根尖部垂直性歯根破折は、臼歯部で生じやすい。

・垂直性歯根破折がどの方向に生じてるのかを調査したところ、歯頸部破折では77歯のうち29歯が近遠心方向、43歯が頬舌方向、5歯がその他であり、いずれの歯種においても特定の方向に破折する傾向は見られなかった。
一方、根尖部破折では90歯のうち78歯と、約9割が頬舌方向に破折していた。
歯頸部破折と根尖部破折では破折方向が大きく異なっていたことは、破折のメカニズムが違うことを示唆するものである。
・根尖部破折が前歯部で少ないこと、破折方向が頬舌に多発していることから、破折のメカニズムとして次の仮説を考えている。
まず、咬合力が加わって歯が沈下すると、歯根膜が歯を歯冠側方向に引っ張る。
この際、歯根は歯冠側方向だけでなく歯槽骨に向かって外側方向にも引っぱられることになり、歯根が扁平であれば長軸方向より短軸方向に強く引っ張られる。
人の歯の断面はすべての歯種で頬舌方向に長いので、根尖部破折は頬舌方向に生じやすいものではないかと考えている。
(補綴装置及び歯の延命のための最新治療指針 )
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根尖部の垂直性歯根破折は、前歯よりは臼歯部で生じやすいこと。
歯根形態が扁平なものの方が、長軸方向と比較して、短軸方向により強く引っ張られれるために、根尖部の垂直性歯根破折は頬舌的に生じる傾向があること。
がわかりました。
根尖部の垂直性歯根破折と根尖性歯周炎の鑑別が特に大臼歯部では困難でしょうから、通常の歯内療法を行っても治癒する傾向がなければ、外科的歯内療法を選択するのもよいかと思います。
しかし、天然歯が一度咬合力で破折したものをMTA等で封鎖し、炎症が一旦は落ち着いても、同じ咬合力がかかるのであれば、また破折するのでないでしょうか。
そうなると、多くの歯科医師は自分が行った外科的歯内療法を行った歯を守るために、意図的に咬まない低い歯を入れることでしょう。
そして、咬み合わせの平面は歪んでいき、根尖部の垂直性歯根破折は他の歯で生じることになるのです。
歯を残すことは歯科医師の使命であるはずです。
でも、外科的歯内療法よりもインプラント治療の方が患者さんにとって適当であるというケースは少なくないように感じます。

2016年8月10日

hori (08:26)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

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