インプラント周囲炎の新治療薬 HYBENXとは?!

・バイオフィルム除菌アプローチによるインプラント周囲炎の非外科的治療:ケースレポートスタディ
本予備研究の目的は、バイオフィルム除菌アプローチがインプラント周囲炎の治療に与える影響を示すことにある。
インプラント周囲炎の臨床症例が、水酸化ベンゼンスルホン酸と水酸化メトキシベンゼンスルホン酸ならびに硫酸の高濃度水性混合液を含む口腔組織除菌材料により治療された。
この材料は非外科的に麻酔なしでインプラント周囲のポケット内部に投与された。
どの症例においても器具は使用せず、全身的にも局所的にも抗菌薬は使用しなかった。
材料が投与された時の痛み/不快感を記録するために全患者に対して質問票が使用された。
感染は患者が十分耐えられるもので、2-3秒で消失した。
バイオフィルム除菌アプローチは、インプラント周囲炎の治療に対して非常に見込みのあるテクニックである可能性が考えられた。
本材料の局所投与は、局所的または全身的な抗菌薬の投与を回避できる。
・スルホン酸/硫酸溶液(HYBENX, EPIEN Medical)は、スルホン酸/硫酸の高濃度混合液からなり、水への親和性がきわめて高いために接触性の乾燥材にみられる特徴を有している。
・このような急速な症状の緩和により、インプラント表面の乾燥を急速に起こすこのテクニックは、インプラント周囲炎の治療において特に有効かつ適応となると考えるに至った。
しかしながら、すべてを評価するためには、ランダム化比較対照試験をさらに行うに値すると思われる。
しかしながら、インプラント表面の細菌性バイオフィルムを除去する目的でこの材料を局所投与することにおけるもっとも重要な点は、全身的または局所的な抗菌薬の投与を行わないことである。
インプラント周囲炎の治療に抗菌薬の投与を使用しないことは、細菌性感染の治療にとって非常に大きな前進であるといえる。
局所的な抗菌薬の乱用は患者にとって生命の危機を与えかねない耐性菌の出現につながることはよく知られた事実である。
(参考文献)
Nonsurgical Treatment of Peri-omplantitis Using the Biofilm Decontamination Approach : A case Report Study. Giovanpaolo Pini-Prato, Cristina Magnani, Roberto Rotundo, J Periodontics Restorative Dent 2016;36:383-391. 11607/prd . 2653.
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これまでインプラント周囲炎の治療に抗菌薬の投与は不確実であるために、炎症部位を外科に除去する方法が良いとされてきました。
しかしながら、インプラント表面の除菌を行うフラップ手術と抗菌薬の全身投与では、症例のわずか58%に効果があるに過ぎないというデータもあるように、従来の方法も不確実であると言わざるを得ない状態でした。
そんな中、スルホン酸/硫酸溶液(HYBENX)という、水への親和性がきわめて高いために接触性の乾燥材にみられる特徴を有する薬液により、抗菌薬のように耐性菌の出現を心配することなく、インプラント周囲炎の治療を行うことが可能となりました。
ただ、まだエビデンス的には十分といえないとのことなので、スルホン酸/硫酸溶液(HYBENX)に関する今後の研究報告を待ちたいと考えています。

2017年9月10日

hori (09:17)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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