インプラント周囲粘膜炎はブラッシングで治るか?

・インプラント周囲粘膜炎はブラッシングで治るか?
要旨:インプラント周囲組織が健康な患者15人に対し、3週間にわたり実験的歯肉炎の手法(Loeら 1965)を応用して下顎インプラント周囲と天然歯にプラークを堆積させた。
その後3週間は適切な縁上プラークコントロールを行った。
実験開始日から7日ごとに天然歯とインプラント周囲の臨床パラメータを調べた。
パラメータ:プラークインデックス、BOP、プロービングポケットデプス(0.4?径のプローブを用い、0.2-0.25Nでのプロービング)、細菌叢、歯肉溝滲出液
結果:ブラッシングの中断に伴い、天然歯およびインプラントのプラークインデックス、BOPはともに増加したが、インプラント周囲の方がBOPは多く、より強い炎症反応が生じていた。
プラークコントロールの再開(22日目以降)により、天然歯、インプラントとも周囲組織の炎症の消褪が確認されたが、インプラント周囲組織の炎症は、3週間で消失しなかった。
臨床コメント:インプラント周囲粘膜炎は縁上のプラークコントロール(ブラッシング)によりある程度消褪する。
しかし、Loeら(1965)の歯肉縁の実験と異なり、3週間では完治しなかった。
インプラント周囲粘膜の治療には、より長い期間の縁上プラークコントロール、あるいは何らかの補助的な処置が必要かもしれない。
(参考文献)
Reversibility of experimental peri-Implant mucositis compared with experiment gingivitis in humans. Salvi GE, Aglietta M, Eick S, Sculean A, Lang NP, Ramseier CA. Clin Oral Implants Res. 2012; 23(2): 182-190.
*****
インプラント周囲粘膜炎のレベルでも、一度罹患してしまうと、中々元の良い状態には戻りにくいことが明らかになりました。
プラークインデックスは、42日経過後にはほぼ実験前の状態に戻っていました。
しかしながら、歯周の炎症の状態を把握する上で重要な指標であるBOPについては、専門家が定期的に縁上のプラークコントロールを行っても、42日間経過後も実験前の状態に戻っていないという結果でした。
歯周の状態が悪化しても、天然歯は比較的元の状態に戻しやすいですが、インプラントは中々元の状態にブラッシングだけでは戻りにくく、さらに付加的な処置が必要となる可能性もあるようです。

2017年8月10日

hori (16:08)

カテゴリ:インプラント周囲炎

« 天然歯とインプラントを連結するなら、キーアンドキーウェイで固定が有効。 | ホーム | 化学重合型レジンに軍配が上がるか?! »

このページの先頭へ