2018年10月アーカイブ

インプラントのPPDは誤差が大きい場合がある。

・インプラント周囲炎患者を対象に、上部構造の形態がプロービング検査に与える影響を調べた研究では、上部構造除去前後のPPDが一致したのは37%のインプラントに留まり、2?以上の誤差を生じたインプラントが24%もあった。
(参考文献)
Serino G, Turri, Lang NP. Probing at implants with peri-implantitis and its relation to clinical periimplant bone loss. Clin Oral Implants Res. 2013; 24(1)91-95.
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一般的にインプラントの上部構造がオーバーカントゥアになると、PPDを正確に測定することは困難になります。
ならば、診査が精確に行えるようプロービングを挿入しやすい上部構造にすればよいように感じます。
ところが、インプラント埋入部位の頬舌的歯槽骨幅が狭く、近遠心的な歯槽骨幅が広いケースでは、鼓形空隙が広くなりすぎないようにしようとすると、オーバーカントゥアに傾向にあります。
このようなケースは特に若年者の下顎大臼歯部に多いように感じます。
かといって、同部位に2本埋入しようとすると、インプラント間距離が近くなりすぎてしまうという別な問題がでてきます。

2018年10月25日

hori (08:29)

カテゴリ:インプラント周囲炎

BP薬剤は、下顎皮質骨骨密度を大きく上昇させる。

・経口ビスフォスフォネート薬剤が下顎骨に与える影響について
本研究では、骨粗鬆症と診断され、経口BP薬剤を服用している患者に対して、腰椎・大腿骨で用いられているQCT法を下顎骨に応用して、骨密度を皮質骨と海綿骨に分けて三次元的に測定し、経口BP薬剤および服用期間が骨粗鬆症患者の顎骨に与える影響について検討しました。
その結果、顎骨壊死を発症しやすい下顎骨において海綿骨骨密度は、BP薬剤の影響が小さい一方で、皮質骨骨密度は、服用期間によらずBP薬剤の影響によって骨密度が大きく上昇し、長期服用によって皮質骨厚が厚くなること、BP薬剤服用患者のインプラント早期喪失率は高く、インプラント早期喪失患者の皮質骨骨密度が1SD以上有意に高い値を示したことを明らかにしました。
したがって、インプラント治療においては、インプラント埋入手術におけるドリリング時の熱傷による骨壊死と血行不良による骨形成の抑制によって、顎骨壊死のみならず骨結合を含むリスクに関しても、十分なインフォームドコンセントの必要があり、さらにはメインテナンス中にBP薬剤による治療が開始されることがあるため、通常のメンテナンス項目だけでなく、服薬状況の変化についてもきちんと把握することが重要であることが分かりました。
( 日本インプラント学会会誌 Implant News No.27)
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下顎骨に対して、BP薬剤が皮質骨と海綿骨とで異なる影響を与えることが分かりました。
すなわち、海綿骨の骨密度はBP薬剤の影響が小さい一方で、皮質骨は服用期間によらず、骨量・骨質ともに増大すること。
特に皮質骨の骨密度に関しては、1SD以上有意に高い値を示すほどの状態になるので、ドリリング時の熱傷による骨壊死と血行不良による骨形成の抑制によって、骨結合が起きえないリスクがあることが分かりました。

2018年10月20日

hori (08:38)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

顎骨壊死様病変は抗がん剤とビスフォスフォネート製剤の併用投与群にしか起こらない。

・抜歯窩治癒不全の抗軟組織治癒を促進する脂肪組織由来幹細胞移植が骨髄の微小環境に与える影響
血管新生抑制はビスフォスフォネート性関連顎骨壊死の主原因とはならない、と仮説を立て、動物実験により検証を行いました。
その結果、抗がん剤を単独投与したマウスでも抗がん剤とビスフォスフォネート製剤を併用投与したマウスでも血管新生抑制が同程度に起こるが、顎骨壊死様病変は抗がん剤とビスフォスフォネート製剤の併用投与群にしか起こらないことを突き止めました。
さらに、抗VEGFA中和抗体を用いて血管新生を矯正的に抑制したマウスでも顎骨壊死様病変は発生しなかったことから、血管新生抑制は顎骨壊死の主原因とはならないことが強く示唆されました。
( 日本インプラント学会会誌 Implant News No.27 )
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顎骨壊死様病変は抗がん剤とビスフォスフォネート製剤の併用投与群にしか起こらないことが明らかになりました。
BP製剤だけでの投与では、顎骨壊死が生じないということです。
また、矯正的に血管新生を抑制しても、顎骨壊死が発生しなかったことも興味深いです。
今後に期待したいですね。

2018年10月15日

hori (10:04)

カテゴリ:インプラントと骨粗鬆症

無歯顎患者にインプラントをした場合、インプラント周囲炎にはならないのか?

・10年フォローアップ期間における無歯顎患者へのインプラント支持型下顎オーバーデンチャーのインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の発症率

目的:2編の前向き研究のサブ分析の目的は、無歯顎患者への10年間のフォローアップ期間におけるインプラント支持型下顎オーバーデンチャーのインプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の発症率について調べることである。

材料および方法:下顎オーバーデンチャーを支持する2本の骨内インプラントを有している150名の無歯顎患者が2編の前向き研究から抽出された。
臨床的およびX線学的パラメータについてオーバーデンチャー装着後、5および10年で評価された。
インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の発症率はインプラント周囲炎に対するConsensus of Seventh Workshop on Periodontologyに基づいてインプラントおよび患者レベルで算出された。
結果:インプラント周囲粘膜炎の患者レベルの発症率は、5年後評価で51.9%、10年後評価で57.0%であった。
インプラント周囲炎の患者レベルの発症率は、5年後評価で16.9%、10年後評価で29.7%であった。
結論:インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎は無歯顎患者にも発症し、その数は多かった。
(参考文献)
Incidence of peri-implant mucositis and peri-implantitis in edentulous patients with an implant-retained mandibular overdenture during a 10-year follow-up period. Meijer HJ, Raghoebar GM, de Waal YC, Vissink A. J Clin Periodontol 2014 ; 41(12) : 1178-1183.
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10年近く前になりますが、歯周病の歯をすべて抜歯するから、All-on-4はインプラント周囲炎にはならないと以前聞いたことがありました。
しかしながら、後になって、歯牙をすべて抜歯しても、インプラント周囲炎の原因細菌は口腔内に依然として存在するために、All-on-4であってもインプラント周囲炎になるリスクはあるようです。
そしてさらに、歯槽骨に斜めに埋入するAll-on-4は、通常の埋入の場合と比較した場合、清掃性が悪いと考えているので、当院ではAll-on-4は行っておりません。

2018年10月10日

hori (08:11)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

塩化カルシウム水熱処理で、骨芽細胞接着数が向上。

・新規多孔性チタン骨再建材料の開発

塩化カルシウム水熱処理は、チタン表面への骨芽細胞関連タンパク質の吸着を増加させることによって骨芽細胞接着数を向上させ、また上皮細胞接着関連タンパク質の吸着を増加させることで上皮細胞接着を強める処理方法であることが示されました。
一方、塩化カルシウム水熱処理はチタン表面への歯面初期付着細菌の付着を減少させることが示されました。
( 日本インプラント学会会誌 Implant News No.27 )
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塩化カルシウム水熱処理で、骨芽細胞接着数が向上するということは、インプラントの骨結合が速めることができるということになります。
臨床応用はまだかと思いますので、今後に期待したいところです。

2018年10月 5日

hori (08:30)

カテゴリ:インプラントと心疾患

辺縁を歯肉縁下に設定すると歯肉退縮が生じやすい。

・Orkinらは、全423歯のクラウンを355歯の歯肉縁下マージンと68歯の歯肉縁上マージンに分けて調査を行い、プラークインデックス、歯肉出血、辺縁歯肉との退縮度を記録し反対側同名歯の補綴修復されていない天然歯と比較した。
その結果、歯肉縁下マージンの場合、歯肉出血は2.42倍の割合で生じ、歯肉退縮は2.65倍で生じることを報告している。
また、セメント質の露出をともなう上皮付着の根尖方向へ移動という定義で説明される歯肉退縮出現の頻度は、歯肉縁下マージン群で34%、歯肉縁上マージン群でわずか6%であった。
(参考文献)
Orkin DA, Reddy J, Bradhaw D. The relationship of the position of crown margins to gingival health. J Prosthet Dent 1987 ; 57(4) : 421-442.
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学生時代、歯肉縁下0.5ミリは不潔な領域ではないので、クラウンの辺縁の位置は歯肉縁下0.5ミリと習いました。
今回紹介する文献で、クラウンの辺縁が歯肉縁下の場合、縁上の場合と比較して、歯肉出血は2.42倍の割合で生じ、歯肉退縮は2.65倍で生じるといういわば当たり前の結果が明らかになりました。
20年前の自由診療の補綴物といえばメタルボンドで、歯肉が退縮すると急激に審美性が低下したこともあって、クラウンの辺縁は歯肉縁下に設定した側面もあったと思います。
現在は歯肉縁上でオールセラミックスの方が審美的かもしれません。

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