マイクロスコープ下でのイスムス除去

・イスムスとは歯髄組織を含んだ2根管の間の狭いリボン形態様の交通路と説明される。
イスムスの清掃が困難な理由は、
1.イスムスのサイズにあった鋭利な器具がない。
2.イスムスのある部位の周囲象牙質が菲薄な場合が多い。 など
通常の根管治療における化学的・機械的な手技によって、イスムスに対処することは現時点では現実ではない。
イスムスに対して臨床的に注意するべきことは、非感染根管においては無菌的処置を徹底して感染根管にしないこと、感染根管であれば可及的な拡大と洗浄に留め、過剰な歯質除去を行わないことなどに配慮するべきである。
マイクロスコープ下でイスムスの洗浄と拡大を行ったとされる治療歯の歯根歯質がほとんど喪失してしまっていたり、医原的に穿孔している状況にしばしば遭遇する。
・イスムスの歯種別・部位別における発生頻度
上顎中切歯   0%      下顎中切歯     33.3%
上顎側切歯   2%      下顎側切歯     47.6%
上顎犬歯    5%      下顎犬歯      24%   
上顎第一小臼歯 18.8%     下顎第一小臼歯   18.8%
上顎第二小臼歯 50.5%     下顎第二小臼歯   3%
上顎第一大臼歯 60.8%     下顎第一大臼歯   87.9%
上顎第二大臼歯 46.5%     下顎第二大臼歯   66.3% 
(参考文献)
Estrela,C., et al.: "Frequency of Root Canal Isthmi in Human Permanent Teeth Determined by Cone-beam Computed Tomography." J Endod 41(9): 1535-1539,2015.
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根管治療が容易ではない理由の一つに、イスムスという根管形態があります。
歯科医師は見えない状態から見える状態になれば、患者さんの歯を守れるのではなかろうかと考えました。
(正確には、顕微鏡販売メーカーが、歯科医師の倫理観に訴え、高額な器械をうまいこと売りつけたのかもしれませんが・・・。)
しかしマイクロスコープで根管治療を始めてみたら、イスムスの周囲の菲薄な象牙質を破壊してしまったり、医原的に穿孔させるといった、異なる問題を惹起する結果となってきているようです。
マイクロスコープは視覚的に形態を認知しやすくしてくれますが、歯質の厚みや歯根外側の形態まで教えてくれるわけではないからです。
また、イスムスの形態のタイプも最低でも5種類程度には分類できるようですから、予めイスムスの形態を把握できていない限り、マイクロスコープを使用しようとも、穿孔のリスクはやはりゼロにはできないように思います。
そして、さらに、今回紹介した文献によると、それぞれの歯種にイスムスがこれほどまで多く存在することに個人的には驚かされました。
根管治療は、マイクロスコープが普及し、歯内療法も新しい時代に突入したのは間違いないのでしょうけれど、最新機器で劇的に治療が容易になるわけではなさそうです。

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