ヒーリングチャンバータイプのスレッドデザインで、インプラントの初期固定度が上昇。

・一般に、埋入トルク値とインプラント初期固定の間には相関関係があるとされ、埋入トルク値が高ければ初期固定を獲得できると考えられている。
この広く浸透している理論は、インプラントデザインというファクターを除外して考えられたもので、ブローネマルクシステムに代表されるプレスフィットタイプを元に構築された。
・IrinakisとWiebeは、140本のノーベルアクティブインプラント(プレスフィットタイプ)を87名の患者に高トルク埋入した。
このタイプのインプラントは、そのマクロ形状(スレッドデザインおよびバルク形状)から高埋入トルクの発生が報告されているが、彼らの報告でも平均埋入トルク値は50.8Nと非常に高いものであった。
それにもかかわらず、平均13か月後の失敗率はわずか2.1%であり、一般に報告されている失敗率や成功率と差異はなかった。
・Freitasらは、Jimboらもインプラントデザインによっては、埋入トルクが減少しても、インプラント初期固定が低下しないことを示唆し、インプラントデザインファクターの重要性を論述している。
これらの一連の報告はインプラントシステムによって、高埋入トルク=高初期固定ではないことを証明しており、埋入トルク値だけではインプラントの固定度を測れないことを示している。
・implant dipを回避できるスレッドデザインは、初期固定を確実に獲得でき、かつ直接新生骨の添加が可能なものであろう。
すなわち、インプラントー既存骨界面の歪みの発生を抑制できるスレッドデザインが必要であり、ヒーリングチャンバータイプが最適であると言える。
ヒーリングチャンバータイプのインプラントを埋入すると、既存骨との強固な固定をスレッド先端で獲得しつつ、インプラントー既存骨の接触面積の減少が可能で、全体の歪み量の低下に寄与する。
さらに、Berglundhらはスレッドー既存骨間に血餅が貯留することで、インプラント表面への新生骨添加が促進されることを報告している。
このようなスレッドタイプでは埋入トルク値が高ければ初期固定がとれるというプレスフィットタイプで用いた公式に当てはまらない。
そして血餅が充満したチャンバー内は骨吸収を経ることなく、新生骨が添加され、歪みによる海面周囲骨吸収の回避が確認される。
デンタルダイヤモンド 2016年 3月号 )
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当院でもインプラント埋入手術の際には、各インプラントの埋入トルクを記録しています。
一般には埋入トルクが高い方が早く次のステップに入れることが多いですが、例外があります。
骨質が硬すぎるケースです。
骨質が硬すぎると、オーバーヒートが発生し、骨火傷を惹起します。
インプラント埋入手術後に鈍い痛みが続くケースは骨火傷が疑われます。
今回、ノーベルアクティヴ インプラントの失敗率2.1%というのは、硬すぎる骨質に対して、高トルクでインプラントを埋入してしまったことによると考えられます。
このような場合、インプラントホールの径を若干大きめにするか、アンダーサイジングドリルの程度が小さいインプラントシステムを用いるべきだったと思います。
以前、UV照射による光機能化をインプラントに対して行うと、implant stability dipを回避できるという話題がありましたが、それ以外にもスレッドデザインをヒーリングチャンバータイプにするという方法もあることが今回の記事で分かりました。
なお、ヒーリングチャンバータイプは、チャンバー内に歪みは生じないために埋入トルク値は低くなるが、初期固定はスレッド先端部で獲得されるとのことです。

2016年5月10日

hori (16:16)

カテゴリ:インプラントについて

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