2018年9月アーカイブ

SPTを続けていても、歯の喪失は起こる。

・この研究は、過去の多くの論文が示したように、SPTを長期間続けた場合の臨床パラメータの安定性をさらに裏付けています。
他方、SPTを継続したにもかかわらず、歯の喪失は起こっています。
そして、それはおもに大臼歯に生じていました。
この研究では、プラークスコアや根分岐部の詳細な状態が示されていませんが、おそらくブラッシングの到達性が低いことや根分岐部病変に絡んだ事項が大臼歯の予後に影響していると考えられます。
したがって、SPTには、とくに大臼歯の口腔衛生は徹底すべきでしょう。
また、治療計画の立案時における予後判定や治療の適応症にも注意を払う必要があります。
また、10年間フォローアップを続けた患者が9.3%という数字に注目してください。
SPTの重要性については十分なエビデンスがあり、またSPTを継続しなかった場合に歯周炎の再発が極めて生じやすくなることも知られています。
現状では、専門施設であっても9割以上の患者がSPTを継続できていない場合があるということです。
(DHstyle 2018年8月号 )
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専門施設であっても9割以上の患者がSPTを継続できていないこと。
SPTを続けていても、歯の喪失は起こっており、その大部分は大臼歯であることが分かりました。

インプラント治療で低栄養を改善!

・義歯を含めた全歯列の最大咬合力を用いて、咬合力と栄養摂取との関連を調査した報告では、70歳群(69-71歳)の対象者を、咬合力により低位群、中位群、高位群と分けて食品群と栄養素の摂取量を比較しました。

食品群では、緑黄色野菜とその他の野菜の摂取量は、咬合力高位群が低位群に比べて有意に多く、穀類は摂取量が少ない傾向(有意差なし)というものでした。

この結果、栄養素では、ビタミンA・C・Eや食物繊維の摂取量が高位群において低位群よりも有意に多かったと報告されています。
他にも多くの報告がありますが、概ね以下のようにまとめられます。
すなわち、咀嚼力が低下すると緑黄色野菜を含む野菜類や魚介・肉などの咬みにくい食品群を避けるようなる一方で、穀物などの咬みやすい食品の摂取が増えます。
この結果、ビタミン類、食物繊維、ミネラル類やタンパク質の摂取が減少し、炭水化物の摂取が増加するというものです。
(参考文献)
Significanse of occlusal force for dietary fibre and vitamin intakes in independently living 70-year-old Japanese : from Sonic Study. Inomata C, et al. J Dent2014; 42(5):556-564.
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咬合力の低位群と高位群とを比較した結果、低位群では、ビタミン類、食物繊維、ミネラル類やタンパク質の摂取が減少し、炭水化物の摂取が増加するということが明らかになりました。
これはすなわち、咬合再構成を行う前後で、低栄養状態が改善されるために、患者さんがインプラント治療によって真の健康を手にすることが可能となるということになります。

2018年9月20日

hori (11:18)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

インプラントを義歯の直接支台として使う場合

・天然歯に側方力が加わると、回転中心は歯根の根尖側1/3となるのに対して、インプラントではプラットフォーム周囲の骨が回転中心となる。
そのため、インプラントでは天然歯よりも大きな力が頸部インプラントに周囲骨に加わる。
Eomらは有限要素法による検討を行っており、3歯の上顎遊離端欠損の直接支台がインプラントの場合では、天然歯である場合に比べて皮質骨に約10倍の応力が加わっていることを報告している。
(参考文献)
Eom JW, et al. Three-dimentional finite element analysis of implant-assisted removable partial dentures. J Prosthet Dent. 2017; 117(6): 543-742.
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過大な咬合力で歯を喪失した患者さんには、インプラントを3歯の遊離端欠損の直接支台として使用するのはリスクがあるということになります。
また粘膜の厚みや歯槽骨の質の違いからも下顎よりも上顎の方がリスクが高い可能性が窺えます。

2018年9月15日

hori (08:59)

カテゴリ:入れ歯の悩み

インプラント埋入直後の上顎洞炎

・CBCTを用いて、上顎臼歯の根尖と上顎洞までの距離を計測した研究では、第一小臼歯の頬側根は7.08ミリ、第二小臼歯の口蓋根は2.16ミリ、第一大臼歯の近心頬側根は2.71ミリであったのに対し、第二大臼歯の近心頬側根が最も近接しており、0.66ミリであったと報告されている。
(参考文献)
Lavasani SA, Tyler C, Roach SH, McClanahan SB, Bowles WR : Cone-beam computed tomography: anatomic analysis of maxillary posterior teeth-impact on endodontic microsurgery. J Endod, 42(6) : 890-895, 2016.
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インプラント埋入直後に上顎洞炎になる場合、インプラント埋入前から上顎洞炎であるケースが多いと聞きます。
また、その上顎洞炎は、隣在歯の根尖性歯周炎であることが多いとも聞きます。
インプラント治療が上手になるためにも、歯内療法についても長けていないとならないということになります。

2018年9月10日

hori (10:18)

カテゴリ:インプラント周囲炎

現在歯数と栄養素摂取の関係

・日本歯科医師会会員の現在歯数と栄養素摂取の関係
日本歯科医師会会員約2万名の健康調査の一部を、現在歯数0本の栄養素摂取量を100%としてグラフ化したところ、現在歯数が減少するにつれて、カルシウムおよびカロテン、ビタミンCの摂取が少なくなり、逆に炭水化物の摂取が多くなっている。
現在歯数が0本の歯科医師のタンパク質摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のタンパク質摂取量は101.8%。
現在歯数が0本の歯科医師の炭水化物摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の炭水化物摂取量は96.3%。
現在歯数が0本の歯科医師の歯質摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の脂質摂取量は104.6%。
現在歯数が0本の歯科医師のカルシウム摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のカルシウム摂取量は108.6%。
現在歯数が0本の歯科医師のカロテン摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のカロテン摂取量は119.5%。
現在歯数が0本の歯科医師のビタミンC摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のビタミンC摂取量は111.1%。
現在歯数が0本の歯科医師の食物繊維摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の食物繊維摂取量は104.2%。
(参考文献)
歯の保有状況と食品群・栄養素の摂取量との関連(その1) 平成17年国民生活基礎調査とリンケージした国民・栄養調査データによる解析. 厚生労働省科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病)口腔機能に応じた保健指導と肥満抑制やメタボリックシンドローム改善との関係についての研究(研究者代表:安藤雄一)安藤雄一ほか. 平成23年度総括・分担研究報告書. 2012; (5) : 556-564.
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口腔の専門家である歯科医師でも、現在歯数が少なければ栄養バランスが偏ることを示したエビデンスです。
食品群では、歯数が減少するにつれて、牛乳・乳製品と、緑黄色野菜を含む野菜類など多くの食品群で摂取量が減る一方で、米や菓子類の摂取量が増えています。
この結果、カルシウム、カロテン、ビタミンCの摂取が少なくなり、逆に炭水化物の摂取が多くなっています。
歯科医師であっても、現在歯数が少ないことと食事や栄養の偏りには関係があることが示されているのです。

2018年9月 5日

hori (09:02)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

インプラントが入っている患者さんへのフッ化物応用は?

・インプラントが入っている患者さんへのフッ化物応用は?
家庭で使うフッ化物配合歯磨剤に関しては、口腔内のチタンを腐食するエビデンスは存在しておらず、天然歯を有する人であれば利用した方がメリットが大きいことが学会からの見解として見出されており、詳細がレビュー論文にまとめられています。
その理由は表1のとおりで、フッ化物配合歯磨剤の理由を中止する利益はなく、中止による齲蝕リスクの増加が懸念されるとされています。
表1 インプラント治療患者へフッ化物配合歯磨剤への利用を勧めるべき理由
1. pH4.7以下の強い酸性の環境では、フッ化物配合歯磨剤によりチタンが侵襲されうるが、中性、アルカリ性または弱酸性のフッ化物配合歯磨剤を利用する場合、侵襲の可能性は極めて低い。
2. 歯磨剤を利用しないブラッシングでもチタン表面を侵襲されていた。
歯磨剤を利用するブラッシングでフッ化物の有無による侵襲の程度に差はない。
3. チタン表面の侵襲の有無で、細菌の付着に差はなかった。
フッ化物の利用により細菌の付着が抑制された報告も存在した。
4. 実際の口腔内では唾液の希釈作用でフッ化物濃度は低下するため侵襲の可能性は低い。
5. フッ化物配合歯磨剤の利用により細菌の酸産生能が抑制されるため、チタンが侵襲されるpHにはなりにくくなく。
6. 酸性の飲食物によるpHの低下は短時間で回復したことが分かった。
(参考文献)
フッ化物配合歯磨剤はチタン製インプラント利用者のインプラント周囲炎のリスクとなるか : 文献レビュー. 口腔衛生会誌 2016(3): 308-315. 相田潤.
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これまでインプラントに対するフッ化物の使用の是非については、明言を避けた報告が多かったと感じていました。
そんな中、今回の報告で、pHが4.7以下の強い酸性のものでなければ、口腔内にインプラントがあってもフッ化物配合歯磨剤を使用して問題ないことが分かりました。
因みに当院で使用しているフッ化ナトリウムはpH3.5ということで、浸漬3日でチタンインプラントは腐食するとのことでした。

2018年9月 1日

hori (08:45)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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