上顎前歯部インプラントの歯肉退縮

・上顎切歯部における単独インプラントの即時埋入・暫間補綴後の辺縁歯肉の変化について : 患者47名の5年間の後ろ向き研究
中切歯部には直径4.3ミリのインプラントを19本埋入した。
側切歯部には直径3.5ミリのインプラントを20本、直径4.3ミリのインプラントを8本埋入した。
辺縁歯肉の退縮量の平均は、最終補綴物装着時に0.16ミリ、3か月後で0.27ミリ、1年後および5年後で0.30ミリだった。
辺縁歯肉の退縮量は、中切歯部では5年を通して0.35ミリ、側切歯部では直径3.5ミリインプラント埋入で0.08ミリ、直径4.3ミリインプラントで0.82ミリを示した。
辺縁歯肉の退縮量は、側切歯部におけるインプラント直径4.3ミリと3.5ミリとの間で統計学的に有意な差が認められた。(P<0.05)。
術前に決定した歯肉バイオタイプは47本のインプラントのうち36本が厚い歯肉バイオタイプ、11本が薄いバイオタイプだった。
辺縁歯肉の退縮量は、厚い歯肉バイオタイプと薄いバイオタイプの間で統計学的に有意な差が認められた。(P<0.05)。
唇側よりに埋入したインプラントは口蓋側に埋入したインプラントより歯肉退縮の量および頻度が増加することを示す。
インプラントを適切な位置に埋入しても、より太い直径のインプラントを埋入した場合、インプラントが頬側の骨を侵害し、結果として歯肉退縮を増加させる。
歯肉バイオタイプは、インプラント補綴物周囲における辺縁歯肉の退縮について潜在的に強く関連している。
インプラント即時埋入アプローチ後に厚い歯肉バイオタイプと比較し、薄い歯肉バイオタイプでは大きな歯肉退縮が生じ、1ミリ以上の歯肉退縮を生じる頻度も増加するとChenらは報告した。
しかしながら、今回の研究では決定的な要因として強調されるべきなのは歯肉バイオタイプではなく、インプラントの直径であった。
インプラント即時埋入・暫間補綴(IIPP)における適切なカスタムアナトミックプロビジョナルアバットメントを用いることが歯肉退縮を減少させる因子である。
Touatiらは唇側面におけるアバットメントのエマージェンスプロファイルは、インプラント周囲歯肉の適切な成長および支持を高めるためにアンダーカントゥアで平坦にすべきであると強調している。
ほとんどの歯肉退縮がIIPP後3か月の治癒期間内に生じるため、最終補綴へ進む前にエマージェンスプロファイルを構築し、安定するまで待機時間を設けることは重要である。
(参考文献)
Gingival margin changes in maxillary anterior sites after single immediate implant placement and provisionalization : a 5-year retrospective study of 47 patients. Int J Oral Maxillofac Implants 2014 : 29(1) : 127-134. Ross SB/Pette GA/Parker WB/Hardigan P
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上顎前歯部におけるインプラント治療では、治療後の歯肉退縮がときに問題になります。
一般に歯肉が薄いと歯肉退縮の程度は大きくなりますが、歯肉の薄いタイプの方に歯肉移植を行うよりも、細いインプラントを口蓋側に埋入する方が、歯肉退縮を減少させることに寄与するというエビデンスが今回紹介する論文です。
適正な位置にインプラントを埋入しても、直径の太いインプラントを使用すると、歯肉退縮が起きやすいというのも臨床家は知っておかなければならない情報となるでしょう。

2014年7月10日

hori (16:42)

カテゴリ:インプラントについて

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