プロバイオティクスで歯周病予防?!

・齲蝕罹患歴のない13名の唾液から乳酸菌株を42菌株分離し、まず、歯周病菌であるPgに対してスクリーニング検査を行い、さらにミュータンス菌株、カンジタ菌にも抗菌性を示す菌株のピックアップを行った。
16sリボゾーマルRNAのシークエンスを行った結果、この3菌株は、Lactobacillus rhamunosus, L. casei, L. paracaseiに分類された。
このうちL.rhamunosusに分類されたL8020株を用いてヨーグルトを作成し、ヒト試験を行った。
ヒト試験は、学生ボランティア50名が、毎日お昼休みにヨーグルトを1個、2週間食べ続けるというもので、「新しい試作ヨーグルト」を食べたというグループでは、移植菌の口腔内保菌を80%以上、4種類の歯周病菌についても40-90%、有意に減少させる効果があった。
DNAマイクロアレイでの検討により、 L.rhamunosus L 8020株の抗菌性は、ヒト由来の塩基性抗菌ペプチドに類似した塩基性のバクテリオシンKog1、Kog2によると考えられた。
このうち、Kog1について詳細な検討を行っているが、Kog1は48個のアミノ酸で構成され、22-44番目のアミノ酸のところでα-へリックス構造をとり、この部分が抗菌性に関与していることを示唆するデータを得ている。
また、Kog1を菌に作用させた場合、3分以内に菌体に集積し、5分で菌を破壊することを明らかにしている。
・われわれは、Kog1がLPSを不活性化することで、歯肉細胞やマクロファージからの炎症性サイトカインの産生を抑制することを明らかにしている。
Kog1自体は L.rhamunosusKO3株の培養上清に豊富に含まれることから、プロバイオティクスの常在菌層へのアプローチによる齲蝕・歯周病のリスクの軽減に加えて、LPSを不活性化することによって歯周病による全身疾患の増悪の抑制というプラスαの効果を期待している。
(日本歯科評論 2016年9月号 )
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以前書籍で紹介した文献が、雑誌でも紹介されたようです。
L.rhamunosus L 8020株の抗菌性により、S mutans P gingivalis P intermedia T forsythia F species が有意差をもって減少したとの報告です。
非常に興味深い研究ですが、これらの細菌の数が減少したとしても、やはり虫歯や歯周病はなくならないのではと個人的には考えています。
今後の研究報告に期待したいところです。

2016年10月25日

hori (17:23)

カテゴリ:歯周病の悩み

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