根面齲蝕や歯根破折は、歯周病に罹患しなければリスクは下がる。

・人が歯を喪失する原因を考えると、齲蝕よりも歯周病の方が多い。
特に中高年になると圧倒的に歯周病が増えてくるわけです。
近年、注目されている根面齲蝕や歯根破折なども、実は歯周病に罹患しなければリスクははるかに下がります。
つまり、歯周病で歯肉が後退してエナメル質に覆われていない根面が露出することでう蝕になる。
さらに歯槽骨が吸収されることで歯に動揺が生まれ、歯根に過剰な力がかかり破折してしまう。
歯科口腔抗菌考 より)
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中高年の患者さんのお口を拝見していると、歯周病に罹患している歯の数が増加する印象があります。
また歯周病罹患歯は、歯根が口腔内に露出していることが多く、それゆえに根面齲蝕も増加傾向にあります。
この本でも書かれているように、歯周病に仮にならなければ、根面齲蝕のリスクは減少すると考えられます。
またこの本では歯根破折は歯周病に罹患しなければ発生するリスクははるかに下がるという見解ですが、私は歯根破折に対して若干の見解の相違があります。
歯根破折は歯に過大な力がかかり、さらにそれを支える歯槽骨がある程度しっかりしているために発生するのではなかろうかと考えています。
歯周病に罹患し、過剰な力がかかれば、歯は移動するために、歯根破折は発生しにくいのではないかということです。
ただ、同じように歯周病罹患歯でも、垂直性骨欠損を有する歯周病罹患歯とそれを有さない歯周病罹患歯(いわゆる水平的骨欠損を有する歯周病歯)では起きていることが異なるのかもしれません。
垂直性骨欠損を有する歯周病歯では、その部分以外の歯周組織が相対的に健康であるために、過大な力がかかれば、歯牙移動が生じることなく、歯根破折が生じることでしょう。
一方、垂直性骨欠損を有さない歯周病歯では、歯牙移動が生じやすいために、歯根破折は生じにくいと考えられます。
(もちろん、歯牙移動が生じるかどうかも、歯周病のタイプだけではなく、歯周病の程度による部分もありますが。)
また、歯根破折の発生頻度は、神経のある有髄歯よりも神経のない無髄歯の方が高いのですが、根面う蝕も無髄歯の方がその程度が重くなりやすく、それゆえにその部分からの歯根破折も発生しやすいように感じます。
こうして考えると、歯を失う原因として齲蝕、歯周病、歯根破折と分類はなされていますが、中高年の方の口腔内で、問題が最初に発生しているのは、やはり歯周病であることが多く、齲蝕、歯周病、歯根破折は単独で発生するケースは少ないのではなかろうかと考えられます。
さらに、インプラントは齲蝕が生じることはなく、歯根破折に該当するフィクスチャーの破折はゼロではないけれど発生頻度は非常に小さいものです。
そうなると、インプラントの場合には、インプラント周囲炎を以下に防ぐかについて考えていかなくてはならないということになります。

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