部分入れ歯の支台歯は、非支台歯と比べ、状態が悪化する。

・Zlantaricらの研究では、205例の長期経過報告症例から、部分入れ歯(パーシャルデンチャー)と支台歯(バネがかかる歯)の歯肉縁、歯周炎、ならびに動揺度との関係について検討したものである。
患者は男性80名、女性125名であり、上顎123症例、下顎138症例のパーシャルデンチャーを1年から10年の期間使用していた。
この中で行われた調査は、各患者の支台歯と非支台歯について、プラーク指数、歯肉炎指数、歯石指数、義歯の汚れの程度を示すTarbet指数、ポケットの深さ、歯肉の退縮の程度、動揺度を記録している。
その結果として、プラーク指数、歯肉炎指数、歯石指数、ポケットの深さ、歯肉の退縮の程度、動揺度に関して支台歯、非支台歯
の間に有意差が認められ、支台歯で悪化する傾向が明らかになった(P<0.01)。
これらのことから、パーシャルデンチャーの設計は支台歯に対して影響を有しており、歯頸部歯肉を義歯床で被覆することは影響が大きいため、これを最小限にとどめる様な概形とすること、ならびに可能な限り歯根膜負担とする設計と口腔清掃によって、歯周組織への為害作用を減ずることができるとしている。
(参考文献)
Zlataric DK, Celebic A, Valentic-Peruzovic M. The effect of removable partial dentures on periodontal heath of abutment and nonabutment teeth. J Periodontol 2002 ; 73(2) : 137-144.
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部分入れ歯を使用すると、バネがかかる歯(支台歯)は、バネがかかっていない歯(非支台歯)よりも歯肉炎や歯周炎が悪化したり、歯肉退縮や動揺度の増加も生じやすいとのエビデンスです。
部分入れ歯は、残存歯の犠牲のもとに成り立っている治療法ですので、やはり歯肉に炎症が波及したり、歯が動くようになるのは、ある程度はやむを得ないものと考えられます。
同じように部分入れ歯であっても、自由診療のコーヌスデンチャーは、保険診療内の部分入れ歯より残存歯の予後が安定しているといわれています。
保険の部分入れ歯であるクラスプデンチャーと比較して、歯冠歯根比を改善することが可能となるからです。
しかしながら、このコーヌスデンチャーという入れ歯にも欠点があります。
それは、健全な歯牙であっても、平行性を整えるために大きく歯牙を削合することが必要となります。
(また、日本人でこのコーヌスデンチャーを計画すると、その多くはすべて歯の神経を除去する結果となります。
これはおそらく欧米人に比較して、日本人の歯列不正の程度が大きく、エナメル質の厚みが薄いことが関係しているものと考えられます。)
そのため、現在では、コーヌスデンチャーは特殊な治療の一つになり、インプラントの方が一般的な治療となっています。

2015年2月10日

hori (10:56)

カテゴリ:入れ歯の悩み

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