インプラントは天然歯より100倍鈍い?!
・無歯顎患者の咬合圧による口腔内触覚(能動的・受動的条件)の研究においてMericskeは、歯牙粘膜負担による義歯とインプラント支持によるオーバーデンチャーの比較において、能動的条件(口腔内触覚閾値)はインプラント支持が低下しており、受動的感覚(天然歯およびインプラントに直接触れたときの知覚能力)において、インプラントは天然歯と比較して100倍の咬合圧が必要と大きな違いがあると報告している。
また咬合圧の試験では第二小臼歯が最も高く、これはインプラントに過剰な負荷がかかる可能性を示すものである。
したがって、下顎無歯顎に対しインプラント支持のオーバーデンチャーを応用する際には、第二小臼歯より前方のオトガイ孔間にインプラントを埋入するすることが推奨される。
・オーバーデンチャーの機能
能動条件 受動条件 第一小臼歯 第二小臼歯 大臼歯
天然歯根 10-100μm 1-4g 112.1 131.2 119.1
インプラント N.D 100-400g 130 142.6 135.5
最大咬合圧(平均値:Newton)
(インプラント ジャーナル 2016 65 )
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この報告により、インプラントの触覚閾値は天然歯の100倍の咬合力を必要とすることが明らかになりました。
『インプラント治療を受けたら、天然歯の頃よりすごくよく咬めるようになった。』と喜びの声を聞くことは少なくありせんが、これはインプラントの感覚がある意味天然歯よりはるかに鈍い(このデータでは100倍)ことと関連していると思います。
すなわち、インプラントが強く咬んでも咬んでいる認識が薄いために、インプラント治療後のトラブルは引き起こされているといっても過言ではありません。
インプラントと対合する天然歯を破壊したり、インプラント上部のセラミックスを破損したりするのも、皆インプラントの触圧感覚が鈍いことと関係があるのです。
そのため、インプラント治療後には、特定の歯やインプラントに力が集中しないように、定期的な咬合調整が必要となるのです。