2020年7月アーカイブ

上顎第一大臼歯の近心頬側根は、見落しのある歯根率が59.5%。

・根管治療で見落とされた根管による根尖病変発現率への影響
(目的)
本研究の目的は、CBCT画像を用いて既根管治療歯における見落とされた根管と根尖病変の関連性を解析することである。
(材料および方法)
2018年1-12月に8つの医療施設にて撮影された1160名(男性:497名、女性663名、平均48.38歳)のCBCTスキャンデータを5名の観察者によって評価した。
データは20836本の歯から2305本の既根管治療歯を抽出し、見落とされた根管および根尖病変の有無について歯種・歯根ごとに記録された。
(結果)
見落とされた根管は12.0%の歯に認められ、その82.6%に根尖病変が生じていた。
見落とされた根管の割合がもっとも高い歯種は上顎第一大臼歯(59.5%)であり、ついで上顎第二大臼歯(40.0%)、下顎側切歯(17.4%)下顎中切歯(12.2%)であった。
歯根別の割合では上顎第一大臼歯近心頬側根がもっとも見落とされた割合が高く(62.8%)、その75.2%に根尖病変を認めた。
ついで上顎第二大臼歯近心頬側根では49.0%で見落しとされており、その68.0%に根尖病変を認めた。
下顎では下顎第二大臼歯近心根で高率に見落しとされており(9.6%)、その92.3%に根尖病変を認めた。
適切に根管治療された場合と比較し、見落とされた根管のある既根管歯は有意に高率に根尖病変を称しており(P<0.05)、すべて歯種でのオッズ比は4.4、上顎第一大臼歯近心頬側根のオッズ比は3.1であった。
(考察)
本研究において見落とされた根管を有する歯の割合(12.0%)はCostaらによる報告(12.2%)と一致していた。
また、上顎側切歯と第二小臼歯の見落とされた根管はそれぞれ0.5%と2.4%、下顎中切歯、側切歯、および第二小臼歯は、それぞれ12.2%、17.4%、1.9%であり、これらの結果においても上記の報告と同様であった。
本研究では見落とされた根管を伴う既根管治療歯における根尖病変発現率は82.6%、オッズ比は4.4であり、Karabucakらによる報告(同発現率82.8%およびオッズ比4.4)と一致していたが、Costaらによる報告(同発現率97.5%およびオッズ比6.25)ではより高い値を示していた。
上顎第一大臼歯の近心頬側根は、もっとも頻繁に見落しのある歯根(59.5%)であり、他の報告と同様の結果であった(Karabucakら:44.2%、Costaら:59.0%)。
これらの結果は、近心頬側代に根管(MB2)の見落としが根管治療失敗に大きく影響を与える可能性を示唆している。
本研究結果から、見落とされた根管が高い頻度で根尖病巣の存在と関連することが示され、根管の見落としが根管治療の成績に大きな影響を与えることが示唆された。
(参考文献)
Baruwa AO, Martins JNR, Meirnhos J, Pereira B, Gouveia J, Quaresma SA, Monroe A, Ginjeira A. The influence of missed canals on the prevalence of periapical lesions in endodontically treated teeth.
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以前にも、見落し根管による根尖病変発現率への影響を取り上げた文献を紹介しましたが、上顎大臼歯の近心根管に見落しが多いという結論は共通していると感じました。
上顎大臼歯近心根の根管治療の際には、見落し根管がないか細心の注意が必要になるものと考えられます。

2020年7月15日

hori (08:49)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

劣形な支台歯に補助的な特徴を付与することによる効果の比較

・支台歯が十分な抵抗形態を有していない場合における補助的な特徴を付与することによる効果の比較
支台歯が十分な抵抗形態を肘していない場合に、隣接部のグルーブ、咬合面の内側への傾斜面、咬合面イスムスの付与は効果的ではないということがわかった。TOC(対向する長軸が成す角度)を修正(例えばTOCを20度から8度へ修正)した方法のみが維持力を向上させることができる。
(参考文献)
Proussaefs P, Campagni W, Bernal G, Goodcare C, Kim J. The effectiveness of auxiliary features on a tooth preparation with inadequate from. Prosthet Dent 2004 ; 91(1) : 33-41.
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歯牙が劣形の場合、何かしらの補助的な特徴を付与しないと、脱離しやすい補綴物になります。
そのような場合、歯科医師はグルーブ、ボックス、咬合面イスムス、TOCの修正など複数の方法を考えます。
今回の報告で、製作された全部被覆冠の脱離リスクを最も効果的に減少させる方法は、TOCの修正であることが明らかになりました。

2ミリ均一にフェルールがある中切歯は0.5-2ミリのフェルールがあるものより破折強度が強い。

・in vitroにおけるさまざまなフェルールの高さや形態を備えた根管治療をされた中切歯の破折強度

1. 根管治療を受けた上顎中切歯で支台築造を行わずクラウンにて補綴された歯と2ミリのフェルールで鋳造ポストコアとクラウンで補綴された歯においては、破折強度の平均は有意差がなかった。
2. 2ミリ均一にフェルールがある中切歯は0.5-2ミリのフェルールがあるものより破折強度が強い。
3. 0.5-2ミリのフェルールがある中切歯はまったくフェルールのないものよりも破折強度が強い。
(参考文献)
Tan PL, Aqilino SA, Gratton DG, Stanford CM, Tan SC, Johnson WT, Dawson D. In vitro fracture resistance of endodontically treated central incisors with varying heights and configurations. J Prosthet Dent 2005 ; 93(4) : 331-336.
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やはり全周にわたりフェルールが2ミリ以上ある、残存歯質が十分に存在する歯牙がやはり予後が良いことが明らかになりました。

歯槽骨基底部に幅がある方が二次的に硬・軟組織の高さを得やすい。

・インプラント間乳頭は、おもに審美的考慮から前歯部において重要であるが、ひとたび臼歯部に目を向けてみると多くの症例でインプラント間乳頭が再生・再建されていることに気が付く。
この原理を骨幅に注目してみると、明らかに歯槽骨基底部に幅がある方が二次的に硬・軟組織の高さを得やすいことが分かる。
元来、上顎前歯部は唇舌的な骨幅がないうえに、口輪筋などの圧力を受け、唇側面の吸収を起こしやすいことが分かっている。
したがって、前鼻棘から前歯部根尖部付近は口輪筋に呼応するようなくぼみが切歯窩として存在し、骨幅は減じている。
そこで上顎前歯部のインプラント間乳頭の再生・再建にあたっては、顔貌に影響を与えない程度に根尖相当部付近にも骨造成を行い、二次的な硬・軟組織の高さを得ることも一つの手法と考えられる。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2020 vol.27 )
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確かに、歯槽骨基底部に幅がある方が二次的に硬・軟組織の高さを得やすいように感じます。
上顎前歯部インプラントの乳頭を再生・再建を試みる際には、骨造成を行い、歯槽骨基底部の幅を増大させることを考えていきたいと思いました。

2020年7月 1日

hori (11:45)

カテゴリ:上顎前歯部のインプラントの

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