ストレスやうつで歯周病は悪化する。

・慢性ストレスおよびうつ病は、免疫系に負の効果を有し、アテローム硬化性心臓疾患、糖尿病および他の全身状態の危険性を高める。
60か国から245404名が参加したWHOによる世界保健調査は、慢性疾患の狭心症、関節炎、ぜんそくや糖尿病と比較して、うつ病が健康を損なう最大のものであるということを発見した。
Warrenらは歯周病における慢性ストレスやうつ病の役割に関する文献をレビューし、ストレスやうつ病は宿主防御と歯周炎に対して感受性の高い患者における歯周感染症の進行を変更することができると結論づけている。
またこの結論は、ストレスやうつ病が創傷治癒を遅延することを示す臨床的および実験的証拠と一致している。
様々な研究で、心理的ストレスの下ではクリニカルアタッチメントロスや歯槽骨喪失を生じやすい傾向があることが示されている。
Gencoらの1426名の成人(25-74歳)を対象とした研究では、経済的なストレスと不適切なスタイルをもつグループはアタッチメントロスを2.24倍、歯槽骨喪失を1.91倍起こしやすいと示している。
(ザ・クインテッセンス 2016年11月号 )
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以前こんな方が来院されました。
残っている歯はぼろぼろで、これまで入れ歯を入れたことがなく、インプラントについて話が聞きたいとのことでした。
たまたまその方は、うつ病で医科の方でも治療を受けており、堀歯科医院でインプラント治療を行うこととなりました。
治療前は、顔つきもどう見ても健康そうには見えない状態でしたが、インプラントで咬めるようになると、別人のように健康な顔つきに変化しました。
治療前後の写真を見比べると、本当に同一人物かと思える程です。
今回、うつ病はグローバルな疾患の主要な原因のうち、第5位の精神障害との報告があり、珍しい疾患ではない状況となってきています。
また、慢性的なストレスやうつ病は、免疫系にマイナスに働き、歯周組織が破壊されやすい傾向にあることも明らかになっています。
私たち歯科医療従事者も、歯や歯茎だけを見るのではなく、患者さんのこれまで生きてきたヒストリーに関心を持ちつつ、その方の体の一部としての歯や歯茎という認識をし、治療に当たらなくてはならないということになるでしょう。
そして、来院される新患の患者さんは、現病歴や既往歴にうつ病とわざわざ書かない方も少なくないので、ある一定の割合で、うつ病になった状態で歯科医院に来院されている方がいることを、頭の隅に置いておく方が良いかもしれません。

2016年12月 5日

hori (08:57)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

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