2017年7月アーカイブ

インプラントを破壊するリスクがある食品

・食品硬度表(齋藤滋、咬まない子は本当にダメになる、風人社、1997:84-85)
極めて困難な避けたい食品
ビフテキ、なまこ、酢だこ、トリ貝、あさり、はまぐり、くらげ酢のもの、貝柱、フランスパン、食パンの耳、らっきょう、セロリ、きんぴらごぼう、おこし、するめいか、固焼きせんべい
食品の硬さそのものの数値ではなく、実際の咀嚼運動に関連させての評価になっています。
力の診断に使用する以外にも、患者さんにみせて注意を促すことにも使います。
(歯界展望 2017年6月号)
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歯が過大な咬合力で破壊されるケースは少なくありません。
その後、その部位にインプラントをしてナイトガードを毎晩使用していただいても、破壊されるリスクが今回のその患者さんの食べ物の好みです。
個人的には、インプラント治療によって、歯のことを考えずに、食事を楽しめる状態を提供することが、私に与えられた使命と考えています。
ところがインプラントを守るためには、それを破壊する可能性がある食品については、前もって把握していただき、できればそれを控えてもらう配慮が私たち歯科医師には必要かもしれません。

2017年7月25日

hori (11:42)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

根分岐部病変には、超音波スケーラーが良い。

・上下顎第一大臼歯の頬側根分岐部の幅は0.63-1.04?であり、ハンドスケーラー(キュレットタイプ)のブレード幅は、それよりも58%大きいという報告があります。
また、ハンドスケーラーよりも超音波スケーラーを使用する方が根分岐部に到達しやすいとする知見もあります。
ハンドスケーラーは根分岐部に挿入できたとしても、ストローク幅が制限されるため、十分な操作ができない倍もあります。
一方、超音波スケーラーは、根分岐部にチップを挿入し、歯根面に当てることができれば、超音波振動による機械的除去効果だけでなく、チップが直接触れていない部位へのイリゲーション効果も期待できます。
(Ultrasonic Debridement )
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確かに、大臼歯部の根分岐部へ器具を到達させる上で、ハンドスケーラーのブレード幅が大きすぎて、治療が困難という場合があります。
そのようなとき、基本的にストローク幅が不要な超音波振動は有効かもしれません。
ただ、チップのふれていない部位へのイリゲーション効果については、個人的は懐疑的です。
というのも、かつて超音波歯ブラシが世に出たころ、ブラシが触れていない少し先のバイオフィルムも破壊するとメーカーが謳っていたのですが、数年後、『そのようなことはない。』という報告を聞いたことがあるからです。
さて、歯を失う原因に、大臼歯部の根分岐病変がありますが、根分岐部病変は、力の関与が大きい患者さんが多いように感じます。
そのため、根分岐部病変→インプラントというケースは、非常に注意して経過を追う必要があると考えています。

2-IODのリスク

・CawoodとHowellの分類のクラス4から5(顎堤の高さが12-18ミリ)に相当する中等度の顎堤吸収を伴った60名の無歯顎患者に対してランダムに2本並びに4本のインプラント支台のIODを製作した。

顎堤吸収の比較には、Wrightと Wastsonの方法に準じて行い、埋入直後および10年経過時のパノラマX線写真にて分析を行った。

その結果、2本支台のIODの方(ベースラインと比較して10%減)が、4本支台(同6%減)と比較し、有意に臼歯部顎堤吸収が大きくなった。

(参考文献)

Posterior mandibular residual ridge resorption in patients with overdentures supported by two or four endosseous implants in a 10-year prospective comparative study.

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当然の結果かと思います。

上顎中心のインプラント治療で、下顎には2-IODという治療計画はよく目にします。

2-IODは、咀嚼時に下顎総義歯と比較して、水平方向には移動しなくなるので、咬みやすくなるものと考えられますが、2-IODは下顎前方の2本のインプラントが回転軸となり、臼歯部の骨吸収を総義歯の場合よりも促してしまうということなのでしょう。

2017年7月15日

hori (08:42)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

咬合高径が低い状態であることを知る感覚がない。

・咬合拳上すると、実験動物のモルモットでは、元の咬合高径に戻すように調整する。

このことは、咬合高径が高いことを知る感覚(閉口筋筋感覚や歯根膜感覚)が存在していることを示しており、その感覚情報から咬合高径を調節する行動が引きこされたと考えられる。

一方で、モルモットを用いて、両側の上下顎間にゴムを作用させて、上下臼歯につねに荷重がかかるようにすると、咬合高径が低下したモデル動物を作ることができる。

この咬合高径が低い状態から、ゴムを撤去して25日間の経過観察をすると、咬合高径が元に戻るように調整されないことが示された。

この結果には、咬合高径が低い状態であることを知る感覚がないことを示唆している。

つまり、適切な咬合高径は生体にとって重要であるにもかかわらず、低い状態に対する許容が大きいことを示唆している。

(咬合拳上をうまくなりたい )

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興味深い報告です。

歯科臨床を日々行っていると、『適切な咬合高径は生体にとって重要であるにもかかわらず、低い状態に対する許容が大きい』のではなかろうか?と考えていましたが、やはりこれらは正しいようです。

2017年7月10日

hori (08:54)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

日本人男性のMonsonの湾曲は4インチ+α

・平均的なMonsonの湾曲は4インチ(=101.6ミリ)と言われてきたが、これは米国の白人を対象としたものであり、五十嵐教室での加賀谷による日本人60名ほどを対象とした測定で、女性は100ミリ、男性はおよそ110ミリとなった。

咬合平面を修正するには、多くの症例で咬合拳上が必要になる。

正しい咬合平面の付与を実行するには、咬合高径を拳上しなければ実施できない。

(咬合拳上をうまくなりたい )

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日本人、特に日本人男性では、Monsonの湾曲がこれまで言われてきた4インチよりも少し大きいことが明らかになりました。

私は、いわゆる平均値には誤解が生じやすいと考えています。

同じ60人でも、母集団が健常者60人なのか、顎機能障害者60名なのか、標準偏差は大きいのか小さいのかによって、その数字の持つ意味が変わると考えられます。

個人的には、平均値を把握した上で、その方の骨格に合わせたMonsonの湾曲なり、Speeの湾曲に咬合平面を設定するべきではなかろうかと考えています。

2017年7月 5日

hori (10:43)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

下歯槽神経障害の10%が、インプラント埴立後。

2007年、デンマークの口腔外科医のHillerupらは、下歯槽神経障害を主訴として外来を訪れた患者(12か月以上の経過を終えた52名)を検討した論文をInt J Oral Maxillofac Surg に記述しています。

その結果、下顎智歯の抜去後が36症例(69%)、インプラント埴立後が5症例(10%)、局麻注射によるもの5症例(10%)で、圧倒的に智歯抜去後の下歯槽神経障害が多く、そのうち60%で知覚が回復し、21%は不変、19%は悪化の傾向を示したと報告しています。

(日歯生涯研修ライブラリー 下歯槽神経・舌神経の神経障害に対する診査・診断と外科的対応 )

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インプラント治療の偶発症の一つに、神経麻痺があります。

インプラント治療では通常、他の患者さんの治療を並列で行うことはありません。

一方、保険診療での下顎智歯の抜歯は、インプラントよりも難易度判定が難しい場合があるので、治療時間が大幅に延長する結果となる場合があります。

また、保険診療であるがゆえに、十分な時間が取れない場合があります。

例えば、次の患者さんをお待たせしていたり、そもそも並列して他の患者さんの治療をする予定となっている場合です。

下歯槽神経障害の原因として、局所麻酔が10%、下顎智歯抜歯が69%という事実を頭に置き、インプラント治療はもちろんですが、一般歯科治療にも注意深い施術が必要だと感じました。

2017年7月 1日

hori (10:50)

カテゴリ:インプラントと麻酔

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