咀嚼能力と死亡率

咀嚼能力と死亡率:フランス大規模前向きコホート研究

(研究目的)

本研究の目的は、咀嚼能力と死因別死亡率と関連を調査することである。

(研究内容)

2001年1月から2011年12月にフランスのIPCの無料健康診断に応募した者を対象に歯科検診を実施し、その後の2014年12月まで追跡して、死亡発生の有無を調査した。

同集団から心血管疾患やがんの既往歴がある者、ならびに事故志望者3079名が除外され、最終解析対象は85830名(年齢範囲:16-94歳, 男/女:61/39%)であった。

歯科検診でプラーク、歯石、歯肉の炎症の程度、欠損指数、咀嚼能力が記録され、咀嚼能力は小臼歯・大臼歯部で対合歯と咬合している天然歯もしくは補綴歯のペアの数(機能的咬合域数:0-8)で評価された。

そして、死亡発生にこれらの航空関連因子がどのように影響しているかを死因別(心血管疾患、がん、心血管疾患・がん以外)にコックス比例ハザード解析にて検討した。

(研究結果)

平均追跡期間は8.06プラスマイナス2.73年で、追跡期間中に1670名が死亡。

年齢、性別、BMI、喫煙状態、血糖値、コレステロール値、血圧で調整したコックス比例ハザードモデルで、機能的咬合域数<5であることが全死因(ハザード比:1.88)、心血管疾患(ハザード比:1.55)、がん(ハザード比1.83)、心血管疾患・がん以外(ハザード比:2.00)による死亡発生のリスク因子として同定された。

他の口腔関連因子(プラーク、歯石、歯肉の炎症が重度、欠損指数>10)は全死因、がん、心血管疾患・がん以外による死亡発生のリスク因子として同定された。

(結論)

フランスの大規模前向きコホート研究の結果、プラーク、歯石、歯肉の炎症が重度、欠損歯数>10、機能的咬合域数<5であることが、全死因、がん、心血管疾患・がん以外による死亡発生のリスク因子であることが明らかとなった。

さらに、心血管疾患による死亡においては機能的咬合域数<5であることのみがリスク因子として同定された。

(参考文献)Darnaud C, Thomas F, Danchin N, Boutouyrie P, Bouchard P. Masticatory Capacity and Mortality: The Preventive and Clinical Investigation Center (IPC) Cohort Study. J Dent Res,99(2) : 152-158, 2020. Doi: 10.1177/0022034519889021.

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今回の報告における咬合支持域が4個以下しかない状態とは、左上7と左下7、左上6と左上6、左上5と左下5、左上4と左下4、右上7と右下7、右上6と右上6、右上5と右上5、右上4と右上4の8つのペアのうちいくつペアがあるかという評価基準で、4個以下ということです。

通常4や5よりは6や7の方が先に失う傾向があるので、この研究報告での4つの咬合支持域を有する状態とは、例えば上下左右ともに7・6がない状態あるいは片側は6まで噛んでいるが、反対側は最後方歯が4といったような状態を示すものと考えられます。

インプラント相談で来院される患者さんの、必要インプラント数を考えると、ほぼすべての患者さんがインプラント治療で心血管疾患の死亡リスクを低下させることができると推測できました。

咬むところがないと、心血管疾患によって死亡するリスクが上昇することが明らかになりました。

2020年9月20日

hori (08:46)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

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