クラックトゥース

・クラックトゥース
1964年にCameronは臼歯部の生活歯において象牙質、場合によっては歯髄まで及ぶ不完全破折をクラックトゥースと定義し、クラックトゥースシンドローム(CTS)という用語を初めて使用した。
症候群(シンドローム)とは、通常原因不明ながら共通の病態と様々な症状を示す疾患につけられる名称である。
クラックトゥースの原因は分かっているが、クラックの検知が難しく、様々な症状を呈するためこのような用語が使われるのであろう。
咬頭破折と比較して、破折は中央溝よりで深部に達することが多く、それにより歯髄や根尖周囲組織への影響が出現する場合が多い。
咬頭破折のように修復物が存在する場合、破折は中心に位置しないことが多い。
理由は喉頭内斜面にかかった力は窩洞の線角部分に集中し、破折方向も力の方向と同じ方向に伸びるからである。
修復物が大きければ破折線は破折線は歯髄から離れるため重篤な症状を呈さない場合が多い。
しかし小さい修復物が存在する場合、破折線はより深く歯髄腔に近づき症状も重篤な場合が多い。
また修復物が存在しなければ前述のような破折はより中心に位置する。
(歯牙破折の分類・診査・診断・マネージメント )
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いわゆる"クラックトゥース"により定期的に歯が破壊されてくる方がいます。
単純に詰め物が脱離するのではなく、歯が一部欠けるともに詰め物も脱離するのです。
現代はストレス社会ですから、上下の歯を頻繁に噛みしめた状態でいる方が少なくありません。
そのような方の場合、小さい詰め物が歯牙に押し付けられ続けるわけですから、側方の咬合力を頻繁に受け止めており、かつ金属の周囲で最もエナメル質の厚みが薄い部分にクラックが入るのでしょう。
歯にクラックが入ると、その部分から虫歯が進行し、そこから詰め物を接着しているセメントが溶出し、詰め物の脱離のスピードを速める結果となると考えられます。
また、頻繁に詰め物が脱離している歯では、それとは逆に歯自体は破壊されることは少ないように感じます。
そしてさらに、高齢者などで咬耗の程度が著しい方などで、きれいな天然歯が突然真っ二つに割れる場合も少なくありません。
このようなケースでは、咬耗により上下の歯牙の咬み合わせの接触面積が増大しているので、咬合力が上手く分散できなくなっています。
そのような状態になると、歯牙が負担できる力以上の咬合力が歯の重心に近い部分にかかり、ある日突然、歯が真っ二つに割れてしまうのです。
当院の患者さんでも、インプラント埋入手術の前日に、治療予定のない天然歯が真っ二つに割れてしまい、治療計画を急きょ変更した方がいます。
突然、修復物のない天然歯が、縦に真っ二つに割れたのです。
その方は、歯ぎしり・食いしばりの程度が顕著な方で、割れた歯も歯の溝が完全に失われていました。
その時の経験もあって、私は歯のないところにインプラント治療を行うだけでなく、インプラントを全体の咬み合わせの中でうまく機能させなければならないと考えるようになりました。
追加のインプラントが必要とならないことこそが、インプラント治療の真の成功と考えているからです。

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