インプラントとAnteの法則

2006年にスイスのチューリッヒで開催されたEuropean Association for Osseointegration において、Langは、「いまだにAnteの法則をおぼえている人は、それを忘れるべきであり、それを知らない人は幸運である」と発言している。
これはLangらのグループによる、骨支持量は減少しているが歯周組織は健康である支台歯を有した固定性ブリッジに関しての最長25年経過の579症例の術後の生存率(5年経過で96.4%、10年経過で92.9%)ならびに術後の問題事象に関するメタアナリシスからは、骨支持量が減少していない場合と比較しても遜色がないとした報告に基づいたものである。
同様にFayyadとAl-Rafeeは132症例156個の固定性ブリッジにおいて、Anteの法則に合致しなかったものが大学の症例で26.9%、臨床家の症例で50%あったが、問題を生じた56個のブリッジのうち明らかにオーバーロードによるものと考えられたものは2例であったとしている。
これに対して、短縮歯列を提唱したKayser,Leempoelらのグループは、固定性ブリッジ1674個の12年間の生存率とAnteの法則の間には有意の相関があったことを示している。
一方、この報告では通常のブリッジとカンチレバーブリッジとの間に有意差がなかったとしていることは興味深い。
これらの報告から、負荷の状況がどうであったかが確認できないが、ブリッジの生存率に対しては、支持の条件以上に、負荷や咬合の条件がより大きく影響する因子であることが推測される。
(その補綴に根拠はあるか より )
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歯科で、保険でブリッジの治療を受ける場合、このAnteの法則に則った設計のみが適応となります。
このAnteの法則は、欠損歯の支台歯の位置のみによって、ブリッジの設計の是非を決定するもので、歯槽骨に植わっている歯根の長さや歯周組織の状態等は反映されていません。
そのため、Anteの法則に則った設計以外でも、臨床上問題なく経過しているケースは少なからず存在するようです。
ただ、Anteの法則以外の設計で治療計画を立てる場合、その設計が強度的に問題ないかの明確な診断基準はおそらくまだないものと思われます。
また、治療終了時には問題なく経過していたのに、患者さんが高齢になり、メインテナンスに応じることができなくなったりした場合には、Anteの法則以外の設計はリスクが伴う場合もあるかと思います。
個人、個人の経験則と責任で、より良い歯科医療を患者さんに提供したいものです。
なお、インプラントブリッジに関しては、Anteの法則は天然歯ほど厳密に考える必要はないものと考えられます。

2015年2月20日

hori (16:36)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

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