(3):198-202.
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様々な生活習慣が歯周病に影響を及ぼしますが、その中でも最大のリスク因子は喫煙であるといわれています。
タバコには、ニコチンをはじめ、様々な毒性物質が含まれています。
タバコが歯周組織を激しく破壊し、実際の歯肉炎症は乏しいにも関わらず、歯周炎は静かに確実に進行するので、注意が必要です。

2020年9月 1日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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