オープンコンタクトは、インプラントが悪いのか?

・智歯で前歯がずれるのか?
「前歯がずれるといけないので、親知らずを抜きましょう。」や「先生、前歯がずれてきたのですが、親知らずのせいですか?」などの言葉は、よく聞かれるが、智歯のない場合でも前歯の叢生を経験することがある。
2005年のSumitraらのレビューでは、智歯と前歯の叢生に関するエビデンスはないとされている。
その後、2013年のKarasawaらの報告まで「関係ない」とする報告ばかりである。
Harradineらは、智歯の抜歯と、下顎前歯の叢生の関係について、1998年にランダム化比較試験の結果を報告している。
その結果、非抜歯グループ・抜歯グループともに叢生指数は増加しており、歯列弓長径と左右犬歯間距離は減少していた。
両群間の比較では、歯列弓長径では、統計学的有意差をもって非抜歯グループの方が減少したが、叢生指数と左右犬歯間距離の変化量にグループ間に差がなかった。
著者らの結論として、叢生指数で統計学的有意差がなかったので、抜歯による叢生の影響はないとしている。
(抜歯・小手術・顎関節症・粘膜疾患の迷信と真実 )
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智歯の有無によらず、経時的に下顎前歯は叢生になるというエビデンスです。
インプラントとその前方歯の接触点が空いてくるという、いわゆるオープンコンタクトは、インプラント関連のトラブルとされていますが、経時的に叢生の程度が増大するのではあれば、トラブルの原因はインプラントではなく、天然歯であるということになります。
実際には現実的ではないのかもしれませんが、経時的に下顎前歯の叢生の程度が増大し、オープンコンタクトが出現するのであれば、咬み合わせを復元するために、インプラント治療後に歯列矯正を行う場合もあるかもしれません。
またインプラントは基本的に位置が不変であるにもかかわらず、天然歯は経時的に位置を変化させてくるわけですから、その両方が共存するように、定期的な咬み合わせの調整は少なくても必須事項となるのではないでしょうか。

2015年12月 5日

hori (14:56)

カテゴリ:インプラントの偶発症

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