2016年4月アーカイブ

インプラントでの咀嚼によって得られるメリット

・義歯の不適合により痛みを我慢して、咀嚼機能を充分に果たすことのできない義歯、または義歯不装着になっている人に比べ、インプラント補綴により実現される食物の十分な咀嚼は、以下のような利点が挙げられる。
1. 脳の活性化とリラックス作用
2. 脳の血流量の増加(義歯と比較して)
3. 口腔機能向上による誤嚥性肺炎の予防
4. 転倒による大腿骨骨折などの予防
5. 低アルブミン症などの栄養改善
6. 活性酸素の消去
7. 運動機能の向上
8. 骨粗鬆症の抑制(十分な咀嚼が不適合義歯によってなされないことによる)
9. 老化の防止
10. 運動機能の向上
11. アルツハイマー型認知症などの防止
12. 食物の発がん物質の発がん性の減弱
13. 肥満の抑制
14. 十分な咀嚼を可能とすることから糖尿病の治療効果の向上
15. 大脳皮質の神経活動を活性化する。
16. 免疫機能の増進、唾液分泌を促進させる。
17. 十分な咬合回復ができ、脳の前頭前野の代謝量を増加させ、ワーキングメモリー能力を向上させる。
18. 姿勢制御の増進
などに効果があると考えられる。
ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケア vol.2 )
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インプラントは単純に咬めない状態が咬めるようになるというものではありません。
インプラントが体全体へどのような影響を与えているかといえば、脳への影響、肺炎予防、大腿骨骨折からの寝たきりの予防など挙げればきりがありません。
当院では、治療前後での顔貌や身体の姿勢の変化を記録していますが、インプラント治療や歯列矯正治療で問題のある咬み合わせを改善すると、病的な印象が健康的な印象に変化してくることは少なくありません。
これらもインプラント治療を通して、患者さんの全身の健康レベルの改善に寄与していきたいと考えています。

2016年4月30日

hori (14:13)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

インプラントで誤嚥性肺炎を減らせるか。

・また誤嚥性肺炎も重要です。
75歳以上の老人ホームで、直接死因の1位になっています。
85歳以上となると、一般の人をすべて入れても誤嚥性肺炎が1位です。
8020運動を達成された方は誤嚥することが非常に少ないのです。
というのも舌骨を固定して前上方に持ち上げるには、咬むことが必要なのです。
つまり、咬める歯がないと非常に飲み込みづらい。
総入れ歯を装着している人と、同じく歯がなくて総入れ歯を入れていない人の比較では、総入れ歯を入れているだけでも、3倍誤嚥性肺炎を防げるということが分かっています。
固定式のインプラントであれば、もっと有効になるであろうと思われます。
そういう具体的な健康面以外にも、口元に自信を持つと、女性だと化粧まで変わるくらい、皆さん自信を持つわけです。
つまり、現在、歯がない者にとっては、"咬める"、"健康"、"美容"の3つが兼ね備えられる方法では、インプラントが一番の近道ではないかと思います。
義歯でも確かに咬むことはできるようになりますが、口輪筋の閉鎖がないと、総義歯は維持できないので、普通のスマイルラインは獲得できません。
つまり総義歯では、ストレスなく笑うことができないのです。
ストレスを感じずに笑うだけで、脳の中から、いわゆる快楽物質というのが出ますよね。
あれがいわゆるがん予防などになると言われていますが、動かない、取れないインプラントによってストレスなく笑えることは、健康にもつながるのです。
Quint DENTAL AD chronicle 2016 より)
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総入れ歯を装着している人と、同じく歯がなくて総入れ歯を入れていない人の比較では、総入れ歯を入れているだけでも、3倍誤嚥性肺炎を防げることからも、全く歯がない人がインプラント義歯を装着するようになると、総義歯以上に誤嚥性肺炎は減少するかもしれません。
また、総義歯をうまく使いこなせる人の特徴は、どちらかというと無表情な方が多いように感じます。
これはすなわち、口輪筋の閉鎖が十分にあり、義歯内面に空気を入れないような口腔環境を自然と体得できている方ともいえます。
よくあるケースが、上顎の義歯安定剤を使用されている方には、以下に述べるような特徴があるように感じています。
・下顎前歯が残存している。
・臼歯部の歯肉が薄い。
・咬合力が強い。
・笑顔がステキ。(普通のスマイルラインが獲得されている。)
このようなタイプの方は、インプラント治療をされると満足度が高いと思います。

2016年4月25日

hori (16:20)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

失活歯は咬んでいる感覚が天然歯よりも希薄である。インプラントはそれ以上に希薄である。

・根管充填後はあまり起こり得ないことであるが、術後数年が経過してくると感覚閾値が反対に上昇し、咬んでいるのが分かりにくいという現象が起こる可能性がある。
つまり、咬み応えががないので、より一層咬んでしまう危険性がある。
Randow&Glantzは、根管治療歯と生活歯では咬んだ時の感覚がどれくらい差があるのかを歯に重りをつけて検証したところ、根管治療歯は生活歯に比べて2倍以上の力を加えると初めて咬んでいる感覚が得られたと報告している。
それゆえに、根管治療歯は生活歯に比べて強い力が加わる可能性があり、継時的な変化として垂直的歯根破折を引き起こす可能性が考えられる。
(歯界展望 2016年2月号 )
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失活歯は生活歯よりも弱いとはよく聞きますが、咬んでいる感覚が弱いために、生活歯だったころよりも強く咬んでしまうために、垂直性歯根破折が惹起される可能性があるようです。
そういえば、インプラントは天然歯のおよそ20倍強く咬まないと咬んでいる感覚が得られないという報告を読んだことがあります。
一般にはインプラントと失活歯が嵌合すると、対合する失活歯は歯根破折が生じるリスクが高いそうですが、これも失活歯にしてもインプラントにしても、強く咬んでも強く咬んだ感覚がないことが関与していそうです。
こうして考えると、インプラント上部のセラミックスの破折がトラブルとして少なくないのも当然と言えば当然かもしれません。

2016年4月20日

hori (09:07)

カテゴリ:インプラントと過剰な力

インプラント支持型のサージカルガイドによるインプラント埋入の角度の誤差は8.44度。

・2009年にSchneiderらがまとめたシステマティックレビューによると骨支持型、粘膜支持型、歯牙支持型、インプラント支持型で誤差を比較したところ、骨支持型が最も誤差が大きく、歯牙支持型が最も誤差が少なかったことが報告されている。
インプラント支持型の誤差が比較的大きいのは、無歯顎患者が対象となるケースが多いことが原因していると考えられた。
・各種サージカルガイドタイプ別の誤差
              骨支持   粘膜支持    歯牙支持   インプラント支持
起始点の誤差     1.35ミリ   1.06ミリ     0.84ミリ     0.83ミリ
先端部の誤差     2.06ミリ   1.60ミリ     1.20ミリ     2.17ミリ
角度誤差        6.39度    4.51度      2.82度     8.44度
(参考文献)
Schneider D, Marquardt P, Zwahlen M, Jung RE. A systematic review on the accuracy and the clinical outcome of computer-guided template-based implant dentistry. Clin Oral Implants Res 2009; 20 Suppl 4 :73-86.
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サージカルガイドは、コンピュータや模型上で、使用するインプラントの径や長さ、埋入する方向などを予め決定し、どの方向にどのくらいドリリングするかの目安にできる装置です。
このサージカルガイドは、一見、術者も患者さんも楽に治療が行えるようにも思いますが、いくつかの欠点があります。
問題点として挙げられるのは、誤差が大きくならないように、スリーブとドリルの内径差を小さくするとドリリング時の冷却が困難となり、骨火傷が生じ、インプラントがインテグレーションしないこと。
さらに、サージカルガイド自体の高さがあるために、開口量が十分ではない方の最後方臼歯部では、サージカルガイドを使用できないことが挙げられます。
(最後方臼歯部にもサージカルガイド使用できるように、意図的に短いインプラント体を選択した方がよいのではなかろうか、という議論さえ上がっていますが、本末転倒です。)
また以下にサージカルガイドの個人的見解を記載します。
・歯牙支持タイプの誤差は比較的小さいものですが、中間欠損におけるインプラント埋入の場合、そもそもサージカルガイドが必要がない。
・サージカルガイドを使用した方がインプラント手術を比較的容易に行うことができる可能性がある無歯顎者へのインプラント支持タイプでは、サージカルガイドの角度の誤差が大きい。
・歯槽骨量が十分ではない方が多い日本人で、8.44度もの誤差を容認できる患者さんがどれほどいるのか?と思います。
サージカルガイドも、メーカー主導で、いかにも最先端技術のように謳っていますが、何十年も使用する予定のインプラントで、インプラント埋入の手術時間を少しばかり短縮する意味はそれほど多くはないように感じます。
やはりここでも、『最新は最善とは限らない。』ということになります。

2016年4月15日

hori (10:50)

カテゴリ:サージカルガイドの埋入誤差

根管治療ではストリップパーフォレーション、トランスポーテーションを避けて、インプラント回避。

再根管治療(452歯)の24か月予後をデンタルXエックス線写真で調査した結果、根管の解剖学形態が維持されていない症例では、維持されている症例に比べて結に成功率が低かった。(P<0.0001)
特にトランスポーテーションは治療の失敗に大きく関与した。
1)根管の解剖学的形態が維持されている。   成功(%)
石灰化                           53.1%
アピカルストップ                     76.1%
破折器具                         96.7%
アンダー根充                      100.0%
全体の成功率                      86.1%
2)根管の解剖学的形態が維持されていない。   成功(%)
トランスポーテーション(根尖孔の変位)        35.6%
根尖部の吸収                       71.4%
穿孔                             60.5%
ストリッピング                        28.0%
内部吸収                          71.4%
全体の成功率                       48.3%
(参考文献)
Gorni FG, Gagliani MM. The outcome of endodontic retreatment : a 2-yr follow-up. J Endod. 2004 ; 30 (1) : 1-4.
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根管治療が上手くいかないと理由で、インプラント治療を希望される方がいます。
この文献にもありますが、再根管治療で予後不良なものには、根管の解剖学的形態が維持されていない症例、特にトランスポーテーションとストリップパーフォレーションがあるようです。
エンドの世界では、ニッケルチタンロータリーファイルが普及して久しいですが、ストリップパーフォレーションが起きやすい、くびれた歯根形態のケースでは、根管壁の状態を手指の感覚で感じながら、繊細に仕事を進めるしかないように感じます。

2016年4月10日

hori (17:09)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

適切な根管治療では、歯の強度は低下しない。

Papaらは生活歯から根管治療歯となった場合の水分量の低下は2%以下であったとし、またHelferらは9%の低下を示したと報告している。
すなわち、われわれが思っているほど水分量の喪失はないことが分かる。
そして、Sedgleyらは根管治療歯の力学的変化について、抜歯をされた歯と反対側同名歯である生活歯を対象に調べたところ、硬度試験では根管治療歯の数値的には劣っていたが、すべてのテストで両者に有意差はなかったと述べている。
これらのことから、根管治療を行っても水分量の低下で歯が脆くなったり、歯の強度が低下すると言ったことはなく、安全に治療を行うことができる。
(歯界展望 2016年 2月号 )
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『神経を取ると歯の水分が減少するから弱くなる。』というのは、誰からということなく私も聞いたことがあります。
しかしながら、今回の報告により、抜髄をしても、歯牙の硬度に影響を与えるほどは水分量は減少しないし、弱くもならないということが明らかになりました。
やはり注意しなければならないのは、根管治療が可能な範囲での歯質削除を行い、歯根破折を惹起させないことです。

2016年4月 5日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

Er:YAGレーザーを用いた歯肉縁下歯石除去の有効性

・機械的デブライドメントと比較したEr:YAGレーザーを用いた歯肉縁下歯石除去の有効性
どちらの治療も同時間内で行われた時(2.15±1:00分)、SRP後に根面の93.9±3.7%に歯石がなかった一方で、レーザー照射後の根面の歯石除去率は68.4±14.4%であった。
レーザー照射に手用器具の2倍の処置時間をかけることが許容されれば、根面の83.3±5.7%に歯石を認めなかった。
どちらの治療法の効果も術前のプロービング深さに関係は認められなかった。
組織学的な評価によって、レーザー照射後にセメント質の減少が最小限であった一方で、SRP後は歯根象牙質の73.2%がセメント質を失い、完全に露出していた。
どちらの治療様式も同等に歯周病原細菌を減少させるに至った。
本研究は歯周病罹患歯根面から歯石の除去におけるEr:YAGレーザーの生体内での可能性を明らかにできたが、手用器具で得られる効果には及ばなかった。
(参考文献)
Schwarz F, Sculean A, Berakdar M, Georg T, Reich E, Becker J. J Clin Periodontol 2003; 30(1):26-34.
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Er:YAGレーザーによる歯石除去は、手用器具で得られる効果に及ばないというエビデンスです。
医療器械を販売する業者は、売り文句として、「Er:YAGレーザーは、SRP時にセメント質の減少が最小限です。」というようなことを言いますが、やはりまずは、セメント質を失わわずに手用器具を使えるようスキルアップを図るべきでしょう。
ここでも『最新が必ずしも最善ではない。』ということになります。
インプラント業界でも同様です。

2016年4月 1日

hori (17:02)

カテゴリ:インプラントについて

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