コンタクト ロスの関連因子

・コンタクトロスが発生しやすくなる要因として、高年齢、対合歯が可撤性義歯であること、隣在歯が失活歯であること、隣在歯が連結されていないことが挙げられる。
・WEIらは、歯列咬合力のうち、犬歯間、すなわち前方部に加わる咬合力の割合が大きいと、コンタクトロスが起きやすいと結論付けている。
・コンタクトロス発生群の方がコンタクト維持群と比較して、歯冠インプラント比が大きく、有意差が認められた(p<0.01)。
・Mischの分類における骨質D1ならびにD2群の方が、D3ならびにD4群と比較して、コンタクトロス発生群の割合が高く、有意差があった(P=0.01)。
・インプラントに対して歯冠が長く、隣在歯が連結されておらず、動揺があり、埋入部位の骨質がD1もしくはD2であった場合に、一方で、年齢、性別、観察期間、側方運動時の接触の有無は、有意な説明変数とならなかった。
・WEIらは、55か所のインプラント-天然歯隣接面を調査し、コンタクトロスの発生した群では、咬合力の舌側成分、近心成分が大きく、また咬合力が比較的前方へ分布していると報告している。
・短期間にコンタクトロスが起こる理由として、臼歯部にインプラント修復がなされることで咬合力が増大することが挙げられる。
その結果、天然歯にかかる咬合力の前方成分も大きくなることで天然歯の前方移動がそれまでよりも加速、助長され、コンタクトロスが起こる可能性が考えられる。
・D1、D2の群はshort-faced typeで、咬合力が強い傾向にあることが予想され、この要因がコンタクトロスに関連したことが推測された。
(参考文献)
インプラント上部構造と天然歯間におけるコンタクトロスの関連因子 福西一浩, 北島一, 石川知弘, 武下肇, 前田芳信. 日本口腔インプラント学会雑誌vol.29 NO.4/2016.12
・咬耗が進行すると、歯の間に隙間が生じ、上下歯列の咬み合わせの関係も変化してしまう。
縄文人などの歯列を詳しく調べてみると、咬耗に伴って個々の歯が移動してこうした隙間を埋め、常に機能的な歯列矯正を保とうとするメカニズムがあることが分かってきた。
このような歯の生理的移動は、おそらく哺乳類に一般に備わっているものと推測されるが、ヒトにおいては3つのタイプに分類できる。
一つは、垂直方向の移動であり、連続的萌出。
二番目は近心移動。
三つ目は舌側移動。
(仙歯会報 2017年2月号 )
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個人的に興味深く感じたのは、『コンタクトロスの発生した群では、咬合力の舌側成分、近心成分が大きく、また咬合力が比較的前方へ分布している。』ということです。
また、仙歯会報の抜粋は、海部陽介氏が歯科医師会に講演に来られた際の記録です。
これら二つを元に考えると、コンタクトロスが生じる口腔内では、そもそも歯牙が近心舌側方向に傾斜して萌出しているために、歯列のサイズが小さくなっていることが推測されます。
歯列のサイズが小さいゆえに、舌癖が誘発されるのでしょう。
またそのような舌癖があるために、側方への舌突出壁があれば下顎前歯の挺出が生じ、前方への舌突出壁があればオープンバイト傾向からのさらなる空隙歯列が惹起されることが考えられます。
これは、咬合平面が上下的に歪むので、海部氏が仰るところの一つ目の垂直方向の移動に該当します。
またこのような状態では、アンテリアガイダンスがうまく機能しないために、臼歯部には側方からの為害作用がかかるために、早期に喪失する危険性が高まります。
そのような状態で臼歯部にインプラント治療を行うために、コンタクトロスが生じるのではないでしょうか。
そしてさらに、倒れている歯は継続して倒れ続けるということもコンタクトロスに関係していると個人的には推測しています。

2017年10月20日

hori (10:36)

カテゴリ:インプラントと歯列矯正

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