2018年1月アーカイブ

眼窩下神経の副孔は、11.5%の患者でみられる。

・一般に顔面神経や三叉神経は組織内深くに位置しているために、組織を歯冠側に移動する際に損傷しやすいわけではないが、上顎小臼歯部でフラップを伸展する前に、眼窩下部の下縁を触診して眼窩下孔の位置を把握しておくのが賢明である。
眼窩下管は眼窩下縁の5ミリ下方であり、通常は瞳孔を通って垂直に引いた想像上の直線上にあるので、位置を認識する際の目安となる。
フラップの減張は、眼窩下神経とその末梢枝を損傷しないように、この神経組織から距離を保たなくてはならない。
もし外科手術が眼窩下孔に近接して行われるならば、神経の損傷を避けるため、粘膜下結合組織内に減張切開を行う前にこの神経を孤立させるのが賢明である。
眼窩下神経の副孔は、11.5%の患者でみられる。
一般に、血管や神経の枝がどこに存在するかを正確に知ることはできないため、組織内にあまりに深く切開しないことが望ましい。
(The Fabric of the Modern Implantology )
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減張切開も少し前は、一度メスを入れて減張が不足する場合は、さらに深く入れるのがスタンダードと記憶していましたが、現在はメスの背で鈍的に剥離する方法に変わってきているようです。
やはりスタンダードは時代とともに変化しますね。

2018年1月25日

hori (08:56)

カテゴリ:インプラントと骨造成

光機能化で上皮性付着が強化。

・チタン合金やコバルトクロム合金、ジルコニアでも光機能化の効果は確認されており、インプラント粘膜貫通部材料への用途は広い。
さらに光機能化により、チタン表面上への細菌初期付着やプラーク形成が遅延することが示されている。
二次手術時に設置したチタンヒーリングアバットメントの表面を粘膜治癒後に観察すると、光機能化を施したものには上皮細胞付着の痕跡が認められたのに対し、通常のものでは認められなかった。
また、通常のものでは、歯肉縁下深くまでプラークが付着していたのに対して、光機能化したものではプラークの付着が歯肉縁にとどまっていた。
光機能化をインプラントと粘膜貫通部に応用することにより、分子レベルでの汚染が可能となるだけでなく、物理化学的性質が複合的に変化するように表面改質され、細胞付着性向上と細菌付着抑制が両立し、上皮性付着が強化されることが示唆される。
(The Fabric of the Modern Implantology )
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これまで光機能化といえば、インプラントの表面の濡れ性が改善するために、インプラントの骨結合までの時間が短縮されるというのが利点であると個人的には認識していました。
ところが、今回の報告では、ヒーリングアバットメントやアバットメントも光機能化することにより、それをしない場合と比べて、インプラントと粘膜貫通部の細胞付着性と細菌付着性が両立し、上皮性付着が強化されることが明らかになりました。

2018年1月20日

hori (17:16)

カテゴリ:光機能化インプラント

ISQ値は微小動揺に比例。

・TrisiらやPaglianiらによると、ISQ値はインプラントの埋入トルク値ではなく微小動揺に比例するとしている。
ISQ値が低いとインプラントの微小動揺が大きく、ISQ値が高いと微小動揺が小さいことを意味する。
つまり、埋入時においてISQ値が高い場合はインプラントの初期固定が高いことを意味し、術後経過時におけるISQ値の変化はインプラントの微小動揺が増減していることを現す。
(The Fabric of the Modern Implantology )
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即時荷重インプラントを行う多くの歯科医師は、これまで埋入トルクを記録して、即時負荷が可能かどうかの目安としてきました。
ところが、比較的最近、ISQ値が微小動揺に比例することが明らかになりました。
また埋入トルクが大きすぎることが、逆にインテグレーションを遅らせることも明らかになってきました。
これについても"昨日の常識は今日の非常識"といえる内容です。
やはり歯科医師は研鑽を続けなくてはなりませんね。

2018年1月15日

hori (17:24)

カテゴリ:インプラントについて

2か月に一度の口腔衛生指導

・プラークスコアに対する口腔衛生指導とPTCの効果
20-27歳の400名の被験者を「2か月ごとに口腔衛生指導を受ける」群、「2か月ごとにPTCのみを受ける群」、「年に1回来院し口腔衛生指導を受ける」群、「何もしない」群に分け、3年間観察を続け、そのデータを示しています。
どの群でもプラークスコアは改善しましたが、2か月おきに口腔衛生指導をした群で最も大きな改善がみられました。
2か月ごとのPTCによる臨床的に有意な効果がみられませんでした。
(参考文献)
Hugoson A, Lundgren D, Asklow B, et al. : Effect of three different dental health preventive programmes on young adult individuals : a randomized, blinded, parallel groupe, controlled evaluation of oral hygiene behavior on plaque and gingivitis. J Clin Periodontol, 34(5) : 407-415, 2007.
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2か月に一度のPTCよりも2か月に一度の口腔衛生指導の方がプラークスコアの改善幅が大きかったというエビデンスです。
魚を与えるよりも、魚の釣り方を教える方が有効であるのと近いイメージといえるでしょう。

メンテナンスと根分岐部病変の予後

・定期的なメンテナンスを受けないと、根分岐部病変(以下、FI)はどうなる?
この研究は、ポメラニア健康調査(SHIP)の一環として行われ、ベースラインと11年後のフォローアップ時のデータが用いられました。
対照となった被験者は、西ポメラニアの北西部に在住する20-81歳の白人でした。
すべての被験者の片顎に、プロービングデプス(以下、PPD)および臨床的アタッチメントレベル(以下、CAL)の4点法による測定を含む検査が行われ、その中に上顎大臼歯(頬側部と近心部)と下顎大臼歯(頬側と舌側)のFIの検査も含まれていました。
その結果を1度(FIが触知できる)、2度(根分岐部にプローブが水平的に3-8ミリ入る)、3度(8ミリ以上入る)に分類しました。
最終的には1897人の3267本の大臼歯(上顎1707歯、下顎1560歯)のデータが分析されました。
その結果、まず、フォローアップ期間の11年で375人(19.8%)の患者で大臼歯の喪失が起こっていました。
喪失した大臼歯の中でFIがなかった歯の割合は5.6%、1度の場合は12.7%(上顎13.5%、下顎11.8%)、2度では34.0%(上顎34.58%、下顎32.9%)、3度が55.6%(上顎53.3%、下顎60.0%)でした。
初期のPPDとCALが、大臼歯の喪失と関連していました。
ベースライン時にFIがない場合と比較すると罹患率比(IRR)は、FIがある場合に有意に高くなりました。
CALに関しては、その増加とFIに関連がみられず、またPPDについてはFIがない場合に最も多く増加し、2度および3度の場合、増加の程度は低かったことが認められました(しかし、喪失した歯はこの分析には含まれていないので、解釈には注意が必要です)。
これらの結果から、この研究の著者らは、メンテナンスを受けていない一般市民の大臼歯が喪失する危険性は、FIがある場合に、またFIが重症なほど高くなることの根拠が見出されたと結論づけました。
(参考文献)
The effect of furcation involvement on tooth loss in a population without regular periodontal therapy.
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1897人の3267本の大臼歯(上顎1707歯、下顎1560歯)の根分岐部病変の11年後の予後についての文献です。
同じ歯周病でも、根分岐部病変0度の場合と比較して、根分岐部病変1度は1.73倍、根分岐部病変2度と3度は3.88倍、歯の喪失リスクが高いという結果になりました。

2018年1月 5日

hori (10:24)

カテゴリ:根分岐部病変

イカ墨で歯周組織検査?!

イカ墨と水、トウモロコシのデンプンからできたマウスリンスを用いて、プローブを使わない歯周組織検査が可能になる。
アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校のJosse Joerst教授らによる研究グループが開発し、『The Journal of Dental Reaearch』9月7日号に掲載した。
イカ墨に光を吸収するナノ粒子が含まれているのを利用した技術で、イカ墨を含んだマウスリンスで口をゆすぐとナノ粒子が歯周ポケット内に閉じ込められ、そこにレーザー光を当てるとナノ粒子が発熱膨張し、ポケット内に超音波で測定可能な圧力差が生まれるため、定量的に歯周ポケットを測定できるという。
光音響超音波画像技術により、全周的な歯周組織のデジタルデータを得られるのが特徴。
動物実験ではプローブを使った場合とほぼ一致する結果を得たとのことで、今後、臨床試験が行われる予定。
検査数値を一瞬でデータとして得られるのが特徴で、プロービングに比べて術者による差が出ず、痛みや不快感を伴わないことなどもメリットとされる。
(アポロニア21 2017年12月号 )
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将来的に、イカ墨で歯周組織検査が可能となる可能性があるようです。
今後臨床試験が行われるそうで、従来の歯周組織検査と比較して、術者による差が出ず、痛みや不快感を伴わないなどメリットがあるようです。
インプラントの際のプロービングも同様に可能となるのでしょうか。
インプラントの場合、プロービング自体の是非はありますが、インプラント周囲組織の状態をプロービングをせずに評価することができるのであれば、天然歯以上にその利用価値は高いといえることでしょう。

2018年1月 1日

hori (16:55)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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