歯根端切除術とインプラントの位置づけは変わるのか?

・逆根管形成・充填は同条件にして、マイクロスコープを用いた場合と、肉眼・ルーペを用いた場合を比較したメタアナリシスでは、マイクロスコープで94%、肉眼・ルーペで88%と有意差を認めた。
・逆根管充填材にはさまざまな材料が使われている。
病変の縮小を基準に治療の成否を判定する方法が一般的であるが、MTAとスーパーEBAが良好な結果を出している。
とはいえ、他の材料との差は極めて小さい。
Super EBA 89%
MTA     90.8%
IRM     84.7%
ガッタパーチャ 88.5% の成功率
(参考文献)
Setzer FC, et al. Outcome of endodontic surgery : a meta-analysis of the literature-part 2 : Comparison of endodontic microsurgical techniques with and without the use of higher magnification. J Endod. 2012 ; 38(1) : 1-10.
Tsesis I, et al. Outcomes of surgical endodontic treatment performes by a modern technique : an updated meta-analysis of the literature. J Endod. 2013 ; 39 (3) : 332-339.
*****
近年、「歯をすぐに抜いてインプラントにするのはけしからん。
私たち歯科医師は歯を保存することに全力を注ぐべきだ。』という風潮が今の歯科界にはあるように感じます。
それと関連してか、術式的には昔から存在する歯根端切除術が脚光を浴びています。
また、『最先端のマイクロスコープとMTAを使用することで、歯根端切除術の成功率を大きく引き上げる』というイメージをメーカーが中心となって、定着させるように行動をしてきているようにも感じていました。
今回紹介する論文にもあるように、歯根端切除術に使用する材料による成功率の差は、考えていたより小さいこと。
さらに、有意差はあるものの肉眼・ルーペによる成功率(88%)とマイクロスコープ(94%)による成功率が、考えていたより小さいことが明らかになりました。
自由診療をベースにした欧米の歯内療法であれば、MTAとマイクロスコープを使用した歯根端切除術がスタンダードにはなるかと思いますが、保険診療をベースにした日本では、Super EBAとルーペを使用した歯根端切除術がスタンダードになるのではないでしょうか。
グラム当たりの価格がgoldと同じくらいあるいはそれ以上もするMTAや、メルセデスが買えるくらい高額なマイクロスコープを使用する歯根端切除術は、日本ではまだまだ"絵に描いた餅"のように感じてなりません。
歯根端切除術には、"3ミリルール"といって、根尖から3ミリの部分を外科的に切除します。
歯根が長い歯牙であれば、3ミリの切除は問題にならないのかもしれませんが、歯周病により辺縁からの歯槽骨レベルが低下しているような歯牙で、かつ歯根端切除術が必要なケースもあるかと思います。
そのようなケースでは、歯間-歯根比が崩れてしまい、『根の状態は健全であるけれど、しっかり咬ませるともたない。』となる可能性もでてくるでしょう。
『これだけ手間暇かけて、結局咬めないのであれば、インプラントの方が良い。』と現在とは逆の方向の風潮に変化する時代が再度くるように感じられてなりません。 

2016年7月25日

hori (08:40)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

« 歯周病の産生する酪酸が免疫に関係するT細胞を阻害する。 | ホーム | 根面齲蝕はpH7付近でも発生する。 »

このページの先頭へ