2021年6月アーカイブ

インプラント表面のバイオフィルム除去に最も効果的だった方法とは?!

口腔内でプラークを4日間生着させたインプラント132本を、6つの治療群(ガーゼ、超音波スケーラー、エアフロー、金属製回転ブラシ、Er:YAGレーザー、未処置)に分け、それぞれの器具で1分間清掃を行い、走査型電子顕微鏡を用いたインプラント表面の質的評価と細菌培養による細菌数の量的評価を行った。
その結果、SEM像では、機械研磨のインプラントにおいて、ガーゼ群と回転ブラシ群の2群でそのほかの方法に比べ良好な表面正常が確認され、細菌量の評価では、表面正常にかかわらずガーゼ群、回転ブラシ群、エアーフロー群で良好な結果が観察された。
(参考文献)
Otsuki M, Wada M, Yamaguchi M, Kawabata S, Maeda Y, Ikebe K. Evaluation of decontamination methods of oral biofilms formed on screw-shaped rough and machined surface implants : an ex vivo study. Int J Implant Dent. 2020; 6(1): 18.
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ガーゼという原始的な手法が、レーザーなどの最先端の治療より効果的であったという結果に驚かされました。
特別な器具を使わずともインプラント表面のバイオフィルムが除去可能であることを示したといえますね。

2021年6月25日

hori (08:47)

カテゴリ:インプラント周囲炎

アバットメント接合様式が上顎前歯部単独インプラントの審美に与える影響

・アバットメント接合様式が上顎前歯部単独インプラントの審美に与える影響:ランダム化比較臨床試験による5年間の追跡調査
(概要)
本研究は、上顎前歯または上顎第一小臼歯の単独歯欠損に対してインプラント治療を行う患者を対象とした。
欠損部に対し、3種類のアバットメント接合様式を有するインプラントシステムを用いて即時暫間修復を行った。
A. コニカルインターフェース(コニカル群:OsseoSpeed TX, Dentsply Sirona)
B. フラット-フラットインターフェース(フラット群:NobelSpeedy Replace, Nobel Biocare)
C. プラットフォームスイッチング(スイッチング群:NanoTite Certain PRE-VAIL、Biomet 3i)
(結果)
研究全体の辺縁骨の変化量は、60か月の機能期間中でー0.05-?1.57ミリの範囲にあり、60か月後の平均辺縁骨変化量はー0.78±0.81ミリであった。
群間比較では、すべての評価時点で、コニカル群(?0.16±0.45ミリ)とフラット群(?0.92±0.70ミリ)、コニカル群(?0.16±0.45ミリ)とスイッチ群(?0.81±1.06ミリ)の間に統計学的な有意差があった。
(考察)
異なるアバットメント連結用様式の3つのインプラントシステムを用いた本研究では、次の主要な知見が得られた。
コニカル群の辺縁骨の減少量はほかの2群と比較して有意に少なかった。
すべての群ではゼニスの垂直的な位置は安定していた、辺縁骨レベルとインプラント周囲の軟組織の変化との関連はなかった、組織の変化は埋入後6か月までの初期に観察され、その後は安定していた。
インプラントとアバットメントの境界、すなわちマイクロギャップにおけるマイクロリーケージによる細菌汚染が、インプラント周囲の炎症の原因として挙げられることがある。
インターナルコニカルコネクションではマイクロリーケージが少ないという報告もあり、本研究のコニカル群において観察された有意に少ない辺縁骨の減少量は、マイクロリーケージが少ないことが骨の保存に有利に作用した結果である可能性がある。
また、歯槽骨頂部に対する機械的負荷は、インプラントとアバットメントのインターフェースデザインの影響を受けると考えられており、コニカルインターフェースは、荷重をより適切に分散し、皮質骨に損傷を与えて歯槽頂骨の吸収につながるピーク応力を回避する可能性がある。
(参考文献)
Cooper LF, Reside G, DeKok K, Stanford C, Barwacz C, Feine J, Nader SA, Scheyer T, Maguire M. A 5-Yeaaar Esthetic RCT Assessment of Anterior Maxillary Single-Tooth Implants with Different Abutment Interfaces. Int J Oral Maxillofac Implants 2021 ; 36(1) : 165-176.
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コニカルインターフェースを有するOsseoSpeed TXの方が、有意な差をもって、 フラット-フラットインターフェースを有するNobelSpeedy Replaceや プラットフォームスイッチングを有するNanoTite Certain PRE-VAILと比較して、辺縁骨レベルが低下しないために、審美領域では特に信頼できるインプラントシステムであることが明らかになりました。

2021年6月20日

hori (08:40)

カテゴリ:インプラント周囲炎

ガムを咬むと唾液中IgAの分泌が2.5倍に。

ガムを噛むことで、口腔内の免疫グロブリンA (IgA)の分泌が2.5倍になる。
ロッテが順天堂大学の小林弘幸教授の監修で研究したもので、「薬理と治療」に論文掲載された。
研究では、24-52歳の男女20人に対して試験を行い、ガム咀嚼によるIgA分泌の変化を検証。
結果、ガム咀嚼時の安静時と比べて唾液分泌が促進され、口腔内のIgA分泌が2.5倍に増加した。
(アポロニア21 2021年5月号 )
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唾液には"IgA"という成分が含まれていて、身体の中に入ろうとする細菌類をシャットアウトし、鼻やのどなどのウィルス侵入の最前線で、防御の重要な働きをし、免疫力の強い身体を作っています。
新型コロナウイルスをガム噛みで対策できる可能性があるということになります。

2021年6月15日

hori (08:21)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

根管充填で歯質は強化されるのか?

根管治療後に生じるトラブルの一つに歯根破折がある。
バイオセラミック系シーラーやレジン系シーラーを用いて根管充填を行うことにより、根管充填していない歯と比較して破折しにくくなる。
つまり、微小漏洩を防ぐための緊密な根管充填は、同時に歯の破折予防になる。
ただし、歯質強化といっても、根管形成前に戻るのみで、それ以上ではない。
(参考文献)
Osiri S,et al. Root reinforcement after obturation with calcium silicate-based sealer and modified gutta-percha cone. J Endod, 2018 ; 44(12) : 1843-1848.
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比較的新しい材料であるバイオセラミック系シーラーやレジン系シーラーを用いて、根管充填した場合には、根管形成前程度にまで歯質強化がなされるようです。
またほかの文献では、歯質強化という観点からは、側方加圧充填法が推奨されるとの記載もありました。

2021年6月10日

hori (08:31)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

何年禁煙すれば、非喫煙者の歯周炎リスクに近づくのか?

10-47年のメンテナンス期間において、喫煙の容量依存効果と禁煙が歯周炎による歯の喪失に及ぼす影響
(主な結果)
患者の平均フォローアップ期間は24.2(10-47.5年)で、年間メンテナンス来院数は平均2.24回であった。
ベースライン時に存在していた6590本の歯(平均25.6本/患者)のうち、歯周炎により失われた歯は264本であり、年間の平均喪失本数は、それぞれ非喫煙者0.03本、元喫煙者0.05本、軽度喫煙者0.08本、重度喫煙者0.11本であった。
また、歯周炎による歯の喪失頻度は非喫煙者で最も低く、重度喫煙者で最も高かった。
(表1)
       歯周炎による抜歯      歯周炎の他の理由による抜歯
1. 非喫煙者    2.5%              4.4%
2. 元喫煙者    4.1%               5.5%
3. 軽度喫煙者   5.6%              4.4%
 (1日10本未満)
4. 重度喫煙者   10.3%              13.7%
 (1日10本以上)
重度喫煙者は、それぞれと比較して非喫煙者の4.38倍、軽度喫煙者の2.74倍、元喫煙者の2.56倍の歯を喪失するリスクを有していた。
また、元喫煙者の中でかつて重度喫煙者であった場合は、軽度喫煙者よりも歯周炎で歯を喪失するリスクが4.89倍高かった。
元喫煙者において「禁煙後の期間」が<15の場合に、非喫煙者と比較して、歯の喪失リスクが有意に高かった。
(表2)歯周炎による歯の喪失と禁煙状況との関連
         喫煙状況   禁煙後の期間(年) 調整オッズ比 95%信頼関係
1. 非喫煙者                      1
2. 元喫煙者  1日10本未満の元喫煙者  >40     0.58    0.18-1.86     
                    31-40     0.26     0.03-2.09
                   16-30      0.52    0.24-1.12
                    <15      3.74    1.50-9.34
       1日10本以上の元喫煙者  >40     1.76     0.54-5.72
                   31-40     1.7     0.38-7.67
                   16-30      1.75    0.64-4.82
                    <15      12.2    4.64-31.90
3. 喫煙者   1日10本未満の喫煙者  該当なし     1.94    0.93-4.05
       1日10本以上の喫煙者  該当なし     4.32    2.63-7.08
(参考文献)
Ravida A, Troiano G, Qazi M, Saleh MHA, Saleh i, Borgnakke WS, Wang HL. Dose-dependent effect of smoking and smoking cessation on periodontitis -related tooth loss during 10-47 years periodontal maintenance-A retrospective study in compliant cohort. J Clin Periodontol 2020 ; 47(9) : 1132-1143.
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元喫煙者において「禁煙後の期間」が<15の場合に、非喫煙者と比較して、歯の喪失リスクが有意に高いことが明らかになりました。
また逆に言うと、喫煙の影響は禁煙してからも15年は続くということになります。

2021年6月 5日

hori (08:45)

カテゴリ:インプラント周囲炎

インプラントのメインテナンスと歯肉炎に対する感受性がインプラント成功率に及ぼす影響:5年間の後ろ向きコホート研究

(研究方法)
インプラント治療後、年に1回以上メンテナンスを受けていた患者を定期的メンテナンスプログラム群(以下、DMP群)とした。
メンテナンスにおいては、臨床検査、診断、必要に応じた紙面清掃または縁下デブライドメントが行われた。
インプラント治療後、定期的なメンテナンスに次医院しなかった患者は不定期メンテナンスプログラム群(UMP群)と定義された。
歯周病の治療は、インプラント治療前に完了していた。
被検者の適格基準は、漸進的に健康な21歳以上の成人で、糖尿病はなく、2005-2012年の間にStraumannインプラントが埋入され、上部構造装着後6か月以内(T0)にプロービングによる検査およびエックス線検査が行われたこととされた。
除外基準は、全身疾患、コントロール不良の糖尿病患者、上部構造装着後6か月以内のエックス線検査が行われなかった場合とされた。
最終的には、DMP群およびUMP群で各100名、合計200名がリコールされ、臨床的検査およびエックス線検査が行われた(T1)。
臨床検査では、天然歯およびインプラントのPPD、出血指数が記録された。
エックス線写真上では、インプラントショルダーから骨長までの距離が測定された。
これらの臨床パラメータおよびエックス線上での骨レベルのT0からT1の間の変量が計算された。
(主な結果)
観察期間中、保存されていた284本のインプラントのうち、インプラント周囲粘膜炎の発症率は患者レベルで63%、インプラントレベルで55.6%であった。
インプラント周囲炎は、患者レベルでは13%、インプラントレベルでは10.2%に発症した。
インプラント周囲炎は、患者レベルではDMP群において6%、UMP群17.2%に発症し、この群の間に統計学的有意差がみられた。
また、観察期間中の骨吸収量はDMP群で平均0.19ミリ、UMP群で平均0.63ミリで統計学的有意差がみられた。
さらに、多変量解析の結果、メンテナンスの欠如とインプラント周囲炎に有意な相関がみられた。
DMP群およびUMP群におけるインプラント周囲炎の発生率
DMPのインプラントレベル 4.0%
とUMPインプラントレベル 17.2%
間でP<0.01で有意差が見られた。
DMPの患者レベル 6.0%
とUMP患者レベル  20.0%
間でP=0.03で有意差が見られた。
(参考文献)
Hu C, Lang NP, Ong MM, Kim LP, Tan WC. Influence of periodontal maintenance and periodontitis susceptibility on implant success : A 5-year retrospective cohort on moderately rough surfaced implants. Clin Oral Implants Res 2020 ; 31(8) : 727-736.
やはり定期的なメンテナンスがインプラント周囲炎の発生や骨吸収を減少させる要因という結果になりました。

2021年6月 1日

hori (08:16)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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