2018年8月アーカイブ

ソーセージテクニック

・筆者はすべての喫煙者に対して、手術の3か月前から禁煙を行うように指導し、最低でも移植部位の初期の治癒期間である最短3週間は禁煙プログラムを継続するようにしている。
・筆者は3か月間喫煙しなかった患者は、治療期間を通じて喫煙を再開することはないことも見出している。
・アモキシシリンは最良の選択である。
手術の1時間前に2gのアモキシシリンを経口投与し、500ミリグラムを1日3回、手術後1週間投与することが推奨される。
大規模な骨移植をした場合は、この処方期間は10日間に延長することもある。
・外科手術のあと24時間経過するまで、患者にはうがいをさせないようにする。
外科手術の翌々日から患者に1日2回のクロルヘキシジンによる含嗽を開始させる。
含嗽は10日間行う。
・単純結節縫合は術後10-14日、マットレス縫合は2-3週間で抜糸する。
(垂直的および水平的歯槽堤増大術 )
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ソーセージテクニックで有名なDr.Istvan Urbanの書籍からの抜粋です。
禁煙プログラム、投薬、含嗽や縫合についての具体的な方法が明記されていました。
難しい手術であればあるほど、このような基本的部分が結果を左右する可能性があります。
今一度自分の臨床を顧みたいと考えました。

2018年8月25日

hori (11:23)

カテゴリ:インプラントと喫煙

根尖と下顎管が交通している割合は、若い女性に多い。

・Burkleinらは、CBCTを用いて下顎臼歯根尖と下顎管の距離(両者が交通している場合)を調査したところ、それぞれ第二小臼歯では4.2?(3.2%)、第一大臼歯では4.9?(2.9%)、第二大臼歯では3.1?(15.2%)であり、第三大臼歯を除いては第二大臼歯が最も下顎管に近接していたと報告している。
特に、根尖と下顎管が交通している割合は、女性が男性の2倍で、高齢者と比較して35歳以下に多かったという。
(参考文献)
Burklein S, Grund C, Schafer E, Bowles WR : Relationship between root apices and the mandibular canal: a cone-beam computed tomographic analysis in a german poplation. J Endod, 41 (10) : 1696-1700,2015.
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この報告により、若い女性の下顎第二大臼歯に対して根管治療を行う場合は、特に下顎管との位置関係への配慮が必要であることが分かりました。

根管治療の予後判定は術後4年が目安。

・根管治療の予後判定は、一般的には術後4年が一つの観察期間の目安とされており、これを超えても治癒曲線はあまり変化しない。
従って以前の治療が4年未満に行われたもので、治療後、特に臨床症状の発現もないのであれば治癒中の病変という可能性も否定できないため、経過観察と判断してもよい。
(参考文献)
Ng YL, Mann V, Rahbaran S, Lewsey J, Gulabivala K : Outcome of primary root canal treatment: systematic review of the literature- part 1. Effects of study characteristics on probability of success. Int Endod J, 40 (12) : 921-939,2007.
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根管充填後に根尖部にエックス線透過像が存在しているからといっても、治癒過程で透過像がみられる場合もあるので、術後4年間は経過観察してもよいというエビデンスです。
思ったよりも長い印象を持ちました。

セメント質の厚みによりSRPの仕方を変えるべきか。

最近の研究によると、「細菌由来の内毒素は、歯周病罹患歯のセメント質表層に存在し、深くは浸透していないため、セメント質はできる限り除去するべきではない」と報告されています。
除去すべきセメント質表層というのは、20-30μmの厚さです。
では、良く研磨された手用キュレットを使用した場合、1回のストロークでセメント質はどれくらい厚さが削れるのでしょうか?
個人差もありますが、1回のルートプレーニングで約5-30μm削れます。
一方、セメント質は部位によって厚みが変わってきます。
歯頸部2/3は約20-50μmですが、根尖部1/3では150-200μmあります。
歯頸部に近い部分、つまり浅いポケットの部位をSRPする場合、仮に1ストロークで10μm削れると考えると、キュレットで2-5回ストロークすればセメント質はなくなってしまいます。
特に浮腫性の歯肉はSRPによる退縮が大きいため、オーバーデブライドメントにより知覚過敏が起こりやすくなります。
またポケットが浅い場合ではSRPで歯石が取れる確率は高いことなども考慮すると、過剰なSRPは不要といえるでしょう。
それに対して、根尖部1/3のセメント質は、歯頸部と比較すると比較的厚みがあります。
深いポケットでは歯石が取りにくい一方で、セメント質が厚く歯肉退縮による知覚過敏の影響を受けにくいことから、こちらはアンダーデブライドメントにならないような注意が必要です。
(デンタルハイジーン 2018年8月号 )
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歯頸部2/3と根尖部1/3でセメント質の厚みが異なるために、歯頸部2/3ではオーバーデブライドメントが、根尖部1/3ではアンダーデブライドメントが起こりやすいことが分かりました。
ただ、根尖部1/3まで骨吸収があるようなケースは、水平的骨欠損では、歯冠歯根比が不良なので抜歯も視野に入るかもしれません。
ちなみに、下顎第一大臼歯の平均的歯冠長が頬側で6.87ミリ、歯根長が13.68ミリです。
これを元に考えると、根尖部1/3まで歯槽骨吸収が進行した場合、歯冠-歯根比は15.99ミリ:4.56ミリですから、3.5:1となります。
水平的骨吸収なら、単冠で前後の歯があるなら、保存可能かもしれませんが、ブリッジの支台歯では保存は厳しいかもしれません。

発音による咬合高径決定法

・発音は咬合高径決定に有効であるとされ、参考とされる発音はS音である。
S音だけでは判断が難しいため、mississippiやyes等の単語で繰り返し発音してもらう。
上顎切歯の間に約1ミリのスペースがないと舌は空気のコントロールができず、舌足らずの発音となる。
このS音を発音するとき、切歯をedge to edgeで発音する人は70%、最大嵌合位で発音する人は30%というデータがある。
ただし、Angle2級、3級の咬合の患者ではICPでS音を発音することはまれではないという。
Angle2級、3級の患者が比較的多い傾向の日本人では、欧米の30%より多い可能性がある。
例えば、プロビジョナルレストレーションで咬合高径を拳上している患者で、S音(日本語では「さしすせそ」)の発音障害が生じた場合を例にしてみる。
edge to edgeでS音を発音するタイプの人の調整は煩雑であり、困難である。
拳上した咬合高径を戻すか、拳上量を少なく調整する。
または発音障害に適応できるかどうか長期間で観察する、などのプログラミングが達成され、その咬合高径の後戻りあるいは神経筋機構のリプログラミングが達成され、その咬合高径で適応が可能かどうかを6か月程度かけて経過をみる。
その期間の観察と咬合調整には、臼歯のオクルーザルコンタクトのチェックと特定の歯にフレミタスが出ていないかを調べる。
上下切歯の接触は、咬合紙に抵抗がありながらも、抜けている程度を目安として調整する。
なお、発音体系が英語などと異なる日本語では、このような問題の出現は稀かも知れない。
(参考文献)
Frank Spear. Spear perspective. The art scaience of exceptional esthetic dentistry. Dr Frank Spear Course &Seminars.
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インプラントを用いた咬合再構成では、咬み合わせを復元する過程で、咬み合わせの高さを拳上する場合があります。
歯を復元する際に上下的な距離が不足するようなケースに対してです。
その高さで咬み合わせを復元して問題がないか確認するために、S音等のスムースな発音の可否が役立つということになります。
また、インプラントは通常、上顎であれば口蓋側に、下顎であれば舌側に埋入することが多いですが、それはすなわち、いわゆる"舌の部屋"を狭くする行為になります。
舌の部屋が狭いと舌は咽頭を塞ぐ方向に、ニュートラルな位置を後方に位置取ることが多いように感じますが、まれにその狭い状態に身体が拒否反応を示す場合もあるように感じます。
患者さんにはその狭い状態になれる場合がほとんどですが、時間をかけて患者さんサイドもその状態に慣れる努力をするとともに、発音練習を行うことも必要になるでしょう。

2018年8月 5日

hori (14:42)

カテゴリ:インプラントと発音

ジルコニアインプラントの予知性は、現在のところ疑問がある結果。

・上下無歯顎者24人にインプラントオーバーデンチャー(以下、IOD)の固定源としてジルコニアグループとチタングループを12名ずつランダムに振り分け、1年間の臨床評価をしている。
生存率が下顎でチタン95.8%、ジルコニア90.9%、上顎でチタン71.9%、ジルコニア55%であった。
また、ジルコニアの予知性に疑問のある結果を示している。
(ザ・クリニカル クエスチョン )
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これも最新が最善とは限らないという一例ですね。
今後に期待したいところです。

2018年8月 1日

hori (08:59)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

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