何年禁煙すれば、非喫煙者の歯周炎リスクに近づくのか?

10-47年のメンテナンス期間において、喫煙の容量依存効果と禁煙が歯周炎による歯の喪失に及ぼす影響
(主な結果)
患者の平均フォローアップ期間は24.2(10-47.5年)で、年間メンテナンス来院数は平均2.24回であった。
ベースライン時に存在していた6590本の歯(平均25.6本/患者)のうち、歯周炎により失われた歯は264本であり、年間の平均喪失本数は、それぞれ非喫煙者0.03本、元喫煙者0.05本、軽度喫煙者0.08本、重度喫煙者0.11本であった。
また、歯周炎による歯の喪失頻度は非喫煙者で最も低く、重度喫煙者で最も高かった。
(表1)
       歯周炎による抜歯      歯周炎の他の理由による抜歯
1. 非喫煙者    2.5%              4.4%
2. 元喫煙者    4.1%               5.5%
3. 軽度喫煙者   5.6%              4.4%
 (1日10本未満)
4. 重度喫煙者   10.3%              13.7%
 (1日10本以上)
重度喫煙者は、それぞれと比較して非喫煙者の4.38倍、軽度喫煙者の2.74倍、元喫煙者の2.56倍の歯を喪失するリスクを有していた。
また、元喫煙者の中でかつて重度喫煙者であった場合は、軽度喫煙者よりも歯周炎で歯を喪失するリスクが4.89倍高かった。
元喫煙者において「禁煙後の期間」が<15の場合に、非喫煙者と比較して、歯の喪失リスクが有意に高かった。
(表2)歯周炎による歯の喪失と禁煙状況との関連
         喫煙状況   禁煙後の期間(年) 調整オッズ比 95%信頼関係
1. 非喫煙者                      1
2. 元喫煙者  1日10本未満の元喫煙者  >40     0.58    0.18-1.86     
                    31-40     0.26     0.03-2.09
                   16-30      0.52    0.24-1.12
                    <15      3.74    1.50-9.34
       1日10本以上の元喫煙者  >40     1.76     0.54-5.72
                   31-40     1.7     0.38-7.67
                   16-30      1.75    0.64-4.82
                    <15      12.2    4.64-31.90
3. 喫煙者   1日10本未満の喫煙者  該当なし     1.94    0.93-4.05
       1日10本以上の喫煙者  該当なし     4.32    2.63-7.08
(参考文献)
Ravida A, Troiano G, Qazi M, Saleh MHA, Saleh i, Borgnakke WS, Wang HL. Dose-dependent effect of smoking and smoking cessation on periodontitis -related tooth loss during 10-47 years periodontal maintenance-A retrospective study in compliant cohort. J Clin Periodontol 2020 ; 47(9) : 1132-1143.
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元喫煙者において「禁煙後の期間」が<15の場合に、非喫煙者と比較して、歯の喪失リスクが有意に高いことが明らかになりました。
また逆に言うと、喫煙の影響は禁煙してからも15年は続くということになります。

2021年6月 5日

hori (08:45)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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