長いポストを掘ることのデメリット

・長いポストを掘ることのデメリットは、根管の側枝の割合を考えます。
根管の中央より歯冠方向に側枝の発生する可能性はおよそ3割に上ります。
つまり、従来のように根管の1/2よりも長く掘ろうという考え方に基づくと、側枝を触る可能性が3割に及び、感染の危険性が増加します。
また、昨今の多くのリサーチが根管の長さによる支台築造の維持に有意差はないと示したことから、根管を長く掘る意味がなくなりました。
以前のように合着に頼っていた時代は長く掘ることで維持する効果もあったと思われます。
今は接着がその維持を補償しています。
・側枝の平均分布
歯頸側:15%、根中央:11%、根尖側:74%
(天然歯審美修復のセオリー図解Q&A )
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私は大学で、根管形成は根長の2/3と習いました。
当時はメタルコアが主流でしたが、虫歯や歯周病による抜歯もまだまだ多い時代だったので、歯根破折による抜歯はあまり目立ってはいませんでした。
そのころからでしょうか、『歯医者には痛いときだけでなく、定期的に通って予防しょう。』という流れがおきました。
その後徐々に、患者さんがメンテナンスに通うような状態になり、虫歯や歯周病による抜歯は確実に減少するようになりました。
ところが、歯根破折による抜歯はメンテナンスで回避できなかったので、歯根破折が急に取りざたされるようになりました。
(目立っていなかっただけの話で、昔からある一定の割合で、歯根破折は生じていた可能性もありますし、日本人の寿命が延びたことも関係していることでしょう。)
その後、メタルコアは歯根破折のリスクが多いため、個人的にはレジンコアを多用するようになりました。
15年以上前になるかと思いますが、ファイバーコアが日本で手に入らない時代もあり、個人輸入で使用していた時期もあります。
根管築造をファイバーコアによるレジンコアで対応した場合、根管を長く掘ると、接着が困難になります。
接着を確実に行おうとすると、根管は必要最低限の長さでよいということになります。
また、今回紹介したように、長い根管形成は、形成時に側枝に触れるリスクが高まるという視点もあります。
勉強を続けていると、『学生時代に大学で学んだ内容は、現在のスタンダードではない。』ということに頻繁に遭遇します。
『歯医者は継続して勉強しなくては務まらない職業だな。』と、今更ながらに感じました。

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