下顎大臼歯部は最も根面齲蝕になりやすい。

・20-64歳の473名の被験者で根面齲蝕の罹患度とその分類を行った。
根面齲蝕は11.4%の歯根面に認められた。
また年齢階層別には、20代では1.1%だった根面齲蝕が60代では22.0%へと増加した。
根面齲蝕に罹患した歯を部位別に分類すると、すべての年齢階級において、下顎大臼歯部は最も根面齲蝕になりやすい傾向を示し(40%)、下顎小臼歯部(25%)、上顎犬歯(23%)、下顎前歯部(2%)が続いた。
また、必ずしも歯肉退縮との関連は認められず、たとえば上顎については、歯肉退縮が起こりやすい部位よりも、むしろ歯肉退縮が起こることで隣接面が根面齲蝕を発症しやすくなることが示された。
(参考文献)
Prevalence and intraoral distribution of root caries in an adult population. Katz RV, Hazen SP, Chilton NW, Mumma RD Jr. Caries Res 1982 ; 16(3) : 265-271.
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下顎大臼歯に根面齲蝕が頻発すること、上顎大臼歯にはさほど根面齲蝕が生じないことが明らかになりました。
上顎大臼歯よりも下顎大臼歯の歯磨きが困難であるとは考えにくいです。
唾液分泌量が減少すると根面齲蝕が増加するといわれていますが、上顎大臼歯と接触する唾液量は下顎より多いのかというと、「?」です。
アブフラクションによるマイクロクラックによっても、根面齲蝕が惹起されます。
歯槽骨の硬さは上顎よりも下顎で硬いことが多いので、歯牙に過大な側方力がかかった際には、下顎大臼歯の方がマイクロクラックが入りやすいように考えています。
一方、上顎大臼歯は歯槽骨が柔らかいゆえに、歯牙に過大な側方力がかかった際には、歯牙周囲の歯槽骨が破壊されるのかもしれません。
また、歯槽骨が破壊されるから、下顎大臼歯よりも根分岐部の数が多い上顎大臼歯は、歯周病が進行しやすく、マイクロクラックが入るよりも前に抜歯されている可能性もあります。

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