2017年9月アーカイブ

ラテックスフルーツ症候群

・ラテックスアレルギーを持っている人は、キウイ、アボガド、クリ、バナナなどを食べるとアレルギー反応を起こしてしまう場合があり、これをラテックスフルーツ症候群と呼びます。
・ラテックスと交差反応性のある果物
アボガド、クリ、キウイ、パパイヤ、パッションフルーツ、イチジク、メロン、マンゴーパイナップル、モモ、トマト
ラテックスアレルギー患者の約5割が、これらに対して過敏反応(アナフィラキシー、喘鳴、じんましん、口腔アレルギー症候群)を有することが報告されている。
(歯科衛生士 2017年1月号 )
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患者さんで果物アレルギーを有する方には遭遇したことはありませんが、どのくらいの頻度なのでしょうか。
それにしても、フルーツでアレルギー反応を示すなんて、あまりに気の毒ですね。

2017年9月25日

hori (08:45)

カテゴリ:コラム

日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じ。

・非常に毒性の強い遺伝子型(クローン)のA.a.菌は、限局性侵襲性歯周炎の8歳男児から検出され、A.a.菌JP2クローンと名付けられた。
その研究で、JP2クローンの感染者は侵襲性歯周炎を発症している率が明らかに高いこと、また経年的にアタッチメントロスが増加することが報告され、JP2クローンこそが侵襲性歯周炎発症の原因菌と考えられました。
・実はJP2クローンはすべての地域には拡散していませんでした。
白人やアジア人が住む地域地域での検出は限られており、特にアジアにはアフリカを中心に行われた奴隷貿易によって世界に拡散したと推測されており、これがアジアに伝播しなかった理由と思われます。
つまり、アジアでの侵襲性歯周炎はJP2クローンによるものではないということです。
実際、日本におけるJP2クローンの検出報告はこれまでありません。
ちなみに、筆者もA.a.菌が検出された日本人800人のプラークを調べましたが、JP2クローンはまったく見つかりませんでした。
日本人における侵襲性歯周炎の細菌学的な特徴が、諸外国と違うことは明らかです。
・これまでに、国内の3つの研究機関(東京医科歯科大学、九州大学、東京歯科大学)から侵襲性歯周炎患者のプラーク細菌の報告がなされました。
いずれの報告でも侵襲性歯周炎患者からのA.a菌検出率は予想されたものよりもずいぶん低いものでした。
これでは、日本人の侵襲性歯周炎にA.a菌が関与しているとは言えません。
一方、代表的な歯周病菌でレッドコンプレックスと呼ばれるP.g.菌、T.forsythia菌、T.denticola菌の検出率は慢性歯周炎患者からの検出率に匹敵するものでした。
東京医科歯科大学によるデータでは、侵襲性歯周炎患者からのA.a菌の検出率は20%以下であるのに比べて、P.g.菌、T.f.菌、T.d.菌の検出率は広汎性慢性歯周炎と同等でした。
また、A.a.菌の量の増加と侵襲性歯周炎の進行状態にはまったく相関はありませんでした。
さらに、九州大学の報告では、P.g.菌の2型線毛をもつクローンが侵襲性歯周炎患者に多く検出されたそうです(このP.g.菌クローンは慢性歯周炎の悪化に関する菌です)。
ということは、日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じということです。
(歯科衛生士 2017年1月号 )
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JP2クローンこそが侵襲性歯周炎発症の原因菌と考えられること、日本におけるJP2クローンの検出報告はこれまでないこと、日本人の侵襲性歯周炎の原因菌は慢性歯周炎の原因と同じということなどが明らかになりました。
日本人の侵襲性歯周炎に対しては、慢性歯周炎と原因が同じであるということは、慢性歯周炎への対処法と大きくは変わらなく、侵襲性歯周炎の効果的な治療も今のところないということになります。

薬剤耐性による死亡者数は、2050年までにがん死亡者数を超える?!

・薬剤耐性対策を行わなければ、薬剤耐性に起因する死亡者数は増大し、2050年までに全世界で1000万人の死亡が想定されている(2013年は70万人)。
これは、近年のがんによる死亡者数である820万人を超えるといわれている。
(参考文献)
厚生労働省健康局. 薬剤耐性(AMR)に関する背景. 国際社会の動向及び我が国における対応の現状について. 
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日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡するという時代に、何ともショッキングな厚労省の予測です。
私たち歯科医療従事者は、歯周病やインプラント周囲炎を、抗菌薬を使用せずに治すように努め、生死にかかわるような場面で効果的に抗菌薬を使用するべきであると考えています。

2017年9月15日

hori (09:08)

カテゴリ:インプラント周囲炎

インプラント周囲炎の新治療薬 HYBENXとは?!

・バイオフィルム除菌アプローチによるインプラント周囲炎の非外科的治療:ケースレポートスタディ
本予備研究の目的は、バイオフィルム除菌アプローチがインプラント周囲炎の治療に与える影響を示すことにある。
インプラント周囲炎の臨床症例が、水酸化ベンゼンスルホン酸と水酸化メトキシベンゼンスルホン酸ならびに硫酸の高濃度水性混合液を含む口腔組織除菌材料により治療された。
この材料は非外科的に麻酔なしでインプラント周囲のポケット内部に投与された。
どの症例においても器具は使用せず、全身的にも局所的にも抗菌薬は使用しなかった。
材料が投与された時の痛み/不快感を記録するために全患者に対して質問票が使用された。
感染は患者が十分耐えられるもので、2-3秒で消失した。
バイオフィルム除菌アプローチは、インプラント周囲炎の治療に対して非常に見込みのあるテクニックである可能性が考えられた。
本材料の局所投与は、局所的または全身的な抗菌薬の投与を回避できる。
・スルホン酸/硫酸溶液(HYBENX, EPIEN Medical)は、スルホン酸/硫酸の高濃度混合液からなり、水への親和性がきわめて高いために接触性の乾燥材にみられる特徴を有している。
・このような急速な症状の緩和により、インプラント表面の乾燥を急速に起こすこのテクニックは、インプラント周囲炎の治療において特に有効かつ適応となると考えるに至った。
しかしながら、すべてを評価するためには、ランダム化比較対照試験をさらに行うに値すると思われる。
しかしながら、インプラント表面の細菌性バイオフィルムを除去する目的でこの材料を局所投与することにおけるもっとも重要な点は、全身的または局所的な抗菌薬の投与を行わないことである。
インプラント周囲炎の治療に抗菌薬の投与を使用しないことは、細菌性感染の治療にとって非常に大きな前進であるといえる。
局所的な抗菌薬の乱用は患者にとって生命の危機を与えかねない耐性菌の出現につながることはよく知られた事実である。
(参考文献)
Nonsurgical Treatment of Peri-omplantitis Using the Biofilm Decontamination Approach : A case Report Study. Giovanpaolo Pini-Prato, Cristina Magnani, Roberto Rotundo, J Periodontics Restorative Dent 2016;36:383-391. 11607/prd . 2653.
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これまでインプラント周囲炎の治療に抗菌薬の投与は不確実であるために、炎症部位を外科に除去する方法が良いとされてきました。
しかしながら、インプラント表面の除菌を行うフラップ手術と抗菌薬の全身投与では、症例のわずか58%に効果があるに過ぎないというデータもあるように、従来の方法も不確実であると言わざるを得ない状態でした。
そんな中、スルホン酸/硫酸溶液(HYBENX)という、水への親和性がきわめて高いために接触性の乾燥材にみられる特徴を有する薬液により、抗菌薬のように耐性菌の出現を心配することなく、インプラント周囲炎の治療を行うことが可能となりました。
ただ、まだエビデンス的には十分といえないとのことなので、スルホン酸/硫酸溶液(HYBENX)に関する今後の研究報告を待ちたいと考えています。

2017年9月10日

hori (09:17)

カテゴリ:インプラント周囲炎

歯根破折予防のためにも、まずは確実な歯頸部修復を!

歯頸部修復の臨床成績:メタアナリシス
目的:コンポジットレジンとグラスアイオノマーを用いた歯頸部の脱落と辺縁着色に影響を与える要因を評価するために、メタアナリシシスを実施した。
方法:観察期間がすくなくても18か月の歯頸部修復についての臨床試験を抽出した。
結果:接着システム40種を含む50臨床試験が包括基準と一致した。
平均して歯頸部修復の10%が脱離し、24%は3年後に辺縁着色を示した。
ばらつきは、脱離に対しては0-50%、辺縁着色については0-74%の範囲であった。
二次齲蝕はほとんど見られなかった。
研究および実験の影響を加味した線形混合モデルを使用した場合、接着剤/修復材料の種類が最も重要な影響を及ぼし、2ステップセルフエッチ接着システムが最も高い性能を示し、1ステップセルフエッチ接着システムが最も低い性能であった。
3ステップエッチアンドリンスシステム、グラスアイオノマー/レジンモディファイドグラスアイオノマー、2ステップエッチアンドリンスシステム、コンポマーはその間の性能であった。
象牙質/エナメル質が切削/粗面化された修復は、未処理歯質の修復よりも統計学的に有意に高い保持率を示した(p<0.05)。
エナメル質のべベルおよび防湿の種類(ラバーダム/ロールコットン)は有意な影響を及ぼさなかった。
結論:歯頸部修復の臨床成績は、使用される接着システムの種類および/またはそのシステムが採用している接着材、象牙質/エナメル質形成の有無によって有意な影響を受ける。
1ステップセルフエッチシステムおよびグラスアイオノマーよりも2ステップセルフエッチおよび3ステップエッチアンドリンスシステムを選択するべきである。
象牙質およびエナメル質表面は、修復前に粗面化するべきであろう。
(参考文献)
Heintze SD, et al. Dent Mater 2010;(10):993-1000.
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高齢者の歯牙を失うきっかけの一つになるのが、歯頸部からの歯冠破折・歯根破折かと思います。
とはいっても、いきなり歯根破折を起こすわけではありません。
最初は、若干の歯根露出あるいは歯頸部のエナメル質の破折による知覚過敏から始まります。
次に、神経に近い部位まで楔状に歯牙が歯頸部からえぐれていきます。
このステージでは、必ずしも知覚過敏がないケースも少なくありません。
さらにその先のステージでは、根面齲蝕が問題となってきます。
通常の歯冠部の齲蝕では、仮にう蝕ができても、齲蝕と神経との間に距離があることが多いので問題は深刻ではありません。
一方、根面齲蝕では、齲蝕ができた場合、神経からの距離が近いために、容易に根管内まで感染します。
また、齲蝕部分を除去してレジン充填を行っても、レジンが脱離しやすいのが一つ目の問題点です。
そしてもう一つの問題点は、充填したレジンが脱離した場合、歯牙の深い部位から再度齲蝕が進行するために、トータルの齲蝕の大きさはかなりのものとなります。
こうして考えると、根面齲蝕を進行させないように予防処置を行うことはもちろんですが、いかに脱離しないようなレジン充填を行うかということと、どの時点で補綴治療に切り替えるかという勘どころが重要になってくるように考えています。
根面齲蝕からの歯根破折→インプラントの流れを断つためには、今回紹介したような歯頸部の修復処置をいかに確実に行うかということが大切になってきます。
そのための具体的対応としては、2ステップセルフエッチおよび3ステップエッチアンドリンスシステムを選択するだけでなく、象牙質およびエナメル質表面は、修復前に粗面化するべきだという結論になっています。
1ステップセルフエッチシステムは、他のものよりも接着力が劣るとする論文は少なくないのですが、なぜかメーカーが添付してくるデータでは、『1ステップは2ステップに劣らない。』という結論になっていることが多いのが気になります。
歯科学は材料とともに進化していますが、メーカーに振り回されないように前進したいものです。

GBR併用のインプラント手術は、インプラント周囲炎のリスクが高まる。

・GBRによる骨欠損回復の成否がインプラント周囲炎の発症に大きく関与する。
インプラント周囲粘膜炎(62.5%)、インプラント周囲炎(37.5%)
1ミリ以上(平均3.6±1.5ミリ)の骨欠損にGBRを適応→BOP検出率が有意に高い。
・特に狭小な骨に対する埋入の場合、頬側のスレッド露出が生じやすくGBRの適応となりやすいが、失敗した場合、歯周炎と異なり、近遠心の骨が保たれていることから歯肉退縮することはまれで、仮性ポケットとなり、上部構造装着直後からインプラント周囲炎のリスクを抱える結果となる。
(参考文献)
Schwarz, et al: Impact of the outcome of GBR in dehisience-type defects on the long-term stability of peri-implant health : clinical observations at 4 years. Clin Oral Impl Res, 23(2) : 191-196,2011.
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今回の報告により、GBR併用のインプラント手術は、インプラント周囲炎のリスクが高まることが明らかになりました。
これは、GBRが失敗していても、歯槽骨とインプラントは骨結合するので、機能的にはひとまず咬める状態になるということになるわけです。
しかしながら、上部構造装着直後からBOP検出率が有意に高いわけですから、1ミリ以上の骨欠損、すなわちほぼすべてのGBR併用のインプラント手術では、GBRが上手くいっていないケースが多いということになります。
そうなると、十分に歯槽骨の上端を平坦にしたうえで、インプラント埋入を行うべきであり、使用するインプラントも径の細いものが適応になる場合が多いということになります。

2017年9月 1日

hori (09:00)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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